サムスン「イ副会長が拘束捜査されれば経営空白不可避」沈痛
「お騒がせして申し訳ありません」(2008年4月4日イ・ゴンヒ会長特検召喚時)
「良い姿をお見せできなくて申し訳ありません」(2017年1月12日イ・ジェヨン副会長特検召喚時)
サムスン電子のイ・ジェヨン副会長が12日午前、特検に被疑者身分で召喚されて発した言葉は、2008年父親のイ・ゴンヒ会長がサムスンエバーランド転換社債安値発行、政・官界不法ロビーの疑いで特検に召喚されて発した言葉と、9年の時差を跳び越えてほとんど同じだった。サムスンの総帥がイ・ゴンヒ会長に続きイ・ジェヨン副会長まで二代続けて被疑者身分で特検に召喚されて、サムスンはもちろん財閥全般に大きな衝撃を投げかけた。外信も世界最大のIT企業の一つであるサムスンのニュースに強い関心を見せている。チュ・ジンヒョン前韓火(ハンファ)証券社長は「現在までにあらわれた疑惑が事実ならば、権力の不当な要求を勘案しても外国の先進企業では想像すらできないことが起きたといえる」と話した。
イ副会長としては、3世体制への転換を契機にサムスンの新しい姿を見せるだろうという期待感が大きかっただけに大きな打撃を受けることになった。3世継承の一環として議論されたサムスン電子の分割を含む持株会社へのコンバート作業もかなりの期間推進動力を失うことになった。サムスンは「イ副会長が拘束捜査を受ける場合、経営空白が避けられないのではないか」として、沈痛な雰囲気だ。
専門家たちは、今回の事件を通じて総帥一家の株式持分に依存した支配力確保という、サムスンと韓国財閥体制の弱点が再確認されたと指摘する。特検は、国民年金がサムスン物産の合併に賛成する見返りにサムスンがチェ氏母娘に400億ウォンを超える特典支援を約束した根本原因を、3世継承のためのグループ支配力の確保だと見ている。イ副会長はグループの核心企業であるサムスン電子に対する支配力を強化するため、サムスン物産の不公正合併比率論議を無視して合併を押し切った。チョン・ソンイン弘益大教授は「サムスンは3世継承のために1990年代からサムスンエバーランド転換社債安値発行のような便法・不法を動員した」として、「既にこうした行為が難しいのに、サムスンは変化した環境をまともに認識できていないようだ」と指摘した。
チェ・スンシル母娘支援を実質的に主導したグループのコントロールタワーである未来戦略室も俎上に上がった。未来戦略室長のチェ・ジソン副会長と次長のチャン・チュンギ社長は、すでに特検の召喚調査を受けた。サムスンは総帥に最終意志決定権が集中していて、非公式参謀組織が総帥を補佐することによりグループのコントロールタワーの役割をする経営システムが長期にわたり成功要因に挙げられてきた。だが、現在のサムスンは過去とは比較できないほどに規模が大きくなり、複雑なグローバル市場に露出して、従来の経営システムは限界に直面したという指摘が多い。経済改革連帯のキム・サンジョ所長は「総帥一家が持分に依存して支配力を行使し、総帥がすべての意志決定を思うままにして、法的責任も負わない未来戦略室が補佐するというサムスンの支配構造モデルがすでに限界を見せたのに、革新を先送りしたために起きた惨事」と表現した。
イ副会長のリーダーシップと力量も問題点として指摘される。イ副会長はイ・ゴンヒ会長が倒れた以後、2年半が過ぎても新体制への転換ができず、家臣グループに載せられて過ごしたために危機を自招したという評価を受ける。サムスンは「イ会長がまだ存命で、イ副会長は正式に会長に昇進していない」と釈明している。だが、これはイ会長が意識不明ですでに経営者としては死亡状態という点で説得力が無い。キム・サンジョ所長は「未来戦略室の役員が席を守りたいという“私益”のために作り出した言い訳に過ぎない」として「サムスンの本質的問題は、能力のない3世と家臣グループの情報歪曲」と批判した。
特検の拘束有無や裁判所の判決結果に関係なく、イ副会長が今後サムスンの経営から完全に手を引くと予想する人々は多くない。だが、サムスンとイ副会長が新しく変わらなければ、いつでも危機が再燃する可能性が高いので、今回の事件が旧態から抜け出すための最後の機会という認識が必要、という指摘が多い。キム・サンジョ所長は「イ副会長が国会の聴聞会で『持分に依存して支配するつもりはなく、熱心に働いて市場の信頼を得て、それができなければ能力のある人に任せる』と約束したように、自ら経営ビジョンを提示して、能力で市場から認められなければならない」と話した。VIGパートナースのピョン・ヤンホ顧問は「サムスンは、社会と市場の声を傾聴し、信頼を得る努力を傾ける必要がある」と忠告した。
サムスンは安全企画部Xファイル事件とサムスン特検により2006年と2008年に対国民謝罪を通じて理事会の独立性向上など経営刷新を約束したが、今回の事件で「子供だまし」だったという指摘を受ける。キム・サンジョ所長は「財閥は外部の株主が推薦する独立的な社外重役の選任により、社外重役の監視・牽制機能を実質的に保障しなければならない」として「総帥の役割を意志決定者から調停者に切り替えなければならない」と注文した。チュ・ジンヒョン前社長は「グローバル開放経済、知識経済の下で総帥1人の“皇帝経営”はもはや不可能だ」として「総師らは絶対的支配力に対する欲望を捨て、専門経営者に権限を果敢に渡さなければならない」と話した。