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李世ドル九段がアルファ碁に初勝利 人間対象のソフトウェア実験に批判も

登録:2016-03-13 23:03 修正:2016-03-14 08:19
79手で勝率70%、87手で勝率急落
アルファ碁を開発した、グーグル・ディープマインド共同創業者のムスタファ・スレイマン氏が9日(韓国時間)、ツイッターに投稿したアルファ碁のプログラム操縦室の全景=ツイッタ―画面キャプチャー//ハンギョレ新聞社

李九段、樊麾2段との対局以外資料なく 
2時間考える時間もコンピューターに有利 
アルファ碁の実験対象となったような状況で 
孤軍奮闘している姿にファン感動

 「本当に大変だった。それでも素晴らしい」

 李世ドル(<イセドル>ドルは石の下に乙)九段のアルファ碁との第1〜4局を見守ったプロの碁士は、李九段の反撃を歓迎した。キム・マンス八段は「5カ月前に行われた樊麾2段との対決棋譜だけでアルファ碁を判断し、第1〜3局で不覚を取った。しかし、李九段は不屈の意志で勝利を収めた。それだけでも素晴らしい」と評価した。

 実際、アルファ碁と李世ドル九段との対局は、李九段にとって有利ではなかった。ソフトウェア政策研究所のチュ・ヒョンソク上席研究員は、「1月にネイチャー誌に掲載された説明では、通常のコンピュータ囲碁プログラムのように1〜2秒間隔で打つ場合、ニ〜五段に相応するとされていた。考える時間が2時間に増えたとしても、これほど強力とは思わなかった」と話した。衝撃的な3連敗で最も打撃を受けたのは、李九段だ。世界最強と呼ばれる李九段は、アルファ碁に勝ちたい一心で、第3局からプロの棋士にはあまり見られない危険極まりない手を連発した。第4局では、アルファ碁が膨大な損害もたらす駄目詰まりを3回以上打ったからこそ、勝機を掴むことができた。未知の相手に向かって、実験対象となったような彼が孤軍奮闘している姿は、ファンには痛ましく思えるほどだった。

アルファ碁と李世ドル九段との第4局の棋譜。黒 アルファ碁 白 イ・セドル九段//ハンギョレ新聞社

 機械と人間の対局という全く新しい対局方式は、人間には決して有利ではなかった。アルファ碁の代わりに、碁盤の前に座った人は、グーグル・ディープマインドのスタッフであるアザ・ファン博士だ。アマ六段の実力の持ち主とはいえ、彼が見つめるのは李九段ではなく、左側のコンピューターのモニタだ。碁石を打つ際も、高段者というよりは初心者のような手つきだ。このような雰囲気も李九段にとっては非常に奇妙なものだ。5時間もの間、一度もトイレに行かないため、平均2回は席を立つ李九段は、ほぼ5〜6分の時間を失うことになる。

 考える時間を2時間与えたのも、人間よりもコンピューターに有利だった。40台のコンピューターに1200以上の中央演算処理装置と200以上のグラフィックスカードを装着したアルファ碁の人工神経ネットワークは、毎秒数万の確率を計算するが、勝てる手を見つけるまで、平均1分程度はかかる。チュ・ヒョンソク上席研究員は、「30秒以内に必ず打たなければならない樊麾ニ段との非公式の速棋対決では、アルファ碁が3勝2敗で2回負けた。李世ドル9段との対局で考える時間を増やしたのも、そのためだろう」と話した。

 プロの碁士たちは、対局の前の相手の棋譜を研究する。しかし、アルファ碁の棋譜は、樊麾ニ段との対局しか参考にできる資料がなかった。チョ・ヒェヨン九段は「相手を知らないまま、対局することに他ならない。ベールに隠された相手に会ったようなものだ」とした。グーグルの対局提案を軽く受け入れたのが他ならぬ李九段だから、誰のせいにもできないかもれない。しかし、韓国碁院がもっと慎重に検討すべきだったという点も、問題として指摘されている。

 グーグルの行動に対する批判も出ている。英国のニューキャッスル大学でコンピュータサイエンスの講義を行っている、カイスト経営大学院のムン・ソンチョン教授は、「ITの世界では、ソフトウェアの『性能』を評価する過程を伴うのが一般的だ。しかし、人間を対象に、イベントのようにソフトウェアを実験することは、科学哲学の観点から批判を受け兼ねない」と指摘した。

 機械と人間の対決は否定的な面だけではない。キム・マンス八段は「これまで効率的だと思っていた定石や手順に対する固定観念が破られた。囲碁の新たな発展のための新しい刺激になるだろう」と話した。グーグル・ディープマインドの最高経営責任者(CEO)デミス・ハサビス氏も「アルファ碁の勝利は囲碁に限られるものではなく、今後、病気の予防などの健康管理や気候変動の研究に活用できるだろう」と述べた。

 李九段は、今回の対局で自分の碁風を捨て、アルファ碁の弱点を把握するために、荒々しい手もいとわなかった。しかし、確率的に勝てる手を使うアルファ碁を制圧する方法は、特になかった。キム・マンス八段は「伝統的な意味で囲碁の美しさはない。人間と人間の戦いには、価値観の対決が可能だが、コンピューターはひたすら勝利に向かって打つだけだからだ。そのコンピューターを相手に李世ドル九段が直感と感覚で活路を見出した」と高く評価した。

 アルファ碁の上席開発者のデビット・シルバー氏は、「アルファ碁が繰り返し蓄積した知識には抜け穴がある。今日中央レベルからすると、李世ドル九段がアルファ碁の限界を試した。システムの発展に役立つだろう」と語った。既に1勝3敗で勝敗は決まっているが、李九段の第5局にファンの注目が集まっている。

キム・チャングム記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-03-13 19:49

https://www.hani.co.kr/arti/sports/baduk/734744.html 訳H.J

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