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世界中の聴覚障害者を感動させたBTSの「手話ダンス」が生まれた背景は

登録:2021-07-15 11:16 修正:2021-07-15 12:50
BTSの新曲「パーミッション・トゥ・ダンス」 
マスク時代、口の形が読めず困難な聴覚障害者に 
「手話ダンス」で話しかけながら 「BTSと踊ろう」 
 
希望のメッセージを伝える特別な振り付けに苦心 
コロナの終息を知らせるコンセプト 
「手話ダンス」に出会い 意味が倍に 
 
歪曲されないよう正確な表現に努力 
専門家と何度も議論を重ねて確認 
「一番大事な表情をよく生かした」と評価 
ファンら、タイトル・小物に様々な意味づけも
BTSが「楽しい」を意味する国際手話をダンスで表現している=ミュージックビデオよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社
「楽しい」を表現するシュガとジョングク=ミュージックビデオよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 「希望のメッセージを伝えられる特別なパフォーマンスはないだろうか」。最近ソーシャルメディアを熱く盛り上げている話題の「あの振り付け」は、こんな悩みから生まれた。1年以上続くパンデミック時代に、「みんな、頑張ろう」という歌詞のメッセージは「あの振り付け」に出会って意味が倍増した。BTS(防弾少年団)が今月9日に発表した新曲「パーミッション・トゥ・ダンス」(Permission to Dance)に登場する「手話ダンス」だ。

 BTSは歌の後半、全員で「ナナナナ~」と歌う部分で「楽しい」「踊る」「平和」を意味する手話の動作を取り入れたダンスを披露する。親指を伸ばし残りの指を半分曲げて、体の前で上下に揺らす動作は「楽しい」、左手の手のひらをステージに見立て右手の2本の指を左右に動かす動作は「踊る」、両手でVを掲げる動作は「平和」という意味が込められている。この曲は、未来のBTSが2021年現在を生きる人々に向けて紫色の風船を飛ばし、新型コロナの終息を知らせるというコンセプトだ。体を揺らして踊りながら動作をしなければならなかったため、意味がきちんと伝わるだろうかという心配もあったが、希望のメッセージを丁寧にうまく表現したかったという。

BTSが「踊る」を意味する国際手話をダンスで表現している=ミュージックビデオよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 良い意味で取り入れた振り付けが歪曲されないよう、BTSのメンバーと振り付けチームは、手話の動作の正確な表現に特に気を使った。ビックヒットミュージックは「代表的な言葉や象徴的な動作を決めた後、振り付けで表現し、(聴覚障害者や手話通訳士のような)専門家たちと数回にわたり話し合い、メッセージがきちんと伝わるかを確認するプロセスを経た」と語った。振り付けを一緒に作ってきたということだ。正確な動作と共にメンバーが一番気を使ったのは表情だ。専門家は、特に表情が大事だという話を強調したという。例えば「楽しい」を意味する手話の動作には「嬉しい」という意味もある。メンバーが聴覚障害者に「楽しい」という歌詞を理解してもらうためには、とても楽しそうな表情を見せなければならない。聴覚障害者のユーチューバー・ハゲウォルさんは自身の個人チャンネルで「手話は表情を見せることが最も大事。BTSは明るい雰囲気と楽しい表情を実によく表現した」と述べた。

BTSと出演者たちが一緒に「平和」を意味する国際手話をダンスで表現している=ミュージックビデオよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社
RMとVが「平和」を意味する国際手話をダンスで表現している=ミュージックビデオよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 このような努力に、全世界の多くの人々が感動している。ソーシャルメディアには特に聴覚障害者が「手話ダンス」を一緒に踊る映像が多く上がっている。最近ソーシャルメディアには「いとこがミュージックビデオを見て『ああ、私に踊ろうって言ってる』と嬉しそうにしていた。それを聞いて泣いている」という感動的なエピソードが載り、話題を集めた。国内の聴覚障害者の間でも話題だ。コロナに関する政府ブリーフィングを通訳する手話通訳士のキム・ドンホさんは「聴覚障害者の方々が先に見つけて映像をシェアしてくれた」と話した。

