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「慰安婦は高収益」…『反日種族主義』著者ら、再び「歴史挑発」

登録:2020-05-13 02:32 修正:2020-05-22 06:57
『反日種族主義との闘争』発刊、内容を見ると 
 
「慰安婦は高収益…徴用判決の原告らは嘘」 
「高収益慰安婦」の事例としたムン・オクジュさんの事例は「後退」 
歴史学界「日本軍『慰安婦』被害者に二次・三次加害」
『反日種族主義との闘争』代表著者のイ・ヨンフン元ソウル大学教授(李承晩学堂校長・右から2人目)が11日午前、ソウル中区のあるレストランで開かれた著書出版記者会見で発言している=イ・ジョングン記者//ハンギョレ新聞社

 昨年、ひとしきり“歴史歪曲”騒動を起こした『反日種族主義』の著者らが、再び“歴史挑発”を敢行した。イ・ヨンフン元ソウル大学教授と落星垈経済研究所のイ・ウヨン研究委員らは最近、『反日種族主義との闘争』(発行日5月16日)を発刊し、11日にソウル中区のあるレストランで記者懇談会を開き、「強制徴用はなかった」「慰安婦は高収益」などの既存の主張を改めて繰り返した。

 今回の本は、2019年7月に『反日種族主義』が出版された後、歴史学者らがシンポジウムや単行本、 ハンギョレなどの紙面を通じて提出した反論に対する再反論を集めたもので、 『反日種族主義』の主要著者であるイ・ヨンフン元教授、イ・ウヨン落星垈経済研究所研究委員など既存の6人の著者に加えて、チャ・ミョンス嶺南大学教授とパク・サンフ元文化放送北京特派員(現、月刊朝鮮・ペンアンドマイク客員コラムニスト)まで加勢した。

 執筆者数は増えたが、内容は『反日種族主義』の主張を繰り返している。「反日種族主義」はイ元教授などの著者が「日本を敵と見てあらゆる嘘を作り出して広める韓国人の集団心性」を示す新たに作った言葉だ。『反日種族主義との闘争』で著者らは「左派勢力が見せた反応は、この国が種族主義社会だという我々の仮説を証明する水準」であり「歴史学界の主流もやはり沈黙した」としながらも、カン・ソンヒョン、ユン・ミョンスク、チョン・ヘギョンなどの進歩派史学界の批判を紹介して反論する形式で内容を再構成した。進歩派史学界ですでに反論した内容を再び強調したわけだ。

日本軍「慰安婦」が高収益?

 日本軍慰安婦▽戦時動員▽独島▽土地・林野調査▽植民地近代化などをキーワードにした今回の本は、特に日本軍「慰安婦」と「戦時動員」の問題に重点を置いた。日本軍「慰安婦」の部分を書いたイ元教授は「日本軍慰安所は、後方の公娼制に比べて高労働、高収益、ハイリスクの市場」だったとして「慰安所と慰安婦の営業が高収益だったことは否定し難い」と書いた。日本軍「慰安婦」は、民間の「公娼制」が単に歴史的家父長制の延長線上で日本の戦時軍事的に動員されたものでしかなかったと解説したのだ。

 これに対してカン・ソンヒョン聖公会大学教授は、「全体的に見て、彼らの主張の真偽の有無も問題だが、日本軍『慰安婦』被害者に対する二次・三次加害が繰り返されることが、より大きな問題だ」とし、「MeTooの流れで彼らの主張を見ると、明白なヘイト発話」だと批判した。「ただし、前作では慰安婦が金を多く稼いだと主張したが、今回の本では『慰安婦営業が高収益だったことを否定するのは困難だ』という水準に一歩後退した」と述べた。また「1944年以後、日本が送出金を難しくしたため、慰安婦が多額の金を稼いだという主張自体が話にならない」とも付け加えた。この問題について11日の記者懇談会でイ元教授は、今まで慰安婦として高収益を得た代表的な人物と主張してきたムン・オクジュさんについて「猶予措置がいつ解除されたのかわからないが、ムン・オクジュさんはそれを探さなかった」と認めた。

『反日種族主義との闘争』//ハンギョレ新聞社

強制徴用被害者が嘘?

 「強制徴用・強制動員」問題に関して執筆者は従来の主張から退かなかった。イ・ウヨン研究委員は本で「徴用は明白な強制だった」と認めながらも、「強制徴用」という表現が事実を歪曲する虚構的概念だと主張した。「奴隷狩り」のイメージを上塗りするために「徴用はその自体で強制なのに、敢えて“強制”という言葉を付け加えている」とのことだ。しかしイ委員は、2015年に日本の佐藤地ユネスコ大使が「1940年代に一部施設で数多くの韓国人とその他の国民が本人の意思に反して動員され、苛酷な条件下で強制的に労役した」と事実を認めた部分は全く言及しなかった。またイ委員は「その時代の大きな流れは“ロマン”と言っても遜色のない、新文明と高賃金の機会を探して日本に押し寄せる朝鮮人の巨大な波だった」と『反日種族主義』での主張を繰り返した。

 さらにイ元教授は、韓国最高裁が2018年10月30日に新日鉄住金に対して韓国の強制徴用被害者に損害賠償を支払うよう命じた判決について、韓国人の原告が嘘をついているとまで主張した。原告が「『月給をまともに受け取ったことはない』『会社に騙された』『虐待を受けた』などの虚偽の記憶を新たに創り出し」、家族、国家、国際社会を欺いて「嘘の行進」を繰り広げているとのことだ。彼らは11日の記者懇談会でも「著者たちが政府と国民に伝える苦言」という文書をメディアに配布し、「2018年10月30日付の最高裁判決は、基本的な事実はもちろん、法理にも合わない不十分な判決」として「政府が問題解決案を出すことを求める」と明らかにした。

全体主義を批判して李承晩と朴正煕を持ち上げ?

 イ元教授は、歴史学は政治と距離を置かなければならないと言いながらも、プロローグとエピローグで、「公は尊くて私は卑しい」として個人の自由を抑圧し崩壊した朝鮮王朝の否定的な精神遺産が、文在寅(ムン・ジェイン)政権にも続いていると主張した。「個人より社会を前面に出す全体主義」が現政権の姿と違わないという批判だ。しかし、今回の本の発行日は5月16日で、朴正煕(パク・チョンヒ)の軍部がクーデターを起こした日付と同じであるという事実、今回の本の付録に李承晩(イ・スンマン)の業績をたたえる小冊子を製作して配布するなどは、国民の自由と権利を抑圧した李承晩・朴正煕政権の統治を肯定しようとする強い政治的意図も含まれていると見られ、今後の議論が予想される。

コ・ミョンソプ先任記者、チェ・ユナ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/944544.html韓国語原文入力:2020-05-12 08:48
訳M.S

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