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韓国でマッコリは中年男性のお酒?今はMZ世代も楽しむ

登録:2022-03-04 06:29 修正:2022-03-04 10:38
若返ったマッコリ 
マッコリを学ぼうとする20・30代が急増…受講まで1年以上 
ネット販売が可能なうえ、参入費用低く、創業ラッシュ 
SNSで若い醸造者と消費者がコミュニケーション図り、ファン層を形成
最近、様々なプレミアムマッコリが発売され、若者の間で人気を集めている=スタジオ「アダプター」ユン・ドンギル室長//ハンギョレ新聞社

 「今やマッコリの時代」

 マッコリが変化している。かつての中高年男性に好まれるお酒から、今はMZ世代(1980年~1990年代前半生まれのミレニアル世代と、1995年~2000年代初め生まれのZ世代)の間で人気のお酒になった。2000年代半ばから後半にかけて、日本で始まったマッコリブームが韓国にも到来したことがある。一時期話題を集めたが、すぐに人気が下火になった。多様な製品群が開発されず、消費者を誘引する魅力が足りなかったからだ。枯死直前だった地元の酒造場が蘇ったのは嬉しいことだったが、市場で人気のある酒ではなかった。

 しかし、数年前から様相が変わった。マッコリ市場に参入した若い起業家らは、「ソウルマッコリ」に代弁された代わり映えのしないのマッコリから脱し、多彩で高級なマッコリを発売している。「今、最も若いお酒はマッコリ」と言われているほどだ。パッケージも従来のマッコリとは思えない洗練されたデザインだ。マッコリが酒類市場の新しい可能性として浮上した理由は何だろうか。またどんな魅力があるのだろうか。

韓国家醸酒研究所でマッコリを作っている受講生たち=ペク・ムニョン客員記者//ハンギョレ新聞社

マッコリは一つの文化現象

 アパレル会社に勤めるペ・スヒョンさん(29)の最近の趣味は「マッコリ収集」だ。スーパーで買える普通のマッコリではなく、SNSで予約・購入できる「限定版マッコリ」から各種副材料を入れたプレミアムマッコリまで、選りすぐりの物を購入して少しずつ飲むのが最近の楽しみだ。ペさんは「以前は味もあまり変わらず、『おじさんのお酒』というイメージが強かったが、最近はパッケージもきれいなうえ、様々な味があって、選択の幅が広くなった。飲んだ翌日、頭も痛くなく、いい酒だと思う」と語った。

 実際、マッコリは市場で徐々に上昇曲線を描いている。韓国家醸酒研究所によると、2020年のマッコリ生産量は37万9992キロリットル。2011年の45万8198キロリットルをピークに減少傾向にあったが、2019年の消費量37万500キロリットルより9400キロリットル増え、反騰に成功した。爆発的ではないが、流れが変わったことは注目に値する。

 新しいものと体験を追い求める若い世代にとって、マッコリは単なるお酒というより、一つの文化現象となった。「バックスピリット」、「韓国人の酒膳」のような韓国酒を紹介するKコンテンツもこうした現象を後押しした。「マッコリの作り方」や「マッコリの飲み方」「マッコリ比較試飲」などを検索エンジンに入力すると、数万個に及ぶコンテンツが出てくる。「自分が好きな醸造所の製品を購入し、ソーシャルメディアに載せてファンダム(ファン集団)を形成するのが今の世代のマッコリ文化」だと、伝統酒ソムリエのキム・ダスルさんは説明した。マッコリというキーワードを中心に一つの現象が起きているわけだ。

 単にマッコリを購入して飲む消費者から進化した「マッコリオタク」も増えた。伝統酒の専門教育機関である韓国家醸酒研究所の伝統酒授業を受講するためには、1年以上待たなければならないほどだ。現在、予備受講生だけでも300人余りに上る。飲むだけでは足りず、自分で作って飲みたいという欲求が反映されている。受講生の大半は若者だ。韓国家醸酒研究所のリュ・インス所長は「2010年に研究所を創立して以来、今が最も若い教育生が多い」とし、「以前は主に40代以上が教育を受けたが、最近は20~30代が大半を占めている」と話した。情熱的で学究的な20代と30代が流入し、自然にマッコリ業界が若くなっているという。リュ所長は「若返るというのは、これからの基盤を整えるという意味であり、こうした基盤の上でさらに安定的な構造に成長することを期待している」と付け加えた。

