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[ニュース分析] 5G移動通信、そんなに速くして何をする?

登録:2015-02-16 23:47 修正:2015-02-18 15:28
サムスン電子は昨年10月、時速100キロ以上で走る車の中で毎秒150MBのデータを途切れることなく伝送する5世代(5G)移動通信技術の試演に成功したと明らかにした。サムスン電子の研究員が超高速5G移動通信を試演している。サムスン電子提供//ハンギョレ新聞社

 4世代移動通信のLTEが韓国で初めて商用化されたのが2011年の夏だ。以後、ほとんど毎年のようにLTEアドバンスト(LTE-A)、広帯域LTE-Aといった具合にアップグレードされ、最近は3バンドLTE-Aが登場した。LTEより2倍速いと自慢したのが数日前のことのようだが、いつのまにか3倍、最近では4倍速くなったという。2011年当時、75Mbpsだった最高のデータダウンロードの速度が今や300Mbpsまで到達した。

 この頃になってようやくLTEという用語が耳に慣れ親しんだかと思ったが、通信業界ではすでに5Gの5世代移動通信に対する話題で熱い。すでに4G時代に無線が有線の速度を追い抜き、800MBの映画一本を20数秒でダウンロードできて、走行中の車内で高画質動画ストリーミングで途切れずに見れるのに、いったいどこまで、何のためにこれ以上速くするのだろうか?

電話機発達史(1) //ハンギョレ新聞社

4G LTE、800MBの映画を20秒でダウンロード
5G 伝送・応答速度がはるかに高速化

スポーツ中継などで画期的変化
自動走行自動車などにも活用可能

国際標準先行獲得のメリットを享受するため
関連業界通信技術特許で競争中

2018年平昌オリンピックで試験サービス
日本も2020年の東京オリンピックが目標

■莫大なデータ伝送量がもたらす没入感

 どの程度の移動通信技術を5Gと規定するかについては、まだ国際的な合意はない。従って5Gのデータ伝送速度がどれくらいになるかも、現時点ではまだ言えない。ある人はLTEより1000倍速い速度だと言い、また別の人は10倍速い速度だとも言う。サムスン電子、LG電子など携帯電話端末メーカーと移動通信3社、その他にも移動通信と関連がある様々な企業で構成された韓国の会議体である「5Gフォーラム」では、ひとまず最高50Gbpsのダウンロード速度を提示している。現在の3バンドLTE-A(300Mbps)の166倍に達する速度だ。これほどのデータ伝送速度があるなら何が可能だろうか?

 今月中に韓国内で発売が予想されるサムスン電子の「ギャラクシーVR」を通じて、5Gがもたらす近未来を垣間見ることができる。 ゴーグルのようなこの製品はバーチャルリアリティ・ヘッドセットだ。 サムスン電子は昨年11月、米国で開かれたサムスン・デベロッパー・カンファレンスでギャラクシーVRを披露し、「プロジェクト・ビヨンド」(Project Beyond)という名の映像撮影装備を一緒に紹介した。 丸い皿のようなこの装備には周囲に16個、上に1個のフルHD級カメラがついている。計17個のカメラを通じてこの装備は周辺360度の映像を同時に撮影できる。 この装備で撮影した映像をギャラクシーVRを通じてみれば、使用者が向く方向に応じて画面が変わる。映像を撮影した場所に実際に立っているような感じが得られるわけだ。

 プロジェクト・ビヨンドで撮った映像をギャラクシーVRにリアルタイム伝送したら、現在私たちが消費するメディア コンテンツに画期的な変化が起きることになる。 スポーツ中継がその代表例だ。カメラの位置に応じて実際観覧席に座っているような感じにもなれ、あるいは競技場の中央で選手たちの動きを見ることもできる。 これは4Gでは不可能だ。プロジェクト・ビヨンドに17個のカメラがついているということは、一般的な映像に較べてデータの大きさが17倍という意味だ。現在のフルHD動画ストリーミングより17倍のデータ伝送速度が必要だ。フルHDより4倍(4K)または、8倍(8K)鮮明な超高画質ならば、さらに数十倍のデータ伝送速度が必要になる。 5Gが必要な理由だ。

