「生涯にわたり世語した人物であり友人であったアンドレ・バウマの胸に抱かれ、ンダカシは息を引き取った」
コンゴ民主共和国ビルンガ国立公園は昨年10月、マウンテンゴリラのンダカシが死んだとのニュースをこのように伝えた。ンダカシは2007年、違法に炭を焼くギャング団が公園当局を脅迫するためにゴリラの群れを無慈悲に殺した際に、死んだ母親の体にしがみついていた生後2カ月の唯一の生き残りのゴリラだった。
ンダカシの救助の様子を撮影したゲッティイメージの専門記者、ブレント・スティルトンさんは、長く病魔に苦しみ14歳で息を引き取ったンダカシの最期の姿も写真に収めた。この写真は12日に英国の自然史博物館が発表した「今年の野生動物写真家」フォトジャーナリズム部門の受賞作に選ばれた。
フォトジャーナリストで審査委員を務めるジェン・グイトンさんは「写真の最も重要な機能は感情を伝えることだが、この写真ほど切々と純粋な感情をよく伝えている写真はない」と語った。
ンダカシが死んだ時、バウマさんは「(幼い頃のトラウマを抱えているにもかかわらず)彼女は優しくて知的だった」とし「彼女を通じて人と類人猿の関係を理解することができ、なぜ全力を尽くして彼らを保護しなければならないのかが分かった」と語った。
今回の公募展の大賞は、サボテンに集まるミツバチが繰り広げる交尾の様子を撮影した米国の写真家カリン・アイグナーさんに贈られた。アイグナーさんはテキサスの牧場の熱い砂地に巣を作るこのミツバチの雄が、巣穴から出るやいなや女王バチと交尾しようと一斉に飛びかかる様子を接写レンズで撮影した。女王バチは蜂球の真ん中にいる。
もう一つの大賞である「今年の若い野生動物写真家」に選ばれたタイの16歳の少年、カタニュー・ウティチャイタナコーンさんは、ヒゲクジラが小魚の群れを狩る様子を、精巧で独特な構図で捉えた。
日本の写真家、高砂淳二さんは、アンデス高原にあるボリビアのウユニ塩湖に集うフラミンゴの群れを幻想的に描写し、自然芸術部門の受賞者に選ばれた。
水中撮影部門の受賞者に選ばれた米国の写真家トニー・ウーさんは、SF映画の一場面を思わせるヒトデの繁殖シーンを撮影した。ヒトデが噴出した卵と精液は、潮流の中で受精が起こる。
生息地の中の動物部門の受賞者に選ばれたエクアドルの写真家ダニエル・ミデロスさんは、エクアドルの首都キトの端の高原地帯に住むメガネグマを、かく乱される生息地とともに撮影した。裸の山裾と増えゆく人家を見下ろすクマの姿が生々しい。
海洋部門の受賞者であるニュージーランドの写真家リチャード・ロビンソンさんは、珍しいクジラの交尾シーンを捉えた。撮影されたミナミセミクジラは19世紀を通じて絶滅寸前まで乱獲されたため、新たに生まれる子どもは1頭でも大切だ。