28日も東京の外為と証券の市場は急激な変動を見せなかった。日経総合指数は前日に続き小幅上昇し、憂慮された円ドルレートも101.98円で、大きな変化はなかった。24日に「ブレグジット」衝撃で動揺した日本市場がひとまず冷静を取り戻している様子だ。安倍晋三首相は28日、経済財政諮問会議を開き「市場はひとまず安定を取り戻したが、まだ不透明感とリスク懸念が残っている」と緊張を緩めなかった。
市場の衝撃は徐々に少なくなったが、今回の事態が中長期的にアベノミクスなど日本の実物経済に及ぼす影響は侮れない展望だ。ブレグジットとアベノミクスを連結する核心は、円ドル為替レートだ。ブレグジット以後に安全資産目当てに集まった投資資金により起こった「円高」は当分続くものと見られる。これは大胆な量的緩和により円安を誘導し、主要な輸出大企業の実績改善を実現し、この効果を日本社会全体に拡散するというアベノミクスの基本前提を崩している。アベノミクスに対して「祭りは終わった」(岡田克也・民進党代表)という批判が出るのもこのためだ。
反転を試みるには通貨当局の介入が必要だが容易ではない。朝日新聞は28日、「円安を誘導できる外国為替市場への介入は、米国など主要7カ国(G7)の理解を得るのが難しい」と展望した。実際、ジェイコブ・ルー米財務長官は27日、「現在市場は秩序をもって機能している。一方的な介入は(市場を)不安定にする」と指摘した。日本が米国との事前調整を経ずに外国為替市場に単独介入したのは、2011年10月が最後だ。当時は円ドル為替レートが75円台だったが、現在は100円台序盤を維持している。日本が自国の景気浮揚だけのために市場に単独介入するには名分が弱い。
これに伴い、日本の主要大企業の実績悪化は不可避と見える。日本の看板企業のトヨタ自動車は、昨年の為替レートが120円台を維持したために史上最高の2兆8539億円の営業利益を記録した。トヨタは今年の為替レートを105円台と見通して、前年より営業利益が40%減ると予想した。ブレグジットで為替レートがさらに円高に振れれば、実績も悪化せざるをえない。野村証券は円ドル為替レートが102円前後で推移する場合、日本の大型自動車メーカー7社の営業利益は、年間約9200億円減ると予想した。
さらに大きな問題は、それによる拡散効果だ。企業の実績悪化は株価下落、投資萎縮、消費減少につながる。経団連の榊原定征会長は28日の会議出席直後、記者団に現状況が続けば「企業の経営は慎重になり、個人消費弱化などにつながる。大胆な経済政策を含む対応を要求した」と明らかにした。
この間のアベノミクスを巡る問題が、大企業の高い実績が賃金引き上げなどにより社会全体で共有されないことだったとすれば、今はその大前提の企業実績自体を憂慮しなければならない状況に立たされたわけだ。これはアベノミクスの終焉を意味するものだ。