 ホログラムも5Gを語る際に必ず登場するサービスだ。 最近ソウル東大門(トンデムン)とコエックスにホログラムで製作された韓流アイドル歌手公演を鑑賞できる劇場が開場した。実物を見るような立体感を感じられるホログラムは、バーチャルリアリティよりはるかに大きなデータを占める。4G時代に映像通話をしたように、5G時代にはホログラム通話ができるという予測が出てくる。

電話機発達史(2) //ハンギョレ新聞社

■空間を超越する1000分の1秒

 5G移動通信を語る時にデータ伝送速度以外に重要なものが応答速度だ。専門家はよく「レイテンシー」(latency)と呼ぶ。 データ伝送速度が一度に最大どれだけのデータを流せるかを表す概念とすれば、応答速度は大きさの小さなデータが使用者の端末と基地局の間を行き来するのにかかる時間、または使用者の端末とサーバー、あるいは他の使用者の端末間を行き来するのにかかる時間を表す概念だ。

 4Gでの応答速度は10~50ms(ミリセカンド・1000分の1秒)まで早くなった。近頃のスマートフォンユーザーなら、誤って通話ボタンを押し、すぐに取消ボタンを押したのに、相手がそれを知ってなぜ電話をかけてやめたのかと尋ねられる経験をしただろう。 3Gであればまだ信号が相手方に伝わらないほどの時間なのに、4Gでは信号が到達してしまうからだ。 4Gで音声通話がデータ通信で可能になったこと(VoLTE)も、応答速度が速くなったためだ。 3Gでは音声情報をデータとして伝送すれば、一方のユーザーがした話を反対側の相手方が聴くまでに相当な時間がかかり、自然な対話は不可能だった。

 すでに4Gで十分に早くなったと思われる応答速度が、5Gではさらに10倍程度早くなると業界では見ている。 このように早い応答速度の必要性は、自律走行自動車または遠隔操縦自動車を意味する「コネクテッドカー」を考えれば簡単に理解できる。 4G移動通信で自動車を制御すると仮定してみよう。 自動車に設置されたカメラやレーダーから障害物に関する情報を遠隔サーバーに送るのに50ms、この情報を基に方向転換やブレーキ命令を再び自動車に送るのに50msかかる。両方向の通信を合わせて100msだ。 時速100kmで走る車ならばこの時間に2.7メートル移動する。 搭乗者の安全を脅かす水準だ。 応答速度が10倍早い5Gならば、同じことをするのに10msかかって、その間に自動車は27センチしか移動しない。 この程度ならば安心して運転を任せられることになる。

 鮮やかなバーチャルリアリティを可能にするデータ伝送速度と、人が遅延を感じられない程に早い応答速度が結びつけば、極めて精巧な作業を遠隔操縦することが可能になる。 遠く離れたところでも実際現場にいるように状況を判断でき、何の遅延もなく装備やロボットなどを操作できるためだ。 ゲームに適用されれば、今のモバイル ゲームとは比較にならない程に実感できる経験を提供することになるだろう。

■新たな舞台で繰り広げられる特許戦争

 サムスン電子は昨年末、走る自動車内で超高周波帯域を利用してギガ級のデータ伝送速度の試演に成功したと発表した。移動通信社のSKTやKTも大小の通信技術を新たに開発したという発表を相次いで出している。 5Gフォーラムは先週、5G技術がどのような方向に発展しなければならないかなどを主題としてシンポジウムを開いた。 韓国政府も今年初め「5G戦略推進委員会」という名の民官協議体を設けた。

 韓国企業と政府が早くから5G技術開発に熱を上げるのは国際標準を先行獲得するためだ。 韓国企業が特許を持つ技術が5G関連国際標準として多く認められるほど、韓国の情報通信製品の競争力が高まる。専門家らは永く続いたアップルとサムスン電子の特許攻防で標準特許の重要性が分かると話す。 SKT総合技術院のチェ・チャンスン博士は「アップルがアイフォンのデザインとUI(ユーザインターフェース)関連特許で攻勢をかけたが、サムスン電子がそれでも一定防御できたのはサムスン電子が保有した4G関連標準特許が大きな役割をしたと見る。アップルは通信技術特許はほとんどないが、サムスンは世界で通信技術特許を最も多く持っている企業の一つだ」と話した。未来創造科学部のキム・グァンス情報通信放送技術政策課長は「あらゆる分野で特許攻防が熾烈だが、最も激しい分野が情報通信技術(ICT)分野だ。 移動通信特許をどれくらい持っているかによって、端末や装備を一台売る時に支払うライセンス費用が変わる。 特許がなければ同じ物を作っても製造原価がはるかに高くなる」と話した。

