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[寄稿]「脱北者」というアイデンティティが持つ「言葉」の力

登録:2020-05-05 07:24 修正:2020-05-05 08:56

 今回の第21代国会で脱北民2人が当選した。政党は別にして、脱北民が国会議員になったということ自体が、同じ脱北民として感謝することであり、脱北民には大きな力になることは明らかだ。にもかかわらず、2人の当選者には期待と憂慮が半々であることも事実だ。そして任期開始前に期待より憂慮が現実となり、その被害は完全に筆者を始めとする残りの約3万3500人の脱北民に返ってきた。

 本当にうまく務めてくれることを期待した。韓国社会で「脱北民」という「レッテル」を背負って国会議員になるということは、3万3500人の脱北民に代わり、堂々とした大韓民国の国民としてうまくできると認められる「公的な試験台」に上るのと同じだ。

 金正恩(キム・ジョンウン)が20日間現れないのは異例との理由で、あらゆる物語が横行し、テ・ヨンホ(未来統合党)とチ・ソンホ(未来韓国党)の二人の当選者の「確信に満ちた分析」はここで決定的な役割を果たして、韓国社会をさらに混乱させた。単にこれに留まることではない。これらの無責任な発言はそのまま3万3500人の脱北民が韓国社会で熾烈に生きてきて築き上げた信頼を一瞬で崩し、脱北民に対する嫌悪と不信を大きくした。

 「アカ」「スパイ」「極右バカ」「泥棒」「犯罪者」など、このような修飾語はたちまち二人の当選者に向けて降り注ぎ、さらに「やはり脱北民は信じられない」という一部の国民にあった既存の不信を確信させる契機を作り、脱北民に対するイメージを傷つけてしまった。

 韓国社会で脱北民として生きていくということは、果てしない認定闘争と信頼闘争だ。誰より熾烈に生きねばならず、堂々とした大韓民国の国民として認められなければならない。脱北者という理由で、他人よりさらに努力して信頼を得るしかないのも現実だ。

 「脱北者」というアイデンティティが持つ「言葉」の力は非常に強い。特に国会議員という身分であればなおさらだ。 北朝鮮から来たという理由一つだけで、私たちが証言するすべての「個人ストーリー」が北朝鮮全体の姿として過大に代表されてきたことは、昨日今日のことではない。さらに数えきれないほど降り注ぐフェイクニュースやYoutubeは、北朝鮮に対する合理的判断ができる力を失わせる。

 韓国社会で脱北民一人のスピーカーが及ぼす影響は、思ったより大きい。それで脱北民の証言がどれほどの信頼性があるか絶えず指摘されてきており、議論になったことも一度や二度ではない。これについては筆者が2015年に寄稿したこともある。(ユーコリアニュース「脱北者の証言の信頼性問題をどう見るか」)

 メディアの注目を浴びる脱北民であればあるほど、言葉と行動に節制がなければならず、それに責任を負わなければならない。死んだという金正恩があざ笑うかのように堂々と歩いて現れるのを見ながらも、二人の当選者は相変わらず謝罪よりは「速断しないでおこう」などと無責任な姿を示しており、本当に残念だ。その通り、最初に速断すべきではなかった。

 「分析が多少外れた」「まだ速断しないでおこう」という痛々しい言い訳の代わりに、不確実な情報で断言して混乱を起こして申し訳ないと謝罪して越えなければならない。それでこそ少しでも責任を負えるのであり、今後4年の任期の間に信頼を回復する機会を得ることができる。この謝罪は、韓国社会で熾烈かつ真面目に生きている脱北民のためのものでもある。

 それでもテ・ヨンホ当選者が4日に遅れての謝罪の立場を明らかにした。にもかかわらず、信頼の汽車は去ってしまった。謝罪で責任を尽くすのではない。失った信頼を回復するのは完全に二人の当選者の役割として残っている。脱北民のための政治とは何か、今後もどうか深く考えて議員活動を広げてほしい。 「にもかかわらず」力になってほしいと願う脱北民からさえも信頼を失ってはならないからだ。

 同じ脱北民としてこのような批判をするのは、本当に負担に感じることだ。それでも批判する理由は、本当に脱北民のための政治をしてほしいからだ。相当数の脱北民が二人の当選者が今後4年間、このようなことがまたあるかもしれないと憂慮している事実を常に心に留め、どうか脱北民たちにまで信頼を失うことがないよう切に期待する。

//ハンギョレ新聞社

チョ・ギョンイル統一コリア協同組合理事(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/943560.html韓国語原文入力:2020-05-05 02:09
訳M.S

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