イム・ジョンソク大統領府秘書室長のアラブ首長国連邦(UAE)訪問の目的は、李明博(イ・ミョンバク)政権で両国が協議した「軍事支援」と関連があるという解釈が現実味を増している。過去、アラブ首長国連邦がパラカ原子力発電所事業者決定を控え、韓国政府に高い水準の軍事協力を要求したのは、周知の事実だ。しかし、特戦司令部派兵のほかには関連内容が公開されたことはない。もし、アラブ首長国連邦と対立しているイランなど周辺国を刺激するほどの軍事支援が合意されたならば、複雑な中東情勢とあいまって、外交問題はもちろん、輸出と企業活動などにも影響を及ぼしかねない。
2日、与党のある主要な関係者はハンギョレとの電話インタビューで、アラブ首長国連邦の議論と関連し「李明博・朴槿恵(パク・クネ)両政権に渡って問題があった。原発マフィアと軍需マフィアが結託した特異な事件」だと話した。キム・ジョンデ正義党議員も「原発受注の見返りとして結んだものの、国会に報告されなかった軍事MOU(了解覚書)がある。朴槿恵政権時代にこれをきちんと履行せず、アラブ首長国連邦が前回の大統領選挙後、不満を露わにしたと聞いた」と話した。彼はさらに、「特戦司令部の派兵は軍事MOUの一部だ」と明らかにした。原発受注(2009年12月)と派兵(2011年1月)当時、ハンナラ党国防委員だったある野党議員も「裏合意があるという話を聞いたことがある」と話した。
2009年12月27日の原発の受注発表直前の状況を振り返って見ても、両国は原発受注と連携し、幅広い「軍事支援」について協議した状況は明らかだ。当時、工事を受注する可能性が最も高かったのは、アラブ首長国連邦と緊密な軍事協力関係を結んでいたフランスとされていた。ニコラ・サルコジ当時フランス大統領は、空軍基地の建設とフランス製戦闘機の提供などを提案した。
同年11月初め、李明博元大統領がムハンマド・ビン・ザイド・アール・ナヒーヤン王子に電話をかけて説得しており、11月17~20日と23~26日、キム・テヨン当時国防部長官がアラブ首長国連邦を訪問した点も目を引く。これに対し、キム・テヨン長官は2010年11月11日、国会国防委員会で「アラブ首長国連邦は最初に行き過ぎた要求をしており、派兵を含めて40個ほど質問をした」とし、「大統領は『積極的に協力してみよう』と述べた」と話した。
このような事情から、当時の原発受注はフランス側の“カード”に対抗する軍事支援の約束があったからこそ可能だったものと見られる。アラブ首長国連邦への防衛産業輸出規模が派兵後には1兆2千億ウォン(2011~2016年)に30倍以上も増えた。政府はこれまでアラブ首長国連邦との軍事協力は、特殊戦司令部教育訓練の提供と国産兵器を活用した原発防護及び韓国国民保護のためと説明してきた。しかし、防産業界は兵器輸出規模から“その以上”のものがあると見ている。
国内の防産業界が兵器の輸出を公開しなかったという疑惑も持ち上がっている。ある防産関係者は「中東地域はあまりにも敏感で、兵器を輸出しても、政府承認なしには公示できない」と話した。
これに対して大統領府関係者は「以前政権でどんな契約がどうなったかは知らないが、自信を持って言えるのは、イム室長の訪問とは何の関係もない」と話した。一方、国防部はイム室長訪問(12月9~12日)前の昨年11~12月、海軍本部情報作戦参謀部長と合同参謀本部軍事支援本部長がアラブ首長国連邦を訪問したという報道を認め、「海外派兵部隊を激励するため」だと説明した。