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[ニュース分析]韓国労働者を狙う「トランプの貿易爆弾」

登録:2018-02-21 04:05 修正:2018-02-21 17:39
「米国優先主義」の通商圧力総攻勢 
鉄鋼、米国市場輸出の道塞がれた場合は 
1万5千人の雇用への打撃は避けられず 
洗濯機・自動車の雇用にも悪影響
鉄鋼、洗濯機、自動車など全方位にかけた「トランプ発の通商圧迫」攻勢が連日起こり、韓米間の通商激突が予想されている//ハンギョレ新聞社

 鉄鋼や洗濯機、自動車など、全面的な「トランプ発の通商圧力」攻勢が連日のように続き、韓国の対米輸出産業の労働者らは雇用保全のために、個別事業場ではなくドナルド・トランプ米大統領に立ち向かわなければならない立場に追い込まれている。韓国労働者にとって、事実上トランプ大統領が“幽霊のような交渉当事者”として登場したのだ。

 ペク・ウンギュ産業通商資源部長官は19日、記者懇談会で米商務省の「通商拡大法第232条による鉄鋼安保への影響調査報告書」について「(米国が)安保のためと主張しているものの、全体的な米鉄鋼産業稼働率を現在の72%から80%まで引き上げるため、年間1330万トンの米国市場の鉄鋼輸入を規制するという経済的な側面もある」と述べた。商務省報告書は冷延・熱延・圧延鋼板など約600種に達するほとんどすべての鉄鋼関連製品を輸入規制の対象にしている。安保は名分に過ぎず、世界鉄鋼の供給過剰状況で、米国鉄鋼企業と労働者の雇用を守るというのが、トランプ大統領が追求する“実利”だ。

鉄鋼・洗濯機・自動車 輸出の総就業誘発効果//ハンギョレ新聞社

 世界鉄鋼の供給過剰量は約7億6千万トン(韓国鉄鋼協会推定)に達する。カン・ソンチョン産業部通商次官補は「米国が韓国を含めた鉄鋼輸入規制対象12カ国を選別する際、各国の過剰生産能力増加率を重要な要素として考慮したと、米商務長官が記者会見で明らかにした」と話した。世界の鉄鋼産業が共同責任を追うべき過剰生産問題から、米国の鉄鋼労働者の雇用を守り、新しい雇用を生み出すため、韓国などの他の国に1962年に制定された古い通商拡大法第232条を突きつけたわけだ。ソン・ジェビン鉄鋼協会副会長は「トランプが米鉄鋼王カーネギーの流行おくれの昔の伝説を復活させようとしているようだ」とし、「米国は現在、20種あまりの韓国製の鉄鋼製品に60%前後の高率の反ダンピング関税を課すと共に、韓国政府の鉄鋼補助金を問題視して相殺関税を賦課し、韓国雇用を脅かしている」と話した。

 トランプ大統領が米国優先主義を掲げ、全面的な貿易報復に乗り出したことで、対米主力輸出品目に従事する韓国労働者は、トランプ大統領に対抗せざるを得ない新たな韓米通商秩序に吸い込まれている。米国の洗濯機へのセーフガード発動により、サムスン電子とLG電子はすでに現地に新たに洗濯機工場を建てて稼動している。米国GMの本社とトランプ大統領は、韓国工場の撤退とメキシコあるいはデトロイトへの工場移転を掲げて脅かしている。通商拡大法第232条も、韓国の過剰生産量を減らすべきという圧力だ。全国金属労組韓国GM支部は20日、記者会見で「GM資本の利益のため、工場を閉鎖し、赤字の責任を労働者に転嫁する行動に憤りを禁じえない」と明らかにした。

 トランプ大統領の圧迫は国内の雇用を脅かす。韓国貿易協会によると、鉄鋼加工製品や鉄鋼1次製品の場合、輸出100万ドル当たり就業誘発人員はそれぞれ5.9人と4.6人であり、鉄鋼輸出で作り出した直接・間接雇用は昨年年間15万5千人に達する。韓国の鉄鋼業界の昨年の鉄鋼の対米輸出額(32億6千万ドル)は、全体の鉄鋼輸出額の約9.5%を占める。単純に計算しても、米国輸出に支障があれば、1万5千人以上の雇用が打撃を受けることになる。米国市場で韓国が輸出第1位を記録中の品目は、合わせて94品目(2016年)であり、このうち鉄鋼製品が20品目(21.3%)だ。

 また、洗濯機など家庭用電気機器と自動車の昨年の輸出・就業誘発効果はそれぞれ4万4千人と63万8千人だ。輸出100万ドル当たり就業誘発人員は、家庭用電気機器(10人)と自動車(8.6人)が全体製造業平均(7.4人)より高い。貿易協会は昨年、製造業の総輸出(5602億ドル)が韓国経済に直接・間接的に誘発した雇用規模は415万人に達すると推定した。

 一部では前日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が米国の不当な保護貿易の攻勢に真っ向から対抗することを強調した背景にも、米国の自国の労働者優先主義にこれ以上振り回されるわけにはいかないという危機感が反映されていると分析している。ホン・ジャンピョ大統領府経済首席は同日、大統領府定例会見で「(通商拡大法第232条に基づく関税の賦課は)米国経済と産業の観点から、鉄鋼産業を保護するための輸入抑制として行われたと見ている」とし、「米国をはじめ主要貿易パートナーとの通商問題は(雇用などの)国益の確保の観点から対応していく」と述べた。産業部関係者は「トランプ大統領が11月の中間選挙と再選のため、自分の政治的支持・後援グループの中間層白人(労働者ら)にアピールする政策として、(鉄鋼第232条を)捉えている」とし、「(トランプの保護貿易主義攻勢は)ここで終わりではないと思う。また他の分野に戦線を広げていくことになるだろう」と話した。

チョ・ゲワン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/832951.html韓国語原文入力:2018-02-21 05:00
訳H.J

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