ナル生マッコリ=漢江酒造提供//ハンギョレ新聞社

コラボで個性をアピール

 消費者が若返る傾向とあいまって、マッコリを作る醸造所も若くなっている。「ネイバー広告マッコリ」、「ヒップな(流行の先端をいく)マッコリ」で有名な漢江酒造が代表的な例だ。「伝統的なマッコリも十分若くてヒップ」という考えでマッコリ事業に参入したコ・ソンヨン代表は「マッコリ文化を若い世代にしっかりとかっこよく表現することが目標」だと述べた。漢江酒造は、代表製品の「ナル生マッコリ」をはじめ、男性ファッション雑誌「GQ」とコラボした「直休(韓国語でGQと発音が類似)マッコリ」、大韓製粉熊印の小麦粉を使った「ピョムン(韓国語で熊印(コムピョ)を上下逆さにして反転させた文字の発音)マッコリ」などを開発し、様々な方法で若い世代とコミュニケーションを図っている。醸造家7人の平均年齢は30代で、今現代を生きる若者の考え方を理解するのに最適の条件を備えているわけだ。

 漢江酒造の成功を追い風に、若い醸造家が飛び込んだ小規模な醸造所も増えた。特に、ネット販売が可能な伝統酒であることが、若い起業家らを誘引している。リュ・インス所長は「初期に大きな費用がかからず、比較的経済力が弱い若年層の負担が少ないのも一つの理由」と述べた。小規模の酒類製造が可能になり、醸造所創業の進入障壁が低くなったためだ。

ウィンター・ディライト=大東輿酒道提供//ハンギョレ新聞社

 若くなったマッコリらしく、消費も若返った。最大の窓口はソーシャルメディアだ。ソウル麻浦区(マポグ)のクルマ醸造所で昨年9月に初めて販売された「ゆずが」マッコリは、3万ウォン(約2900円)という高い価格にもかかわらず、販売開始と同時に完売となった。200本限定数量、ソーシャルメディアのメッセージでのみ購入できる不便さが、かえって特別なマーケティング戦略となった。昨年、SNSで最も「ホットなマッコリ」に浮上した理由だ。 購買層の大半は20~30代の女性で、リピート率も80%以上だと、醸造家のソ・ジソプ氏は話す。

 ソーシャルメディアは最も重要なコミュニケーションツールであり、事業手段でもある。生産者と消費者が出会う接点でもある。伝統酒メーカー「スラウォン」のカン・ヒョク本部長は「洗練されたインテリアを背景にマッコリの写真を撮り、記念写真を残す若い顧客のフィードバックを見て、マッコリの消費層が広がっていることを感じている」と語った。

 ソムリエのキム・ダスル氏は「MZ世代の特徴の一つがコミュニケーションを好むということだ。最近の若い醸造所はソーシャルメディアを通じたコミュニケーションに非常に慣れている。ソーシャルメディアを積極的に活用し、消費者と直接出会う。現在のマッコリ市場が若くなるのに大きな役割を果たした」と述べた。

スラ・ハンドメイド・マッコリ=スラウォン提供//ハンギョレ新聞社

安いお酒という偏見なし

 マッコリを求める若者にとって、マッコリはもはや安いお酒ではない。「一緒に醸造所」のマッコリ「サマー・ディライト」と「ウィンター・ディライト」は出庫価格が4万5千ウォン(約4300円)、店頭では8万~9万ウォン台(約7600~8600円)という高い価格にもかかわらず、「在庫がなくて売りたくても売れないほど」人気が高い。「ウィンター・ディライトの主な顧客層は30代女性で、『マッコリ界のディオール』というハッシュタグとともにソーシャルメディアで話題になった。20代と30代の消費者はむしろ(好きなものに)お金を惜しまない。マッコリ1本で2万ウォン(約1900円)以上を支払うことに拒否感がない。マッコリは安価なお酒という偏見がないからだ」。大東輿酒道のイ・ジミン代表の分析だ。

 様々な種類のマッコリを販売する伝統居酒屋が続々と増えたのも、マッコリの人気に一役買っている。数年前から、若者層をターゲットにした洗練された伝統居酒屋が急増し、これにあわせ、プレミアムマッコリへの関心も高まっている。しばらく姿を消していた伝統居酒屋が、ソウル江南(カンナム)や麻浦(マポ)、聖水(ソンス)、新村(シンチョン)などの繁華街に続々とオープンする理由でもある。20~30種類以上のマッコリを販売する専門的な「マッコリバー」も登場した。お店の立場では一般的な焼酎やビールよりマージンが大きい魅力もある。カン・ヒョク本部長は「プレミアムマッコリの『スラ・ハンドメイド・マッコリ』の主な納品先は、いわゆるソウルのホットプレイスにある居酒屋」だと述べた。

ペク・ムニョン客員記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/specialsection/esc_section/1033309.html韓国語原文入力:2022-03-03 10:13
訳H.J

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