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[BTS深掘り2]大衆的ポップスか、個性あふれる歌か…BTSのジレンマとは

登録:2021-06-12 07:59 修正:2021-06-15 14:57
イ・ジェイクのBTS深掘り(2)

[夏を迎え、ラジオプロデューサーのイ・ジェイクさんが4週連続4部作でBTS特集を送ります。音楽を基盤に、ジョングクの「手の甲キス」からVのヘアスタイルまで、BTSの様々な話を繰り出します。「オヤジARMY」イ・ジェイクさんが薦めるBTSの魅力あふれる映像もお見逃しなく!]

韓国語の歌詞でビルボードホット100チャート1位を占めた歌「Life Goes On」のミュージックビデオよりキャプチャー=ビッグヒットミュージック提供//ハンギョレ新聞社

 防弾少年団(BTS)のジレンマとは?

 夏の特集で先週から「BTS深堀り」シリーズを連載し始め、第1話で新曲「Butter」を分析し、最後はこのように締めくくった。「『Dynamite』と『Butter』をつなぐのはマイケル・ジャクソンだけだ。質感が違うのに、なぜかなりの人がこの二つの曲が似ていると感じるのだろうか。この点にBTSのジレンマがある」と。それでは、BTSのジレンマとは何だろうか。

 彼らは韓国よりも海外で多くのファンを持ち、莫大な売り上げを上げるワールドスターだ。ミュージックビデオには世界各国の言語で数百万件のコメント(再生数ではなく)が書き込まれ、その中からハングル(韓国語の文字)を探すのも一苦労だ。国籍だけでなく老若男女を問わずファン層が広がっているのが「ARMY」(BTSファンクラブ)の特徴だ。これほど人種や性別、年齢を超えて人気を博した歌手がいるだろうか。しかし、これは長所であると同時に過酷な課題となっている。多様な趣向を満足させなければならないからだ。四角でありながら三角であり、また丸い形を描かなければならないのだから、これは至難の業だ。

 この悩みは大方「Boy With Luv/小さなものたちのための詩」を発表した頃から始まったと思う。同曲を発表するまで、BTSは自分たちが目指す音楽を作ることができた。初期から積み上げてきた特有の個性も貫かれていた。しかし、米国のポップ市場が活動の中心になってからは、変わらなければならなかった。主流を意識しながらも、様々なファンをできるだけ満足させる、いわゆる“ユニバーサル”な歌が求められていた。だからこそ、角の立たない、ただ愛らしい曲が必要だったのだ。このような脈絡で「Boy With Luv」が登場し、その延長線上に「Dynamite」と「Butter」がある。

 作曲の側面から見てみよう。初期からBTSの歌はビッグヒットのプロデューサー、ピドックを中心にメンバーたちが積極的に参加する方式で作られた。外国の作曲家が参加する場合もあったが、1、2人程度だった。ところが「Boy With Luv」からは海外プロデュースチームが前面に出てきて、ついにBTSの初ビルボードホット100第1位曲「Dynamite」ではビッグヒットのプロデューサーとメンバーの名前が見当たらなくなった。「Dynamite」の作曲家、デビッド・スチュワートによると、英単語の中でも世界的に広く通用する易しい単語だけを選んだという。英国だけで通じる表現や米国の特定世代だけが良く使う単語は徹底的に排除したのだ。前述した“ユニバーサル”とはまさにこのような意味だ。

 新曲「Butter」も同じだ。リーダーのRMを除けば、これまでのBTSの曲作りには見られなかった海外の作曲家たちが歌を作った。今回も国籍や世代を問わず、簡単に受け入れられる単語や表現で歌詞を書き、ポップ音楽ファンらが慣れ親しんだリズムやメロディーを載せた。その代わり、ラップは最小限にとどめた。「Boy With Luv」まではラップ担当のメンバー(RM、SUGA、J-HOPE)に割り当てられた8小節が「Dynamite」と「Butter」では4小節に減った。難しいことで有名だった振り付けもかなり簡単になった。「Boy With Luv」のキックや「Dynamite」のディスコに続き、新曲「Butter」の手の甲キスが代表的な事例だ。これなら、私にもできるかもという気がする。そのためか、ユーチューブにはBTSのダンスをカバーした動画が爆発的に増えた。これらの共通点から、まったく違う曲であるにもかかわらず、「Butter」と「Dynamite」が類似したものとして見られているのだ。ところが、なぜ手の甲にキスをするのだろうか。キスは唇が触れる身体部位によって意味が変わるが、手の甲へのキスはあなたを尊重するという意味だという。ならば、失敗した振り付けと言わざるを得ない。こんなにセクシーな尊重なんて、反則じゃないか。

「Butter」ミュージックビデオに登場する手の甲へのキスシーン=ミュージックビデオよりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 最近になって、甘いポップでビルボードチャートを席巻しているが、BTSはこのような大衆的成功だけに満足するグループではない。世の中のあらゆる料理に精通したシェフが、売れ筋のメニュー一つだけを作り続けろと言われて、果たして満足できるだろうか。熱烈なファン達も彼らだけの個性あふれる曲を待ち望んでいる。ここにBTSのジレンマがある。悩んだ末、彼らが選んだ戦略は、メインストリームとこれまでのファンを共に満足させる、二兎を同時に追うミッション・インポッシブル作戦!アルバムを発表する際、タイトル曲は徹底的に大衆的な曲で、残りはBTSの個性を思う存分発揮できる曲で埋め尽くす。メンバーたちのソロ曲は言うまでもなく。BTSの昔の姿を懐かしむARMYたちの不安を払しょくし、満足させる。

 さらに韓国語で歌った歌をタイトル曲として推すこともある。歌とラップ、振り付けともに極限のレベルを誇る「ON」や、正反対に穏やかなバラードの「Life Goes On」も、爽やかなポップナンバー「Dynamite」と「Butter」の前に堂々と構えている。ポップミュージックのトップで、このような大胆な選択ができるなんて、鳥肌が立つほどの自信だ。「Butter」がビルボードチャートで1位になったこともすごいが、歌謡風の曲に韓国語の歌詞を載せて歌った「Life Goes On」がトップを飾った方がもっと驚くべきかもしれない。

 最近BTSは、米国のポップ市場を狙った英語歌詞の歌と、彼らの個性あふれる韓国語の歌を交互に発表している。今回「Butter」が前者だったから、次に発表する歌は後者なのかな?筆者は韓国語が適切に混ざったヒップホップのジャンルを予想している。予想なのか、単なる期待に終わるのかは、今年の夏、なめらかなバターを思う存分味わってから判明するだろう。次のコラムでは各メンバーの変遷史を取り上げる。

イ・ジェイク|SBSプロデューサー「時事特攻隊」司会者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/culture/culture_general/999046.html韓国語原文入力:2021-06-12 02:32
訳H.J

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