 5G技術の先行獲得を通じて、この間端末製造だけに集中してきた韓国企業の事業分野が拡大する可能性があるという観測も出ている。 昨年、サムスン電子のスマートフォン販売実績が急落した状況で、このような観測は新たな成長可能性を提示する。 KT融合技術院キム・ハソン博士は「今まで最高仕様のスマートフォンに入るチップはクァルコムが独占してきたが、最近になってチップ設計および製造で韓国企業の技術力がクァルコムに追いついたと見る人が多い。 5G技術を先行獲得すればチップや通信装備のようにこれまで韓国企業が弱かった分野に進出する機会が開かれうる」と話した。

 韓国政府と企業らは、2018年平昌(ピョンチャン)冬季オリンピックで5G試験サービスを試演する計画だ。未来部のキム・グァンス課長は「5G技術方式は企業と国家とで利害関係が違う。世界的に5G標準化の日程が2018~2019年に始まるが、韓国が提案する技術が国際標準に採択される可能性を高めるには、それが実際に可能であることを示さなければならない。そのために平昌冬季オリンピックでの試演が重要だ。日本も2020年の東京オリンピックで自分たちが考える5Gを実現するという目標を立てている。それより先に韓国が強い印象を残さなければならない」と話した。

ユ・シンジェ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

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モバイルゲームの急成長は4G商用化のおかげ

韓国の移動通信技術、進化の歴史

 1984年に韓国移動通信(今日のSKテレコム)が設立され、韓国で移動通信サービスが始まった。 アナログ方式の1世代移動通信だった。 ソウル、安養(アンヤン)、水原(スウォン)、城南(ソンナム)など首都圏地域で最初にサービスが始まり、約10年で全国74市に拡大した。 裕福な社長が乗用車に自動車電話を設置したり、レンガほどもある携帯電話を持っていた時期だった。

 移動通信を大衆化させたのは2Gだった。 デジタル方式を採択した2Gは、1Gに比べて同一周波数帯域当たり多くの加入者を収容でき、経済性を大幅に高めた。1996年、韓国でコード分割多重接続(CDMA)方式の移動通信が世界で初めて商用化されたが、わずか3年後の1999年に国内移動電話加入者が1000万人を突破した。1896年に慶運宮(現在の徳寿宮)に初めて設置された固定電話が1000万回線を突破するまでに92年かかったことと比較すれば驚異的な速度だ。 2Gは音声通話が中心だった。 14.4Kbpsのデータ通信が可能ではあったが、カラーリングをかろうじてダウンロードできる程度の水準だった。

2Gが携帯電話を大衆化し
3Gがスマートフォンの道を開く
4Gはテレビまで脅かす

 2003年、広帯域CDMA(WCDMA)方式の3G通信が韓国内で商用化された。データ通信の開始だった。14.4Mbpsのデータ伝送速度でテレビ通話とインターネット接続が可能になった。これがスマートフォンの登場につながった。 2007年、アップルが最初のアイフォンを発売し、そしてスマートフォンの時代が始まった。 この時に対応が遅れたせいで世界1位の携帯電話メーカーだったノキアは没落し、いちはやく追跡を始めたサムスン電子はスマートフォン市場占有率世界1位にまで上がることができた。 3Gは国際的に通信が標準化された時期でもある。使っている携帯電話でそのままグローバル ローミングが可能になったし、通信市場の国家間障壁が事実上消えた。

 2011年、LTEサービスが韓国で初めて商用化され4G時代が開かれた。データ伝送速度が急速に向上し動画ストリーミングが普遍化してスマートフォンがテレビの地位を脅かすことになった。 データ応答速度も早くなりモバイル ゲームが急成長した。

ユ・シンジェ記者

 本記事の作成に当たり助けて戴いた方々:SKT総合技術院5Gテクラボ チョ・ソンホ チーム長、チェ・チャンスン博士、KT融合技術院モバイル革新TF キム・ハソン責任研究員、サムスン電子DMC研究所次世代通信研究チーム ファン・ソンス博士

https://www.hani.co.kr/arti/economy/it/678492.html 韓国語原文入力:2015/02/16 09:08
訳J.S(5474字)

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