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IMF「下位20%の所得が増えれば経済成長」、トリクルダウン理論に全面反駁

登録:2015-06-17 22:33 修正:2015-06-18 06:31
所得不均衡、経済に悪影響
IMF報告書「所得不均衡の原因と結果」//ハンギョレ新聞社

 国際通貨基金(IMF)が15日、所得上位20%階層より下位20%階層の富が増加する方が経済成長に及ぼす効果がはるかに大きいとして、トリクルダウン理論に正面から反駁する報告書を出した。 トリクルダウンとは、富裕層の所得が多くなれば富裕層が投資や消費を増やし低所得層の暮らしもよくなり成長率も高くなるという概念だ。

 IMFは所属経済学者5人が1980年から2012年までの先進国と発展途上国159カ国の資料を基に所得分配と国富との関連性を調査して、このような研究結果を得たとこの日明らかにした。

 報告書によれば、所得上位20%の富が1%増加した場合、5年後の国内総生産は最終的に0.08%ポイント減るとしている。これに対して、下位20%の所得が1%増加した場合、国内総生産は同じ期間に0.38%ポイント増えている。報告書は「所得の不均衡拡大は(このように)経済成長とマクロ経済安定に重要な含意を有する」として「貧しい人々に対する所得配分を増やし、中産層の空洞化から確実に脱することが成長に有利である」と指摘した。

https://www.imf.org/external/pubs/ft/sdn/2015/sdn1513.pdf

 報告書は、所得の不均衡が経済に悪影響を及ぼす理由として次の二点を推定した。 第一に、貧しい家庭の子供たちが質の低い教育を受け、大学入学をあきらめる中で生産性が下がる可能性があるということだ。 第二に、富の集中は総需要を減らし経済成長を阻害する可能性があると報告書は分析している。

 さらに報告書は、技術的進歩と弱体化した労働組合、グローバル化、富裕層に有利な租税政策などが不平等を拡大する役割を果たしているとし、貧困を減らすための各国政府の役割が重要だと強調した。 報告書は具体的には、健康・教育政策に対する追加投資と、より進歩的な租税政策などを助言した。

 ブルームバーグなどは今回の報告書が所得不均衡の深化に対するバラク・オバマ米大統領やフランシスコ教皇などの憂慮と脈を一にするものだと分析した。 オバマ大統領は今年1月の新年国政演説で「金持ち増税」を通して中流階級を生かすことに全力を傾けると明らかにしたし、フランシスコ教皇も「経済的不平等」に対する批判の声を上げた。

 しかし、IMFの今回の報告書が個別国家に対するIMFの実際の政策助言基調とは大きく異なるという指摘も出ている。 ガーディアンは 「報告書は労動市場に対する規制緩和が所得不均衡と関連があると明らかにした」とした上で「しかし、IMFはギリシャとの交渉で労働者の権利を弱化させるために努力している」と皮肉った。

イ・ヨンイン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/globaleconomy/696275.html 韓国語原文入力:2015-06-16 21:12
訳A.K(1227字)

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