輸出から内需へ、企業から家計に、大企業から中小企業に連なる所得の流れが円滑でないのが韓国経済が抱える最も大きな問題だ。 輸出大企業を中心に稼いだ金が賃金等を通して家計所得に流れて行かないということだ。 これは家計消費と企業投資の不振につながり、結局は経済成長率を下げる悪循環を起こしている。 家計所得の増大を通じて消費と投資を促進し、経済成長の好循環構造を作らなければならないという‘所得主導成長論’が広がっているのもこのためだ。
韓国経済は2008年から昨年まで年平均2.9%の成長に終わった。これは経済が低成長局面に進入したと言える水準だ。 それ以前には1981~1986年は年平均9.6%、1987~1997年年には平均8.4%、1999~2007年にも年平均5.8%の成長率を記録していた。 2008年世界金融危機という‘外部変数’の影響があったりはしたが、低成長の背景には消費と投資の不振という構造的な‘内部変数’がある。 最近6年間の消費と投資増加率はそれぞれ年平均2.0%、0.7%の増加に終わった。これは経済成長率より更に低い数値だ。反面、輸出は同じ期間に6.3%増えた。
このような輸出増加に力づけられて経済が成長したわけだ。 輸出の増加は輸出大企業を中心にした企業所得の大幅増加になって現れている。 2000年以後2012年まで、法人(企業)部門の営業利益は年平均で8%ずつ増加してきた。 その結果、10大財閥は500兆ウォンを越える資金を社内留保金として積んでいる。
2000~2012年に企業所得が年平均8%ずつ増加して
社内留保金が500兆ウォンが積み上げられた反面
家計部門の所得は0.5%ずつ減り
政府側も「有効需要喚起が必要」
反面、同じ期間に家計部門(自営業者含む)の所得は同じ期間に0.5%ずつ減少したことが分かった。 外国為替危機以後、実質賃金増加率は実質労働生産性増加率よりも低い。 所得が増えないために民間消費が経済に占める比重も減り続けている。 イ・サンホン国際労働機構(ILO)研究調整官は<ハンギョレ>との通話で「この間、労働所得引き上げを自制して生じる利潤と余剰を投資に転換させ、経済に活力を与えるという考え方が支配的だった」として「労働所得の減少で減る消費を投資や輸出増加が補充する筈だったが、それが思ったように増加しなかった」と話した。 彼は付け加えて「総輸出の拡大を通した総需要の確保は今後も難しそうだ」として「既存のやり方ではなく、家計の可処分所得や労働所得を引き上げる方式に政策を切り替えてこそ韓国経済が活力を取り戻し成長できる」と話した。
経済部署を中心に政府内でもこのような認識が広がっている。 チェ・ギョンファン副総理 兼 企画財政部長官候補者は10日、パク・ヨンソン新政治連合院内代表の書面質問に対して「内需活性化など需要側面の経済政策を補完」すると明らかにした。 この間推進してきた供給側面の経済政策が経済の成長潜在力を下げ、国民所得の増加を鈍化させているという判断と見られる。 チェ候補者が「企業の利益が賃金と配当、設備投資など実物経済と家計部門に流れる必要がある」と明らかにしているのもこのためだ。
これは賃金を軸とする家計所得の増大を試みて、経済成長の好循環構造を作らなければならないという所得主導成長論と脈が通じている。 ある企画財政部高位関係者は「もはや‘セイの法則’(供給が需要を自ら作り出すという理論)は通用しない。 今は有効需要(所得に後押しされた消費)を起こす問題が最も重要だ」と話した。 そのためには国民所得全体に企業が占める持分を減らし、労働所得の持分を増やさなければならない。 イ・ビョンヒ韓国労働研究院先任研究委員は「労働と資本所得の均衡の回復が必要だ」と話した。
所得主導成長論が言う家計所得の増大問題は、単純に企業と家計間の持分調整だけに限定されない。 韓国の場合には、企業と家計間の格差だけでなく、大-中小企業間格差、家計内部の格差という三重の不均衡が重なっている。 大-中小企業間格差で中小企業の持分が相対的に小さくなれば、我が国の雇用の大部分を占めている中小企業の労働者の持分もまともに増えない。 更に家計所得が増えても、金持ちの持分だけが増加して中産層と低所得階層の持分が増えなければ、消費が大きく増加しない構造だ。 このような三重の不均衡を解消してこそ、有効需要創出という課題をまともに解決できるということだ。 リュ・イグン、キム・ギョンナク記者 ryuyigeun@hani.co.kr