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公務員など3千人管理…“持ち主のない金”のためにロビーまたロビー

登録:2014-02-07 20:26 修正:2014-09-03 16:48
【大企業に流れる国のお金(1)】
均衡失った支援政策
Kグループの国庫予算受取り熱戦

 国庫支援を受けるに当たって大企業が既得権を享受する構造は、自分たちの利益を貫徹させられる組織と金があるからだ。これを基にして協会や団体を立ち上げ、自分たちに有利な論理を拡大再生産して専門家とマスコミを味方に引き入れる。時には便法や不法をまじえて国家資源の配分を決定する政府と国会を直接動かす。

 このようにして、大企業が国の金をさらって行く過程を見せてくれる以下の文は、錦湖(クムホ)建設、斗山(トゥサン)インフラコアに対する裁判所の判決文や潜水艦搭載装備研究開発関連談合、4大河川事業談合に対する公正取引委員会全員会議の議決書など、事実をもとにして仮想の企業ストーリーに再構成されている。また、大手企業の役員、国会議員および補佐官、企画財政部公務員など、多数の利害関係者のインタビューも反映させた。このほか、監査院の金融公企業の経営管理実態報告書、<参与連帯>の公職者再就職分析も参考にした。

早朝6時

「キム・イルヨプ教授です。」

K建設の営業チーム状況室のホン・ソンジュン部長に電話がかかってきた。予め6000万ウォンを渡したP市役所の公務員は「キム教授」と言った。 P市役所は企業のロビーを避けるためとして、審査当日の午前4時にP都市複合コミュニティセンター(工事予算590億ウォン)の設計適格審議委員会の評価委員を選定した。しかし、金を受け取った公務員は選定が終わるやいなや企業に評価委員の名前を知らせてやった。ホン部長は「走る奴の上に飛ぶ奴あり(上には上がある)」と独りごちた。 ホン部長は京畿道(キョンギド)龍仁市(ヨンインシ)水枝区(スジグ)上峴洞(サンヒョンドン)のあるマンション前に待機していた職員に電話をかけた。「キム教授になった。計画通りやれ」

 20分後、K建設の職員は設計適格審議委員会に行くために家を出るキム・イルヨプ教授の前に立ちはだかった。「先生、私どもの会社に良い点数をお願いします。」 キム教授に100ドル札400枚(4万ドル、約5000万ウォン)の入ったカバンを差し出した。すでに顔見知りの職員なので、キム教授はカバンを受け取りうなずいた。キム教授は同日の審議委でK建設に最高点を与えるだろう。 ホン部長は受注を確信した。 「政府の金は早い者勝ちさ・・・」

公務員も審査委員も味方・・・裏金かけて590億ウォンの工事受注

午前10時

事務室に出勤したパク・ソンスK建設常務は、明け方にP市役所の受注作業がうまく進行されたという報告を受けた。パク常務は2年前に作った“知人管理システム”が効果を上げているようだと考えた。 財界首位圏であるKグループの中核的系列会社K建設は、2年前工事受注が急減した。K建設は公共機関が発注する大型建設工事を狙うことにした。政府発注の工事は設計と施工を同時に発注する工事(ターンキー入札)が多い。 大企業はこの工事を受注した後、実際の工事は下請け業者に分けて安く請け負わせる。この過程で大企業がせしめる利益が大きく、政府予算が浪費される恐れが多いという批判が多かった。パク常務もこの批判をなだめる論理を作って政府とマスコミに撒くのに苦労した。

 このような隙にK建設は受注のための“作戦”を立てた。ターンキー入札工事の設計適格評価委員の資格を持った大学教授及び公務員など3000人余りを管理することにした。「職員のうち、学縁・地縁等を考慮して、近い人を担当者に指定して管理せよ」 会社の指示が下り、職員たちは会社の知人管理システムを通してロビー活動の内訳を定期的に報告した。豊かな人的ネットワークと資金力のある大企業であるから可能なことだった。

 パク常務は、ホン部長に評価委員の名簿を流した公務員に2000万ウォンをさらに準備して与えるよう指示した。そしてキム教授には研究を委託するようにと言った。政府が企業のロビーを食い止めるために、最近審査委員の数を減らし、管理を強化しようとしたので、彼らともっと深い関係を維持する必要があると判断した。ホン部長は事前に金を渡していないイ某大学教授にも、デパートの10万ウォン商品券100枚を用意して1000万ウォンを渡すと言った。

国会議員補佐官と密会・・・「税制改編案の情報下さいよ」

昼12時

パク・ソンス常務は、ソウル汝矣島(ヨイド)の国会前にある昼食の約束場所に少し遅れて着いた。すでに席にはKグループの対官担当部長と、ある国会議員の補佐官が座っていた。この補佐官がパク常務の高校の後輩なので、Kグループの部長が席を共にするよう要請したのだ。 Kグループの部長は、最近グループの系列会社で取り扱うS物品の関税が低くなりそうなのを見て、夜も昼も国会に詰めながら情報を探っていた。彼は補佐官にかなりの時間をかけて「Nグループが我々を殺そうとS物品の関税を抑えるためにロビー活動を行っているんだから」と話した。 Kグループと仲の悪いNグループは最近、S物品の事業に参入し競争構図を作っているといううわさが出ていた。関税を引き下げ、進入障壁をなくすということだった。

 国会の企画財政委員会所属の国会議員の下で勤務する補佐官はじっと聞いていたが、「一旦、企画財政部が税制改編案を持ってくるのを見てみなければ」と答えた。その言葉を聞きながらパク常務は「租税に関するパワーは、企画財政部から国会に移った」と言ったある大学教授の言葉を思い出した。すでに国会は、企画財政部の税制室が抜けた状態で、与野党が合意して所得税率を引き上げたこともある。 “経済民主化”がイシューとなったときも、企業は国会議員の動きを把握するのに余念がなかった。

