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「テキサス・チェーンソーでトロフィーを5等分したい…」マナーもユーモアも最高峰

登録:2020-02-11 08:12 修正:2020-02-20 17:24

[時宜にかなった感想] 
達弁で有名なポン・ジュノ監督 
「韓国初のオスカー賞」「朝まで飲み明かすつもりだ」 
意義とウィットに富む発言に映画人らが拍手喝采 
監督賞受賞の際は他の監督上候補に敬意を表する 
 
[『無計画が計画?』事前予想覆すた大どんでん返し] 
韓国映画史の頂点を極めた作品賞 
受賞が発表された際は客席ざわめく 
アカデミー賞、最大のどんでん返しで 
世界の辺境から中心へと躍り出る

2月9日(現地時間)、米ロサンゼルス・ドルビー・シアターで開かれた第92回アカデミー賞授賞式で、『パラサイト 半地下の家族』で監督賞を受賞したポン・ジュノ監督が米国での封切り以来、通訳を担当してきた通訳士、シャロン・チェさんにトロフィーを渡しながら笑っている=ロサンゼルス/AFP・聯合ニュース

 「すべての芸術家に賛辞を送る。今夜は朝まで飲み明かすつもりだ」

 アカデミー作品賞や監督賞、脚本賞、国際映画賞など4部門のトロフィーを獲得し、韓国映画の座標を世界の辺境から中心へと移したポン・ジュノ監督。“達弁”で有名な彼の受賞スピーチでアカデミー授賞式はもう1本のドラマチックな映画と化した。トロフィー4本を手にする度、彼が送ったウィットに富みながらも真剣なメッセージに、ドルビー・シアターに集まった出席者たちは拍手喝采を送った。

 同日、アジア系としては初めて脚本賞を受賞したポン・ジュノ監督は舞台に上がり、「シナリオを書くというのは、実は孤独な作業だ。国を代表して書くわけではないが、この賞は韓国が受賞した最初のオスカー賞だ」という韓国語のスピーチで拍手を受けた。韓国映画101年の歴史を塗り替えた当事者らしい感想だった。さらに、オスカートロフィーを持ち上げたポン監督は、家族と俳優たちに栄光をささげた。

 さらに、国際映画賞受賞のためポン監督が再び舞台に上がると、客席からスタンディングオベーションが送られた。ポン監督は、この賞の意味をアカデミー賞の変化に結びつけ、感動を誘った。「この部門の名前が今年から変わった。外国語映画賞から国際映画賞に名前が変わって最初の賞を受賞することになり、さらに意味深い」としたうえで、「その名前が象徴するものがあるが、オスカーの志に支持と拍手を送る」と述べた。さらに、国際映画賞が今回のアカデミー賞でもらう最後のトロフィーであると思ったからか、ホン・ギョンピョ撮影監督やイ・ハジュン美術監督、ヤン・ジンモ編集監督などのスタッフはもちろん「愛するソン・ガンホ俳優」をはじめ出演陣全員の名前を一人ひとり紹介した。ポン監督の呼びかけに合わせ、客席に座っていた俳優たちが全員立ち上がってあいさつする珍しい風景が演出された。韓国語の感想を述べ続けてきたポン監督は最後に、「今夜は朝まで飲み明かすつもりだ」という気の利いた英語の感想で、歓呼と拍手を浴びた。

 『パラサイト 半地下の家族』(以下『パラサイト』)の受賞レースがここで止まるだろうという予想は見事に外れた。ゴールドダービーなどで『1917』のサム・メンデス監督を早くから最も強力な監督賞候補に推したため、ポン監督は「受賞の感想すら用意しなかった」と述べるほど、監督賞受賞の確率がそれほど高くないと見られていた。しかし、表彰台に立ったスパイク・リー監督が監督賞の受賞者として「ポン・ジュノ」という名前を呼ぶと、ドルビー・シアターは興奮と歓声に包まれた。

 ポン監督は予想外の指名に「先ほど国際映画賞をもらって今日の仕事はもう終わったと思っていたのに…」と驚きを隠せない場面もあった。彼は共に候補に上がった巨匠に対する礼儀も忘れなかった。ポン監督は「本当に感謝している。若かりし頃、いつも胸に刻んでいた言葉がある。映画の勉強をする時に『最も個人的なことが最も創意的である』というフレーズを本で読んだことがある。それは偉大なマーティン・スコセッシの言葉だった」と感想を述べた。カメラが監督賞候補に上がったマーティン・スコセッシ監督を映すと、客席からは「ブラボー」という歓声と共にスタンディングオベーションが起きた。ポン監督はまた、「私の映画を米国の観客があまり知らない時、いつも私の映画を自分のリストに載せ、好きな映画に挙げてくれた『クエンティン兄貴』(クエンティン・タランティーノ)にもとても感謝している。クエンティン、アイ・ラブ・ユー」と述べ、客席の爆笑を誘った。さらに「達弁家ポン・ジュノ」の真価を発揮する感想が続いた。「共に候補に挙がったトッド・フィリップス(『ジョーカー』)やサム・メンデス(『1917』)も私が尊敬し、愛する監督たちだ。オスカーが許してくれるなら、このトロフィーを『テキサス・チェーンソー』(1974年のアメリカ映画、日本では『悪魔のいけにえ』として公開された。2003年にリメイク)で5つに切って分けたいくらいだ」

 『パラサイト』の受賞行進の頂点でありこの日のハイライトは、最後に発表された作品賞だった。受賞が有力視されていた作品を抜いて『パラサイト』が呼ばれると、客席はしばらくざわめき立っていた。それだけ『パラサイト』の作品賞受賞は“大どんでん返し”だった。俳優やスタッフとともに舞台に立った制作者クァク・シンエ・バルンソンE&A代表は「言葉が見つからない。想像だにしなかったことが起きて、とても嬉しい。今この瞬間、非常に意味深く、象徴的な、時宜にかなった新たな歴史が始まっているような気がする。アカデミー会員の方々の決定に敬意と感謝の意を表する」と感想を述べた。

 アカデミーの歴史はもちろん、全世界映画史を塗り替えた第92回アカデミー授賞式は、大どんでん返しで終わる映画のように、驚きと興奮の余韻と共に幕を閉じた。

ユ・ソンヒ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/culture/movie/927712.html韓国語原文入力:2020-02-11 02:30
訳H.J

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