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[ニュース分析]ギャラクシーノート7、リコールしたが再燃…米の調査結果が峠に

登録:2016-10-10 23:42 修正:2016-10-12 08:22
バッテリー交換えなど 
素早いリコールで勝負を賭けたが失敗 
世界で異常燃焼現象が9件報告され 
損失1900億円に膨らむ見込みも 
「ブランド価値の下落が一層深刻な問題」との見解も
サムスン電子がギャラクシーノート7の生産を一時中断したと分かった10日昼、ソウル瑞草区のサムスン電子広報館のギャラクシーノート7広告看板の前を市民が通り過ぎている=キム・テヒョン記者//ハンギョレ新聞社

 「戦略スマートフォン」ギャラクシーノート7の発火問題が再燃し、サムスン電子が再び危機を迎えた。ギャラクシーノート7の“命運”は米国消費者製品安全委員会(CPSC)の調査結果にかかっていると見られる。製品に欠陥があるという判定が出れば、最悪の場合、ギャラクシーノート7を放棄せざるを得なくなるという見通しも示されている中、一部の専門家たちは製造工程だけでなく構造的な問題が事態の悪化をもたらした可能性もあると指摘している。

 サムスン電子は先月2日、ギャラクシーノート7を全量リコールすることを決め、異常燃焼の原因がバッテリーにあると決め打ちし、「バッテリープロバイダとともに不良の可能性がある物量を特定するための精密分析作業を行っている」と明らかにした。その後、韓国や米国で発売された製品に組み込まれたサムソンSDI製のバッテリーの問題との結論を下した。サムスン電子は国家技術標準院に提出した「製品回収等の計画書」で「特定バッテリーメーカーのセル製造工程の問題で、セル内部の極板が押さえられるなどして陰極と陽極が接触し過熱発生」と不良の原因を明らかにした。

 しかし、異常燃焼が初めて主張されてから9日後に下した素早いリコール決定は、結果的に逆効果を招いた。バッテリーが交換された新しい製品の発火事例に関する情報提供は、米国で5件、韓国で1件、中国で1件、台湾で1件など合わせて9件に達する。米国の主要携帯電話会社のベライゾンとAT&T、T-モバイルがギャラクシーノート7の販売と交換を全面中断し、ギャラクシーノート7は米国での販路がとざされた。

 事態がどこに向かうかは、近く出てくると見られる米国消費者製品安全委の調査結果にかかっていると見られる。消費者製品安全委員会は、ケンタッキー州の空港の旅客機内で発生した燃焼事故を調査している。もし交換した製品からも深刻な欠陥が発見され、米当局が重い処分を下せば、ギャラクシーノート7の販売は難しくなる。ある電子業界関係者は「調査結果によっては断種の検討もありうる」と話した。

 一部の専門家は、製造工程上の問題では終わらない可能性もあると分析している。二次電池の専門家であるパク・チョルワン博士(次世代電池イノベーションセンター初代センター長)は「国家技術標準院安全諮問委員会の資料によれば、サムスン電子は新しいギャラクシーノート7を発売した9月末にも、異常燃焼の原因を正確に把握していなかった」と主張した。彼は「原因をバッテリーと決め打ちした結果、バッテリー以外のフォン内部の問題をきちんと見直せていない」と指摘した。

 技術力の限界と垂直系列化による部品供給の問題に分けて分析する専門家もいる。スマートフォンは薄くても、バッテリーは長持ちするという両立が難しい目標を追求して開発されてきた。バッテリーは基本的に大きさに比例して容量が決まるので、小さくて容量の大きいバッテリーを作ることは問題につながる可能性を内包している。

 2011年に発売された最初のギャラクシーノートの厚さは9.7ミリだった。ギャラクシーノート2(9.4ミリ)からギャラクシーノート3(8.3ミリ)までは段々薄くなっていったが、2014年のギャラクシーノート4は8.5ミリで少し厚くなった。今年発売されたギャラクシーノート7は7.9ミリだ。昨年発売されたギャラクシーノート5(バッテリー容量3000mA h)よりは0.3ミリ厚くなったが、バッテリー容量(3600mA h)は20%増加した。防水・防塵のために密閉されたギャラクシーノート7のバッテリー容量は、最近発売されたアップルのiPhone7プラス(2910mA h)やLGのスマートフォンV20(3200mA h)より大きい。あるスマートフォン開発デザイナーは「バッテリー容量を大きくして外形の厚みを1ミリ減らすということは容易なことではない」と話した。

 部品の垂直系列化問題も指摘されている。リコール対象になったバッテリーはサムスンの系列会社であるサムソンSDIから供給されたことが分かり、中国のATLもバッテリーを供給した。これまで韓国国内でサムスン電子にバッテリーを納品していた他の企業は供給先から外れた。協力企業には納品単価の問題などでバッテリー技術力を蓄積できない可能性がある。

 状況が悪化すればサムスン電子の損失規模も大幅に増える恐れがある。ある証券会社の研究員は、既存販売分のリコール対象140万台と、交換または新規販売された100万台を合わせて返品規模を推算すると、損失が最大で2兆ウォン(約1850億円)に達する可能性があるとの見通しを示した。彼は「損失額も大きいが、消費者の信頼を失わないことがさらに重要だ」と憂慮した。現在、世界各国の空港にはギャラクシーノート7を使うなという掲示物が貼り出されており、ブランドイメージへの打撃も大きい。アップルの新製品iPhone7が21日に韓国でも発売される予定であることを考慮すれば、サムスン電子は主要ライバルとの戦いでもさらに不利な立場に立たされることになる。

イ・ワン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/it/765036.html 韓国語原文入力:2016-10-10 21:46
訳J.S(2295字)

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