 Kグループにも系列会社別に国会を担当する職員たちがいる。 法案が非課税減免と調達など企業利益に及ぼす影響力が増大するとともに、以前“窓口”だった協会にばかり任せておくわけにはいかなくなった。国会は“市場”(マーケット)になった。パク常務はお昼の席が終わる頃、補佐官に「この仕事が終わったら、うちの会社に来るのはどう?」と一言言葉をかけてみた。補佐官は笑って「最近随分行っているそうですね」と言った。パク常務は、この補佐官がもっと情報を持ってくるようにするのは「金だろうか、就職口だろうか」とふと考えた。

企業同士がつるんで補助金分け合い・・・一旦受取ったらどこに使おうが勝手

午後5時

国会から戻って来たパク常務の事務室にチョ・ヒョンジン常務が訪ねてきた。 Kグループの防衛産業メーカーに勤める入社同期のチョ常務の顔は暗かった。 K防衛産業メーカーは、ライバル会社とともに2兆7000億ウォン規模の潜水艦研究開発事業を談合し、公正取引委員会に摘発された。公取委は談合に加わった4社に4億1700万ウォンから26億7800万ウォンまでそれぞれ課徴金を課した。パク常務は「一体どうして公取委なんかに引っかかったのか」と尋ねた。チョ常務は「どうしたらいいだろう」と言って打ち明けた。

 「潜水艦事業を受注するために競争会社の役員に会った。その役員に“水上艦はお宅が主幹会社になることを認めるから、潜水艦はうちが主幹会社になるようにしてほしい”と言ったんだ」 兵器を開発し国家に納品する防衛産業研究開発事業は、これまで専門化・系列化制度があって1企業の独占事業のようになっていた。しかし、2009年からこの制度が廃止され、防衛産業メーカーは競争に直面した。

 「出血競争が避けられなかった。それで“受注目標を達成し、出血競争を止揚できる協力が最善の方策”だと報告した。」チョ常務は「うちはそれでも“協力”と言ったんだが、他社は“相互独占的な協力関係を結び第3者のセンサー分野への進入を遮断することを目的とする”と書いて、その文書が公取委の調査で出てしまった。」 企業の談合は政府や国民に一層多くの資金を企業に支払わせることになる。

 パク常務はチョ常務に「心配するな」と言い、政府の直接支援金を流用してばれた他社の話を聞かせてやった。その会社は、政府研究開発補助金177億6500万ウォンを受け取り、そのうち77億400万ウォンを流用したのが検察に摘発された。有罪判決を受けたが、会社は資金を流用した職員らをかばった。パク常務は「政府資金を受取って、既存の技術を適当に包装して提出し、他の研究に使うというのが慣行だったじゃないか。 会社の金を節約したのだからいいことじゃないか。 その人たち、あとで昇進までしたそうだ。 君も大丈夫だよ」と言った。企業が望むのは道徳ではない。

金づるが詰まったら国策銀行のコネ利用・・・就職口保証するから融資承認頼む

午後7時

退勤後、パク常務は国策銀行に勤める友人に会って一緒に食事をした。友人は「最近ある大企業から監査として来いと言われて、どうするか思案中だ」と言った。パク常務も、その企業が経営困難になり、“資金源を握っている”金融機関に手を伸ばしているという噂を聞いている。友人もまた、どんどん上がって来る後輩たちもいるしで、「退職後も専門性を発揮できる」と説得する企業の言葉に揺れていた。 ヘッドハンター会社の推薦も、すでに内定者のいる“八百長的”なケースが多い。

 代わりに友人は「自分の席を作ろうとすれば、どうも融資承認に力を貸さなければならないようだ」と言った。彼もまた、先輩たちが退職する前に、融資の実績がなかった会社に突然1300億~4000億ウォンずつ融資承認してやった例を見ている。「あんなことしていいのか」という気もしたが、実際に退職後にその会社に安着した先輩たちの姿を見ながら「仕方がない」と首を振ったりもした。

 パク常務は苦々しい思いだった。 自分のやっていることもそうだが、「国の仕事をした方がいい」と言っていた友人もまた、企業によって揺らいでいるというのが心に引っかかった。“良い”友人が企業にとって“良い”友人に変わってしまうのを彼は多く見てきた。 Kグループにもやはり、国策銀行出身の役員たちが入ってきている。公的資金の支援を受ける企業が増える中で、経営を監視するという名分で企業に銀行出身の“天下り”が降りてくるのが異常に見えないほどだった。

 パク常務は「公職者倫理規定には引っかからないのか」と心配した。友人は「最近は、直ぐにその企業には入らず、規模が小さな系列会社や下請け会社に籍を置くように言われるんだ。そうすれば業務関連性もなくて引っかかる心配もない」と、大したことないかのように受け流した。 パク常務は「持ち主のないお金がどんなに多いか、退職後の就職口を探している公務員や税金を納める国民が知らないだけだ」と思った。

 企業にとっては1000億ウォン分の商品を売ったり工事を受注して10億ウォンの利益を残すのも、法人税減免や補助金を受けて10億ウォンを受け取るのも同じことだ。 パク常務は、乾杯しようと言った。 「君もこれまでたくさん奉仕したじゃないか。 今度は金も稼いで見ろよ。」

イ・ワン記者 wani@hani.co.kr

https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/622258.html 韓国語原文入力:2014/02/03 10:09
訳A.K(4736字)

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