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[書評]安倍首相の「戦争できる国作り」を正面から批判

登録:2016-07-15 00:17 修正:2016-07-15 06:49
平和憲法守ろうとする日本の行動派知識人たち 
安倍政権の思想的背景と支持勢力を分析 
「改憲は朝鮮半島に日本軍が来るということ」
『戦争国家の復活-安部狙撃手5人の記録』小林陽一ほか4人著、キム・ギョンウォン訳//ハンギョレ新聞社

『戦争国家の復活-安部狙撃手5人の記録』(原著『軍事立国への野望-安倍政権の思想的系譜と支持母体の思惑』) 
小林陽一ほか4人共著、キム・ギョンウォン訳/チェッダム・1万6000ウォン

 東アジア情勢が日を追うことに悪化している。

 朴槿恵(パククネ)政権がいきなり高高度防衛ミサイル(THAAD<サード>)配備を決定したのに続き、国際仲裁裁判所は南シナ海の領有権をめぐるフィリピンの主張を認めたことで、中国を刺激した。中国と米国の軍事的覇権競争が本格化しているが、日本の状況もまた心配だ。今月10日に行われた参議院選挙で、自民党や公明党など改憲勢力が圧勝し、3分の2以上の議席を占めた。日本が「戦争できる国」となって東アジアを舞台に再び登場するかもしれない。

 「戦争国家の復活」は、昨年8月、日本で「軍事入国への野望」という題名で出版されたもので、安倍政権が何に取り組んできたのかを多角的に分析している。出版当時、安倍政府は、集団的自衛権の行使を可能にする「安保法案」(新法1本、既存法の改正10本)の議決を推進していた。 これに反対する「平和憲法の守護」運動が全国的に繰り広げられたが、今年3月末に安保法案が発効され、「2015安保闘争」は失敗に終わった。同書の著者たちはこの闘争の先頭に立っていた「行動する知識人」(主に大学教授)として、安倍政権の真の姿を広く知らせるのに努めてきた。(彼らの活動は)2015年の安保闘争の成敗とは別に、私たち(韓国社会)にも示唆するところが多い。

 同書は大きく分けて5つの部分で構成されている。「『軍事立国』をめざす安倍改憲の戦略」(第1章)は、日本の右翼がどのように平和憲法の無力化を追求してきたのかを、歴史的な流れに従ってまとめている。1954年に創設された自衛隊の海外派遣形態の変化を辿って行くのが中心内容となっている。これは日米軍事同盟体制のもと、平和憲法条項を蝕んでいく過程でもある。

 日本の右翼勢力と財界の動きをまとめた部分(第3、4章)は、安倍政権の右傾化を構造的に理解できる糸口になりそうだ。たとえば、様々な右翼団体が集まって1997年に結成した「日本会議」は、憲法を改正して天皇中心の国を作ることを目指しているが、同年の衆参両院の議員が集まり「日本会議国会議員懇談会」を結成した。右翼団体と右翼議員の会が連帯し、憲法改正と歴史教科書の攻撃に乗り出したのだ。第3次安倍内閣の閣僚19人のうち15人がこの会の所属だ。

 日本の軍事大国化の流れを主導しているのは「時代遅れの」右派政治家たちだけではない。日本財界を代表する日本経済団体連合会(日本経団連)も、改憲に積極的に賛成している。総会を通じて特別に設けられた委員会が2005年に作成した、「わが国の基本問題を考える」などがこれを明確に示している。日本経団連はこれらの文書で、憲法の平和条項(第9条2項)を改正し、集団的自衛権を行使できるようにすることで、米国に対する支援活動の強化を求めた。また、日本経団連の有力委員会の一つである防衛生産委員会は、資本の論理に基づいて、軍事産業の発展を政府に求めている。

 「敗戦処理とアジア―政府が語る反省の意味」(第5章)は、過去の歴史問題に対する日本政府の対応が一時しのぎのものにとどまったことで、現在までもアジアの人々が苦しんでいる状況を客観的に描いた。アジア太平洋戦争当時、フィリピンとインドネシアの民衆は、日本軍の占領により大きな苦痛を強いられたが、これらの被害に対してきちんと賠償してもらえなかった。中国と韓国の場合、植民地支配に対して国家レベルの賠償を放棄したこととは別に、個人の請求権は認めることを求める著者たちの指摘は歓迎すべきものだ。この章の内容は韓国の慰安婦問題をアジア的な視点から捉えることを可能にする。

 キム・ドンチュン教授(聖公会大学社会科学部)は、推薦文で「日本の改憲は戦争ができる体制を完成させるだろう」としたうえで、「日本の戦争は米国が参戦した際、日本軍が動員される形で起こる可能性が最も高い。結局、日本の改憲は、朝鮮半島で戦争が起きれば、また日本が朝鮮半島に入ることができるということだ」と指摘した。

 著者たちは日本の右傾化を歴史的、構造的に分析しながら、草の根の運動だけがこれを防げると日本の読者たちに訴えている。韓国の読者にとっては、日本の右傾化の真骨頂を垣間見る機会だが、具体的過ぎる部分は少し退屈に感じられるかもしれない。

アン・チャンヒョン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-07-14 20:19

https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/752419.html 訳H.J

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