買収合併7兆ウォン投資の損失響く
図体は大きくなったが収益性は悪化
信用等級は優良から4ランクも急落
社員は「失われた5年」を嘆く
様々な不正腐敗疑惑で検察召還による調査を受けたチョン・ジュンヤン前ポスコ会長が、不良企業の高価買収、協力業者への恩恵提供疑惑に続き、政権実力者への業務斡旋および不法政治資金提供疑惑まで受けている。専門経営者体制のポスコは今まで、特定支配株主(オーナー)がいなくても世界的な鉄鋼会社として成功し、財閥オーナー体制(一族所有経営)に対する代案と考えられてきた。だが、チョン前会長時期の経営失敗と不正腐敗により1968年の創社以来最大の危機を迎え、望ましい専門経営者体制という象徴性まで大きく色あせた。
チョン前会長が就任する直前の2008年と在任最後の年2013年の実績(連結基準)を比較すると、売り上げと系列社数はそれぞれ1.5倍と1.7倍増えた。だが、営業利益と純利益は58%、69%急減した。営業利益率は17.2%から4.8%に落ち込み、4分の1に目減りした。借金も2倍以上増え、負債比率が1.3倍に高まった。図体は大きくなったが、収益性と財務安定性が共に悪くなったのだ。グローバル優良企業に選ばれたポスコの信用等級も大幅に落ちている。国際信用評価会社のムーディーズは2008年のA1から2013年に4ランク低いBaa2に下げた。
事業多角化を推進したチョン前会長は、国内外の買収合併と持分投資に7兆6千億ウォン(約7600億円=財閥ドットコム推定値)も注ぎ込んだ。だが、妥当性検討もまともにせずに不良投資をして莫大な損失を自ら招来した。2010年に不良企業のソンジン・ジオテックを高値で買い取り、結局5千億ウォン以上の損失が発生させたのが代表例だ。協力会社の東洋総合建設に各種海外事業の物量を不当に集中させたという疑惑も受けている。ポスコ社員もチョン前会長在任期間(2009~2013年)を「失われた5年」と呼ぶほどだ。
“チョン・ジュンヤンの失敗”は主のない会社の専門経営者が、わずか数年で優良会社を最悪の危機に追い詰める危うさを見せつけた。ポスコは朴槿恵(パク・クネ)政権発足後にチョン前会長が退き、クォン・オジュン会長体制になって1年半が過ぎたが、迅速な構造調整と正常化が遅れ、今も危機から抜け出せないでいる。専門経営者体制が発達している米国でも、専門経営者の無能や専横で会社と株主が大きな損失を被る、いわゆる“代理人問題”が弊害として選ばれる。外国人投資家もポスコやKTなど専門経営者体制の企業を憂慮している。オランダ年金基金のパク・ユギョン理事は「財閥オーナーの専横がひどいのは間違いないが、主のない会社の支配構造弊害もそれに劣らず深刻になることもある」と評価した。
ロッテのオーナーによる経営権紛争後、財閥の支配構造改革論が浮上し守勢に追い込まれた財閥は、ポスコの事例を韓国ではオーナー体制が専門経営者体制より良いことを示す事例としている。だが、企業支配構造の専門家は“チョン・ジュンヤン事態”を専門経営者体制全体の失敗と決めつけることに警戒する。キム・ウチャン高麗大教授は「ポスコの事例は専門経営者体制の失敗ではあるが、政界の人事や利権介入も主な要因として作用した」と指摘した。チョン前会長は2009年1月に選任された当時、李明博(イ・ミョンバク)政権の政界実力者の介入疑惑が提起された。イ・グテク会長時代の2006年に最高経営者(CEO)候補推薦委員会新設などポスコ支配構造改善案をデザインしたチャン・ハソン高麗(コリョ)大教授は「制度も重要だが、何より政府が不当な人事介入を中断しなければならない」と話す。
キム高麗大教授はポスコのような専門経営者体制の成功条件に、「現職の最高経営者が上手な経営をしている場合には外部圧力で退任できないようにする評価システム、最高経営者を交替する時に外部圧力で非適格者が任命されないよう、平常時に最高経営者候補群を透明に管理するシステムが必要だ」と提案した。キム・サンジョ漢城大教授は「オーナー体制と専門経営者体制はそれぞれ長短所があり、どちらが無条件に良いと断定できるものではない」としつつ「米国式専門経営者体制の成功は経営陣を監視・牽制するための社内の独立的社会理事、社外の積極的機関投資家、社会的に効率的な司法システムという三要件がそろっているため」と分析した。
韓国語原文入力:2015-09-06 20:27