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国家債務比率40%が限界線?...韓国政府の無理な“福祉抑制”

登録:2015-09-10 00:26 修正:2015-09-10 06:59
 2016年予算案
歴代政権別財政赤字と国家債務増減推移//ハンギョレ新聞社

 政府が税収拡大のための努力を怠ったまま、国家債務比率が40%を超えたことを理由に、来年の予算増加を強く抑制したことで、福祉の縮小と家計負債の拡大が懸念されている。政府が40%としている国家債務比率の限界線も、2008年の金融危機以降、大きく変わった世界経済の状況を正しく反映しておらず、適正性について疑問の声があがっている。

 パン・ムンギュ企画財政部第2次官は今月4日、来年の予算案の事前ブリーフィングで、総支出の増加率をこれまでよりも大幅に引き下げたことについて、「来年の国家債務比率が40%に達する。債務がもはや発散しないように(緊縮)予算案を編成した」と説明した。しかし、政府は債務比率40%を限界線と捉える根拠を提示できずにいる。パク・チュンソプ企画財政部の予算総括審議官は、「明確な根拠はない」と打ち明けた。ただし、複数の企画財政部当局者の話によると、「限界線40%」という基準が提示されるようになった背景はある。欧州連合(EU)の構成の基礎となったマーストリヒト条約で、欧州共同体(EC、欧州連合の前身)の加入条件として提示した基準が国家債務比率60%だ。パン次官は「韓国は高齢化や統一など、将来の財政需要があるということから、(国際基準に)20%ポイント程度の余裕を持たせなければならない」と述べた。

 今ではほとんど通用しない
 古いの欧州共同体への加入条件
 2008年の金融危機以降、変更
 IMFも「債務強迫から抜け出すべき」

 税収拡大なしの支出抑制
 福祉縮小、家計負債拡大の悪影響
 ただちに福祉予算の増加率が6.2%で急減

 政府が言う国際基準は、今ではほとんど通用しない。2008年の金融危機以降、米国、日本、欧州連合などの主要国が拡張的な財政政策を実施したことで、国家債務に対する見方が変わったからだ。実際、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均債務比率(一般政府の債務基準)は、危機前の2007年73.5%から今年114.6%に跳ね上がる見通しだ。2013年現在、加盟国33カ国のうち、韓国よりも債務の割合が低いのはエストニア、ルクセンブルク、ノルウェーの3カ国だけだ。

 今年6月、国際通貨基金(IMF)は、「国家債務はいつ減らすべきなのか」という報告書で、「低い債務水準は予期せぬ危機に備えられる余力となるが、債務縮小で投資と成長が犠牲になれば、(債務削減で作られた)余力は幻想に過ぎない。債務強迫から抜け出すべきだ」と指摘した。債務に対する国際社会の変化した見方が窺える。

 政府が税収を拡充せず、「債務比率」を口実に、財政支出を抑制した場合、様々な副作用が現れる。すぐに政府は、来年の予算の中で最も多くの割合(31.8%)を占める福祉予算の拡充のスピードを大幅に落とした。過去5年(2011〜2015年)に年平均7.5%ずつ増やしてきた福祉支出を、来年度予算では増加率を6.2%に引き下げた。経済規模(国内総生産=GDP)に対する福祉支出の規模は、OECD加盟国の中で最も少ないほど、韓国は福祉後進国だ。

 政府がお金を使わないことで現れるもう一つの悪影響は、家計負債の増加だ。十分な福利厚生を受けられない家計が借金を続けながら生活していくからだ。統計庁の資料によると、2014年現在、家計は住宅ローンのうち30.4%、貸付のうち73.8%を生活資金など、住宅とは無関係な用途で金融機関からお金を借りている。

世宗/キム・ギョンラク記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-09-09 20:09

https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/708191.html  訳H.J

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