ギャラクシーノート7の不具合による「サムスン危機」が、イ・ゴンヒ会長の後継者と呼ばれてきたイ・ジェヨン・サムスン電子副会長の本格的なリーダーシップの試金石になる見込みだ。サムスンは今回の事態ですでに4兆ウォン(約3651円)程度の損失を被ったうえに、トップブランドとしての位置にも大きな打撃を受けた。また、今回の事態の原因として、単純な製品の不具合だけでなく、サムスンの組織文化と支配構造問題まで取り上げられており、イ・ゴンヒ会長の代わりに、事実上、トップの役割を担ってきたイ・ジェヨン副会長が前面に出るしかないという指摘が多い。
キム・サンジョ経済改革連帯所長は13日、「今回の事態を契機に、サムスンの組織文化と支配構造を換骨奪胎しなければならず、他に代案がなければ、その主体はイ副会長にならざるを得ない」としたうえで、「イ副会長が最高経営者としてビジョンとリーダーシップを示し、危機克服の先頭に立って結果に責任を負わなければならない」と指摘した。キム所長は「イ副会長は危機克服に成功して後継者の能力を示す道と、危機克服に向けて前面に出る自信がなかったり、危機克服に失敗すれば辞任する道の中から、どちらかを選択することになる」と付け加えた。
高麗大学のチャン・ハソン教授は「イ・ゴンヒ会長は『新経営宣言』などを通じて、自分だけの経営哲学とビジョンを提示して今のサムスンを作るリーダーシップを見せてくれた」としたうえで、「イ副会長が、父親とは異なる他の経営哲学とビジョンを示すことで、自分だけのリーダーシップを構築し、危機の打開に乗り出さなければならない」と話した。彼は「イ副会長は昨年、サムスン物産の不公正な合併をめぐり少数株主に被害を与えたことで、経営哲学とビジョンに対する疑念を抱かせており、周辺部門を整理する選択や集中式の事業構造再編についても、本人が直接方向性を説明したことがない」と指摘した。父親が病に伏している状況で、イ副会長が会長昇進を含めて経営権の継承を急ぐのは韓国社会の儒教的特性からして非難を受けるというサムスンの慎重論について、チャン教授は「経営者イ・ゴンヒの役割はすでに終わった。これからはイ副会長の主導で新体制を整備していくべきだ」と話した。
チュ・ジンヒョン元韓化証券社長は「カリスマの強いリーダーシップを見せてくれたイ・ゴンヒ会長が急に倒れた後、サムスンにおけるリーダーシップの空白は、自然なことかもしれない」としたうえで、「カギとなるのは、イ副会長が新しい経営指導体制とリーダーシップを速やかに構築し、リーダーシップの空白を解消すること」だと指摘した。チュ元社長は「イ会長のリーダーシップは日本式のトップダウン型で、徹底した経営管理と大量生産体制には適していたが、創意的な企業文化が必要な現在の状況には相容れないものがあるだけに、イ副会長が新しい環境にふさわしいリーダーシップを如何に構築するかが重要である」と話した。
アメリカの「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙も11日付で、「ますます深刻化するサムスンのスマートフォン危機がサムスンの後継者を最初の試験台に追い込んだ」と報じた。
イ副会長が今月27日、サムスン電子の臨時株主総会で登記理事に選任される際に、どのような姿を見せるかも関心事だ。キム・サンジョ所長は「全世界が注目している」として、「イ副会長が今回の事態に対する自分の認識と解決策を明確に示さなければならない」と話した。チャン・ハソン教授は「登記理事に選任されるのにとどまらず、代表理事を務めてしっかりと責任を負う姿を見せなければならない」と指摘した。しかし、イ副会長は、臨時株主総会に出席するかどうかをめぐってまだ検討中であるという。キム所長は「イ副会長が前面に出ず、これからも後ろに隠れつづければ、リーダーシップ不足と見なされ、サムスンは危機の克服と信頼回復も難しくなるだろう」と指摘した。
グループの司令塔と呼ばれる未来戦略室にも変化が必要であると指摘されている。キム所長は「未来戦略室の主軸であるチェ・ジソン副会長(室長)、ジャン・チュンギ社長(室次長)、キム・ジョンジュン社長(財務責任者)も、イ副会長と同様、サムスン電子・物産・生命など核心系列会社の登記理事となり、(権限行使に対する)責任を負うべきだ」と話した。
一方、国民年金は、イ副会長の登記理事選任案件に対する議決権行使のため、投資委員会を開くことにした。国民年金のサムスン電子保有株は全体の8.38%で、単一株主としては最大だ。国民年金は投資委員会で賛否を決定するのが難しい場合は、判断を保健福祉部傘下の議決権行使専門委員会に付託する案も検討している。