 単に手話を振り付けに活用して「私たちは一つ」というメッセージを伝えたから特別ということではない。キム・ドンホさんは「聴覚障害者にとって音楽は文化の中でも最も遠いジャンル。歌詞を理解して一緒に踊るには、さらに段階を踏まなければならないという文化的な距離がある。音楽を聴くことのできる聴力を持っている方も、音楽の音は『ブウン』と振動しているように感じられる。だが、歌詞に合った振り付けを手話で表現してくれたことで聴覚障害者もその意味にすぐ気付き、一緒に楽しめるという点で、今回BTSがその距離を縮めてくれた」と話した。パンデミック時代、マスクをつけることで、相手の言葉を口の動きで読む聴覚障害者が特にコミュニケーションが難しくなっている中、BTSの試みはまた格別だ。

 BTSの影響力が大きいという点で、彼らは「セレブ」の役割を充分に果たしている。時代劇『ミスター・サンシャイン』が10代の若者たちに「義兵」について学ぶきっかけを与えたように、「パーミッション・トゥ・ダンス」の手話ダンスは、ARMY(BTSのファンクラブ名)たちに手話に関心を持ってもらう効果を生んでいる。ARMYたちは個人ブログなどに手話の意味を伝え、国立国語院の手話辞典を共有したりもする。韓国は2016年に法が改正され、「手話」が一つの「言語」として認められて韓国では「手語」と表現することに変わったことも明らかにしている。「パーミッション・トゥ・ダンス」で活用した手話の動作は、英語のように国際的に通用する「国際手話」だ。ARMYたちは「踊る」「平和」の場合、韓国語の表現が異なるという情報も一緒に伝えている。キム・ドンホさんは「セレブの行動一つ一つが与える効果はとても大きい。国際的な手話を使って全世界の聴覚障害者のために音楽を共有したという点で、本気が感じられる。社会的弱者や、あまり関心を持たれない人々に配慮してくれたことに感謝する」と述べた。世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長もソーシャルメディアで「聴覚障害で音楽を楽しむのが困難な全世界の15億人に大きく役立つだろう」と感謝の意を表した。

ファンは新曲「パーミッション・トゥ・ダンス」の文字を組み替えると「ストーリー・オン・パンデミック」になるという解釈も示した//ハンギョレ新聞社

 これに先立ちBTSは今年5月、米国のトーク番組「ザ・レイト・ショー・ウィズ・スティーヴン・コルベア」(CBS)に出演し、「バター」を手話で表現した。メンバーのVは、パンデミック時代に卒業する生徒たちにメッセージを伝えながら「おめでとう」という手話の動作もしてみせた。普段からのこのような行動の影響だろうか。ARMYたちは「パーミッション・トゥ・ダンス」のミュージックビデオに特別な意味づけをする。ミュージックビデオの中の背景の一つである「コインランドリー」と、BTSが希望を歌うもう一つの曲「スプリング・デイ」の中のコインランドリーを結び付けたり、タイトルをアナグラム(単語の文字を並べ替えて意味を持つ別の単語に変える一種の言葉遊び)で組み替え「ストーリー・オン・パンデミック」にしたりするというもの。ファンのこうした解釈に対し、ビックヒット側は「ミュージックビデオのシナリオに合う小道具と場所を決めた」とし、コメントを控えた。「パーミッション・トゥ・ダンス」は、ファンクラブ名が「ARMY」に決まった「ARMYの誕生日」(8周年)に合わせ、9日に発売された。

コロナの終息を知らせる雑誌を見ている姿が「パーミッション・トゥ・ダンス」のティザー映像に登場した=映像よりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 「パーミッション・トゥ・ダンス」のミュージックビデオに登場する人物は全員マスクをしている。最後に老若男女みんながマスクを脱ぎ捨てるところで泣きそうになったという反応が多い。ミュージックビデオの中の「みんな」のようにマスクを外せる日が来るだろうか?BTSが「パーミッション・トゥ・ダンス」で答えている。「踊るのに許可なんて要らない」と。そのような日が来ると。ティザー映像には、2022年にパンデミックが終息しBTSのコンサートを知らせるという場面が出てくる。リーダーのRMは14日(韓国時間)、米国のトークショー「ザ・トゥナイト・ショー・スターリング・ジミー・ファロン」に出演し、司会者のジミー・ファロンとの映像インタビューで「(ライブ会場で)『声あげろ!』ともう一度叫びたい」と言い、マスクを外した世界でツアーをしたいという思いを伝えた。

ナム・ジウン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/culture_general/1003593.html韓国語原文入力:2021-07-1507:15
訳C.M

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