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韓日関係に地殻変動が起きている

登録:2021-01-16 02:03 修正:2021-01-16 09:24
誇大妄想の日本を暴き出し、韓国の被害妄想を克服する鋭い分析 
日本の知性の証言をまとめて韓日関係の未来と過去の克服の端緒を提示 
 
『日本人が証言する韓日逆転』 
イ・ミョンチャン著
日本の安倍晋三前首相がいわゆる「アベノマスク」をしている。コロナパンデミックへの対応の遅れの中で始まった「アベノマスク」政策は、国民の嘲笑と非難を受けた/UPI・聯合ニュース

 「近くて遠い国」。日本を指すこの常套的表現が、これほどまでにあてはまった時期があったろうか。ここ数年、両国の間で起こっていることを考えるとそう思わざるを得ない。朴槿恵(パク・クネ)政権で突如実現した韓日の日本軍「慰安婦」合意と軍事情報包括保護協定(GSOMIA)締結、大統領弾劾と文在寅(ムン・ジェイン)政権成立後の強制徴用をめぐる対立、日本による貿易報復、韓国のGSOMIA終了宣言と保留決定、コロナパンデミックの中での韓日両国政府の異なる対応…。

イ・ミョンチャン著『日本人が証言する韓日逆転』//ハンギョレ新聞社

 日本が韓国を眺める視線はよく「嫌韓」が突出し、これに対抗する韓国の日本に対する感情は「反日」だ。歴史的被害者の加害者に対する「反日」は納得できる一面があるものの、加害者が被害者に対する「嫌韓」の視線を止めないことは不思議でならない。その妙に歪んだ感情の淵源は『日本人が証言する韓日逆転』で確認できるが、これは優越意識の別名としてよく指摘される劣等感の発露だ。本書によると、敗戦を終戦と認識する日本の主流の「精神的勝利」は今後さらに膨らんでいく公算が大きい。かといって、韓国人がまったく同じになる必要はない。そのためにも、本書を埋め尽くす客観的根拠はもとより、中心的な論拠を成す日本の知識人の自省的証言は大きな意味を持つだけでなく、韓国人にとって重要な指針とならなければならない。

 本書はタイトルが語るように、韓国と日本の力の逆転の過程に注目する。新型コロナウイルス感染症の防疫において、日本と比較せずとも韓国が成功していることは、特に語る必要もない。経済面での韓日関係の変化は、改めて新鮮に提示される。何よりも根源は政治だ。韓国と日本の民主主義の格差は、両国がなぜ力の逆転状況に至ったのかを如実に示している。敗戦を克服できず過去にとらわれて停滞している日本と、植民地と開発独裁を乗り越えて産業化と民主化に邁進し、成果を収めてきた韓国の違いが両国のはっきりと異なる今日を作った。

 日本の政治的後退は、コロナへの対応の失敗で退陣した安倍晋三前首相で頂点に達した。実に7年8カ月も続いた安倍政権は、日本の歴史上最大の汚点として残ったというのが本書の指摘だ。コロナ拡散の初期、日本ではPCR検査がまともに行われず、防疫行政が事実上崩壊した。安倍首相が首相として主催した「桜を見る会」の招待者名簿は廃棄され、私立学校法人特恵疑惑が相次ぎ、巨大広告企業「電通」と政権の癒着構造もあらわになった。日本国民は、法に基づく支配を破壊した政権であるにもかかわらず支持をやめなかった。このような政権と国民そのものが、日本が敗戦状況にとどまっていることを示している。このため著者は、日本の気鋭の若手学者である白井聡京都精華大学教授の『永続敗戦論』を紹介する。戦争で負けたのではなく、戦争が終わっただけなのだという日本軍国主義者のごまかしを日本人が受け入れてきたこと、こうした「涙ぐましい努力」が安倍政権を経てコロナ禍で如実に崩れ落ちたことを、この書は緻密にあらわにする。

 日本政府のコロナ対応は、日本の行政システムの非効率さを浮き彫りにした。前近代的な官僚システムが維持してきた縦割りの組織文化や上司に従順な気質などで、このシステムは説明される。PCR検査をあれほど安倍政権が拒んできたのは、何よりも政治的理由のためだったことはすでに知られている。中国の習近平国家主席の訪日と東京五輪開催という当面の目標のため、コロナを軽く考えた結果だったのだ。しかし、本書で確認される驚くべきことの一つは、このようなあきれた所業が可能だった背景だ。著者は、日本の軍国主義時代に人体実験に明け暮れた「731部隊」に根源を見出す。日本でコロナ禍の初期にコロナ対応のための専門家組織として設置されたいわゆる「専門家会議」が、まさに731部隊のDNAを受け継いでいることを指摘する。日本人ジャーナリストの小池新氏は昨年4月、『文春オンライン』に発表した文章で、戦後にも幅広く形成された「元731部隊員」のネットワークが専門家会議を構成する感染医学関連の主要研究所へとつながり、コロナ対応における「影の要素」として作用したという衝撃的な主張を行った。コロナ対応で日本政府が示した情報隠蔽と官僚主義は、帝国軍隊の特性そのものだったのだ。

 今日の日本経済は「失われた30年」を経験した結果だということが提起される。戦後、米国に依存して爆発的な経済成長を成し遂げた日本が、1989~2019年の「平成」期には落ち込み続けたことを、主要大企業の企業価値と国内総生産(GDP)、国家債務比率、為替レートなどを挙げて説明する。日本の国際的な地位の変化は、もはや日本が先進国ではないことを示しているという主張だ。こうした状況において、安倍政権が1965年体制を維持するために敢行した「対韓国輸出規制」は、事実上のオウンゴールとならざるを得なかった。韓国が日本から輸入してきた素材・部品・装備の国産化と輸入多角化のきっかけとなっただけでなく、反日感情を刺激して、かえって日本経済が打撃を受けることになったのだ。このような中でコロナにまで襲われ、世界産業のデジタル転換には拍車がかかったが、デジタル化においては韓国が断然リードしている。韓日の逆転状況は今後さらに加速することが示される。2017年には購買力平価(PPP)ベースの1人当たり国内総生産(GDP)で、韓国は日本を初めて上回っている。

 韓日逆転の時代を迎える韓国人の姿勢はどうあるべきか。東北アジア歴史財団で研究活動に邁進し、昨年退職した著者は、これを通じて韓日の歴史問題を究極的に解決しなければならないと強調する。そのためには「多くの韓国人と日本の『極右民族主義者と歴史修正主義者たち』が金科玉条のごとく考える『日本は常に正しく優越しているという思い込み』を壊すこと」が重要だ。

キム・ジンチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/978894.html韓国語原文入力:2021-01-15 04:59
訳D.K

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