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ロンドンの脱北民ハングル学校で実現した「南北統一」

登録:2022-08-29 10:34 修正:2022-08-29 11:02
ドキュメンタリー映画「ロンドンハンギョレ学校年代記」チャン・ジョンフン監督 
ハングル学校開校から6年の記録 
「南北の教師と子どもたちが交わっている所 
一人でも多くの人が後援会員になってくれたら」
ドキュメンタリー映画「ロンドンハンギョレ学校年代記」のチャン・ジョンフン監督がカメラに収めた学校の子どもたちの様子=チャン・ジョンフン監督提供//ハンギョレ新聞社

 英国のロンドン郊外のニューモルデン地域は「リトルコリア」と呼ばれる。2万人ものコリアンが暮らしているからだ。そのうち北朝鮮を離脱した脱北民が800~1000人ほどになる。2000年代後半、英国が人道的次元で難民と認定し、大勢を受け入れた。最初は韓国に定着し、その後英国に渡った人も多い。

 ロンドンに住むチャン・ジョンフン監督は、この地域の脱北民に注目した。「朝鮮半島を離れて欧州に定着した脱北民集団としては第1世代ではないかと思い、それならば記録する価値があると考えました」。10日、ソウル麻浦区の本社社屋で会ったチャン監督は語った。

 チャン監督は1990年代初めに新聞記者としてしばらく働き、1996年から英国に留学した。映画科で映像ドキュメンタリーを勉強し、修士課程まで終えた。ロンドンで独立プロデューサーとして放送の外注制作の仕事を主にしていた彼は、2015年頃に完全に自分だけの作品を作ることを決心した。脱北民に関心を持っていたところ、子どもたちのためにハングル学校を作るという話を聞いた。「ただの北朝鮮ドキュメンタリーにした場合、憂鬱で腹立たしく過去志向の話になりそうでした。でも学校と子どもたちの話にすれば、明るくて楽しく未来志向になるのではないかと考えました」

 2016年1月23日、「ロンドンハンギョレ(同胞)学校」が開校した。2002年に脱北したチェ・スンチョルさんが設立を主導し、ソウル出身のパク・チョンミンさんが趣旨に共感して設立費用の一部を担い理事長を務めた。場所は近くの教会のスペースを借り、保護者や韓国から来た留学生などがボランティアで教師になった。学費は無料。学校の運営費が足りない時は、保護者らがフリーマーケットで中古の品を売って補填した。

ドキュメンタリー映画「ロンドンハンギョレ学校年代記」を制作したチャン・ジョンフン監督=キム・ジョンヒョ記者//ハンギョレ新聞社

 チャン監督は開校準備の段階から地道に記録した。「脱北民たちは北朝鮮に残してきた家族に万が一にでも不利益が及ぶのではないかと、カメラを避けます。逃げて隠れてきた人たちなので疑い深かったんです。いつもそばにいて一緒にご飯を食べ、お酒を交わしながら信頼を積むしか方法はありませんでした。そんなふうに数年根気強く続けたら、信頼が生まれました」。最初は2年くらいを想定していた撮影期間は、いつしか6年を越えた。「先生と保護者の皆さんが全員変わる間に、私が学校で一番の古参になってしまいました。それくらいになると、私を仲間のように思ってくれるようになったんです」

 チャン監督は、子どもたちが遊ぶ姿から南北関係が見えたと語った。「誰かが叩いたら、子どもたちは一緒に相手に立ち向かって、叩かれた友達を慰めてあげます。南と北はどうしてそのようにできないんでしょうか。水遊びに行った子どもたちのうち一人が、木の棒をついて滑りやすいところをかろうじて登ります。そしてほかの子らが登れるように木の棒を差し出します。それを見て『経済発展を遂げた韓国が北朝鮮に木の棒を差し出してあげられないのだろうか』と思いました」

 脱北民が子どもたちにハングルを教えるのは、アイデンティティを失わないようにとの意味からだ。映画には、チェ・スンチョルさんが英語は上手だが朝鮮語がうまくできない二人の息子を叱る場面が出てくる。英国で二人の息子を育てたチャン監督も強く共感する内容だ。「私の子どもたちも英国で韓国人としてのアイデンティティを持って、韓国語を身につけながら暮らしてほしいと願う気持ちは同じです」

ドキュメンタリー映画「ロンドンハンギョレ学校年代記」のチャン・ジョンフン監督がカメラに収めた学校の子どもたちの様子=チャン・ジョンフン監督提供//ハンギョレ新聞社

 チャン監督は今年初めに学校で、映画『ロンドンハンギョレ学校年代記』の第1回完成版上映会を開いた。保護者たちは「監督はこんな話を伝えようと一生懸命私たちを撮ってたんですね。そうと分かっていたらもっと協力してあげればよかった」と話した。「ぐっときました。やっと私をちゃんと受け入れて、私の気持ちを分かってくれたんだと、やり甲斐も感じました。ドキュメンタリーが世に出ずこれで終わってしまったとしても、この人たちの励ましになり、歴史の記録を残したからそれで十分だ、そう思いました」

 チャン監督は先月初めに、妻と二人の息子とともに韓国にやってきた。子どもたちに韓国を見せてあげたかったからだ。韓国を訪れた機会に映画のコミュニティ上映会も5回開いた。映画を見て、一人でも多くの人が学校の後援会の会員になってくれたらという願いからだ。「せめて英国人たちが集まってハングルを勉強すると言えば、韓国大使館がハングル学校として認めて支援してくれるそうですが、ロンドンハンギョレ学校に対する韓国政府の支援はいまだにありません。それでも、韓国の後援会メンバーの寄付に助けられています」

 チャン監督は16日、英国に戻った。来年中に映画の追加作業を終え、映画祭などを通じてより多くの人々に見せるのが目標だ。「ロンドンハンギョレ学校には今や南北の教師と子どもたちが交わっています。学校では統一が実現しているということです。映画を見て、南北もあのように自然に統一できるのかもしれないという希望を持ってもらえるなら、これ以上望むことはありません」

ソ・ジョンミン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/culture/culture_general/1056547.html韓国語原文入力:2022-08-29 08:21
訳C.M

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