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韓国の「家計負債」危険水位に…

登録:2015-05-25 09:27 修正:2015-05-25 15:55
迫られる責任限定住宅担保融資の導入
韓国銀行によると、自宅を購入するため借りた住宅担保融資の他、信用融資などすべて合わせた家計信用残額は昨年4分期基準で1089兆ウォンに達する=資料写真//ハンギョレ新聞社

 「残る人生は銀行の借金を返すことにだけ使われるでしょう。今後、私はなにも持つことができない」。スペインのトレドに住むマノーロ・マルバン氏(59)は、こう話して涙を流した。マルバン氏は、2008年の世界金融危機の衝撃をまともに受けた。彼は株式投資家でもなく、大々的な構造調整が進行中の金融会社のファンドマネジャーでもなく、ペットを売る小さな店を運営する平凡な自営業者にすぎなかった。

 マルバン氏を借金のどん底に陥らせたのは、不動産ブームが真っ最中だった2006年に住んでいたアパートの影響が大きかった。金融危機で景気が悪くなり、過不足なく続けていた事業が打撃を受け始めた。アパートを買うために受けた住宅担保融資の元利金返済も適時にできなくなり、結局、自宅と店舗が銀行へ渡った。問題はこれが終わりでないところにあった。住宅価格が暴落し、自宅と店舗を処分しても、マルバン氏が返さねばならない借金が14万ドルも残ったのだ。

 米紙ニューヨーク・タイムズは2010年10月28日付「スペインでは家を差し押さえられても借金は残る」と題した記事で、マルバン氏のケースを詳細に報じた。同紙は「不動産市場での高い家計借金のレベルは、アメリカもスペインも違わない。しかしアメリカ人は住宅が差し押さえられるだけで借金の苦痛から抜け出せたが、マルバン氏をはじめとする数千人のスペイン人にとり住宅差し押さえは、新たな苦痛の始まり」と伝えた。

 アメリカ人が相対的に借金のどん底から容易に抜け出すことができたのは「責任限定住宅担保融資」(非遡及住宅担保融資)という制度があったためだ。この制度は、債務者の責任を、抵当権が設定された住宅価値に限定する。住宅価格が暴落しても、銀行に家の鍵だけ手渡せば住宅関連の借金がすべて消滅するので、経済的に再起しやすくなる。

安全装置を施した米国
住宅価格が暴落しても借金脱出可能
金融委研究サービス報告書
「家計負債1100兆ウォン…対策出さねば」

 国内でも責任限定住宅担保融資を導入するため、政府が内部検討の作業に着手した。ハンギョレは、金融委が昨年5月にソウル大金融法センター(研究責任者パク・ジュン・ソウル大法学専門大学院教授)に依頼して提出させた報告書「非遡及住宅担保融資制度導入妥当性研究」を独自入手した。同報告書は「責任限定融資は金融システムの安定性と金融消費者の保護、債務者の住居権保障のため導入の必要性が認められる」と提案した。

 金融委報告書は、責任限定住宅担保融資制度を扱った国内で初の政府サービス報告書だ。同報告からは「適用対象住宅融資の範囲を居住実績用住宅に限定すれば(この制度導入により)債務者の戦略的債務不履行憂慮も解消することができる」と指摘し、責任限定融資の国内導入を勧告した。ト・ギュサン金融委員会金融サービス局長は「責任限定住宅担保融資は住宅価格の崩壊など、万が一の事態に備え最小限の家計安全弁として機能することができる。既存の現行融資(訴求貸し出し)と責任限定融資を需要者が選択することができるような方案を検討している」と明らかにした。

 国内の「家計負債」は1100兆ウォン(約120兆円)に肉迫する。韓国銀行によれば、自宅を購入するために借りた住宅担保融資の他、信用融資などすべて合わせた家計信用残額は、昨年4分期(10月~12月)基準で1089兆ウォンに達する。国際的比較に使われる資金循環表基準にともなう家計の可処分所得対比負債比率も、昨年末基準164.2%で、経済協力開発機構(OECD)加盟国平均値(133.5%)をはるかに上回る。家計負債による家計の潜在的な不良危険がそれだけ大きいことを意味する。さらに人口減少と高齢化など、人口構造変化による住宅価格下落の圧力が今後ますます強まる見込みなので、家計の不良危険に備えた安全弁として責任限定融資の導入の必要性が一層強調されている。

 住宅金融専門家のユ・スンドン祥明(サンミョン)大教授(経済学)は「住宅価格下落の危険を債務者である家計が全面的に抱え込んでいる現行の融資制度は不合理だ。公的資金(住宅基金)融資や一定価格水準以下の住宅を担保にする融資には、債務者の返済責任を限定する制度を導入する必要がある」と提案した。

 責任限定融資が施行中の米国のメディアは、この制度が景気回復のスピードを出すのに役に立ったと評価してきた。米紙ウォールストリート・ジャーナルは2013年2月1日付で、スペイン、アイルランド、ポルトガルなど住宅市場が崩壊したヨーロッパ国家で、自宅を銀行にとられても借金返済負担から抜け出せずにいる人々の理由を扱った。同紙は「残った借金がヨーロッパ(経済)回復を阻んでいる」と題した記事で「住宅担保融資を返すことが出来なかったアメリカ人は、家の鍵を銀行に渡すだけで借金をすべて返済することができる。しかし多くのヨーロッパ人は、家を失った後も借金の罠にかかっている。携帯電話を開通することさえ難しい」と伝えた。

世宗/キム・ギョンナク記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-05-24 22:10

https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/692655.html 訳Y.B

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