「イ・ジェヨン副会長は、業務遂行と権限行使において何の制約もない」
サムスン電子幹部の言葉は、サムスン電子イ・ジェヨン副会長が父親イ・ゴンヒ会長に代わって事実上の最高経営責任者の役割を果たしていることを象徴的に示している。昨年5月10日に会長が突然入院した後、サムスンの3世同士の後継競争の可能性など、不確実性が浮き彫りになったことを考えると、サムスンは予想より早く「イ・ジェヨン中心の3世体制」を構築したものと見られる。その裏面にはサムソン家の元老的立場となった母親ホン・ラヒ氏の役割が大きかったという。
それでもサムスンの現状が過渡期と呼ばれるのは、グループのトップが依然としてイ会長であるからだ。イ会長が病床から脱したとしても経営復帰は難しいことから、サムスンの「2世経営」の時代は、事実上、幕を閉じたと言える。しかし「3世経営」は、まだ正式に始まってない。サムスングループのコントロールタワーの役割を果たす将来戦略室の役員は、イ副会長の昇進が遅れることについて「父親がまだ生存しているのに、息子が会長に昇格することは、子としての道理ではない」と儒教的文化が背景にあると説明する。
サムスンが実績鈍化による非常事態にある中、このような過渡期が長引くのは望ましくないと思われる。早ければ上半期、または年内に会長に昇進するという噂が絶えない背景だ。結局イ副会長の昇進において残っているのは、タイミングだけというのが大方の見方だ。これに関連し、サムスンが5月中に、イ副会長昇進の代わりに事実上の最高経営責任者の地位にあることを示して象徴的措置を取る予定であることが伝えられ、関心が集まっている。
「イ・ジェヨン体制」を示す象徴的な措置
今月中に発表される可能性
父親とは異なり、日常の経営に積極的に参加
「登記取締役にすべき」の声高まる可能性
「不正な承継など繰り返さないように」との指摘も
イ会長が日常の経営は専門経営者に任せ、グループ経営の大きな方向を提示して「隠遁の皇帝」と呼ばれたのとは違い、イ副会長は、日常の経営に積極的に参加している。このため、イ副会長が会長になった場合、「権限と責任の一致」という面で、少なくともサムスン電子の登記取締役になることを求める市場の声が高まる見込みだ。一部では、イ副会長のスタイルに対する心配の声も聞こえる。キム・ジンバン仁荷大学教授(経済学)は、「イ副会長が経営をうまく執り行うならいいが、それが上手く行かなかった場合、リスクがあまりにも大きいだけに、経営は専門経営者に任せて、本人は大株主として監督の役割に忠実な方が望ましい」と述べた。
サムスンは、「イ・ジェヨン時代」に進むために支配構造を先進化し、社会的責任を果たさなければならないという課題を抱えている。サムスンはこれまで、優れた経営成果にもかかわらず、支配構造と社会的責任の面では、社会の要求に適切に対応できず、「光と影」が共存するという評価を受けてきた。所有支配構造と関連し、サムスン電子の株式を処分しなければならない状況にあらかじめ備え、後進的循環出資構造の解消とイ副会長の安定的な支配力の確保のために、金融会社であるサムスン生命の持株会社への転換が有力とされている。例えば、サムスン電子とサムスン物産を、イ副会長が大株主である第一毛織との合併により、持株会社に転換するというシナリオなどが出ている。
イ会長は、在任27年間、2006年(安企部のXファイル事件)と2008年(サムスン特検事件)の2度にわたり国民に向けて謝罪した。サムスンはそのたびに、「国民の声に耳を傾けなかった」と反省した。サムスンは、過去1年間イ副会長の主導でサムスン関連の社会争点について、過去よりも柔軟な姿勢を見せて期待を集めた。白血病被害者に謝罪し、サムスン電子サービス協力会社における労使間の団体協約の締結を導き出したのが代表的な例だ。
しかし、越えなければならない山は多い。白血病の問題は、犠牲者の家族に代わって交渉に出た「パンオルリム」と対話してから1年になるにもかかわらず、合意に達していない。サムスンエバーランドとサムスン電子サービス協力会社も労組弾圧の疑いが提起されている。サムスンSDSに関連し、不当利得の返還のためのいわゆる「イ・ハクス特別法」(特定財産犯罪収益等の返還法)も国会で発議されている。イ副会長などがサムスンエバーランド(現在の第一毛織)とサムスンSDSの株式を安価で取引したことで得た数兆ウォン台の上場差益をめぐる問題についても、解決策が必要な状況である。
サムスンは2008年、「変化した経営環境や市場の状況に合わない過去の経営を踏襲していない」と約束したが、明確な成果はない。キム・サンジョ漢城大学教授(経済学)は、「イ・ジェヨン時代には、グループ経営を社会の利益と一致する方向に合わせて行かなければならない」とし「サムスン電子の理事会を総帥好みの人々で構成する閉鎖的な態度から脱皮し、複数の利害関係者の意見を反映できるようにしなければならない」と提案した。
サムスンが3世帯承継と支配構造改編の過程で、過去のような不正が繰り返されないようにすべきとの注文も出ている。カトリック大学チョ・ドンンムン教授(社会学)は「イ・ビョンチョル、イ・ゴンヒ会長が77年間サムスンを経営したことを考えると、イ副会長は、今後20〜30年後まで見据えた持続可能な所有支配構造の構築と社会的責任の履行を検討する必要がある」と述べた。サムスン電子幹部は、「多様な利害関係者の声を聞こうと努力中」と変化の意志を明らかにした。もしサムスンが経営成果に加え、社会的な尊敬まで得られるのなら、「イ・ゴンヒ時代」とは異なる「イ・ジェヨンのニューサムスン時代」を開く可能性がより一層高くなるだろう。
韓国語原文入力: 2015-05-07 21:50