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[インタビュー]佐喜眞美術館館長「歴史の記憶を共有できる芸術の力を信じます」

登録:2015-02-05 23:26 修正:2015-02-06 07:40
ソウルで「コルヴィッツ版画」回顧展を開く佐喜眞道夫氏
ケーテ・コルヴィッツが1922〜23年制作した「戦争」連作版画の一部である「母たち」。戦争の砲火に怯え、子供たちを両手で抱きしめる母親と子供の絶望した表情と姿を刻んみ込んだ名作である。ノ・ヒョンソク記者 //ハンギョレ新聞社

 「絵には記憶を引き出す力があります。私は自分が立っている地の歴史を記憶するために美術館を運営してきました」

 日本の平和美術の本山とされる沖縄佐喜眞美術館の佐喜眞道夫館長(69)は、大きな目を輝かせて「芸術と記憶」について熱弁した。平和博物館の建設推進委員会(常任理事ハン・ホング)の要請で20年間収集したドイツ民衆美術の巨匠ケーテ・コルヴィッツ(1870〜1938)の版画コレクションでソウル市立北ソウル美術館で大規模な回顧展を開いたのも、歴史の記憶を皆が共有できるようにする芸術の力への信念があったからだと話した。展示では、19世紀末から20世紀の第1・2次世界大戦の時期までコルヴィッツが作った民衆版画50点余りとともに傑作彫刻像「ピエタ」などを見ることができる。

今回単独展示されるコルヴィッツの彫刻「ピエタ」像。ドイツベルリンのノイエバッハ(平和記念館)」に展示されている「ピエタ」大作が有名である。 ノ・ヒョンソク記者 //ハンギョレ新聞社

 4日の展示企画に参加した在日同胞の学者徐勝氏(ソ・スン)のソウル楽園(ナグォン)洞事務所で彼に会った。大学時代からコルヴィッツ版画に心酔したという彼は、黒と白の木版画プリントを見せながら、情熱的な口調で説明した。コルヴィッツが1922〜23年に制作した「戦争」連作のうち「母たち」という作品だった。 「黒い画面の中で力を振り絞って子供を抱き締めうとする母親がいます。抱きしめられた子供たちはぼんやりとどこかを見ているだけで、母親の表情は果たして子供を守れるのかという心配でいっぱいです。戦争の残酷な記憶を民衆の表情を通じて生き生きと蘇らせたのです」。

 戦争による苦しみに悩まされている家族の群像はこの展示の核心作品だ。 1、2階で1914年1次世界大戦以前と以降に分けて版画を披露しているが、1階で後期である第1次大戦から第2次大戦時期の作品を先に展示している。東プロイセンの裕福な家の出身だったが、民衆医療に献身した夫の影響で貧困、労働者、農民の虐げられた生活を題材にするようになったコルビヴィッツは、息子と孫が相次いで戦死した第1次大戦と第2次大戦期、戦争に苦しむ女性と子供、家族の群像を主に描いた。

ドイツ民衆美術の巨匠ケーテ・コルヴィッツ
戦争に苦しむ家族群像を描いた
版画50点余り、ピエタ像など幅広く展示
昨年光州ビエンナーレの「ホン・ソンダム事態」で
抗議声明・撤退しようとしたが、一部展示も
「やっと完全に作品の意味を生かせて嬉しい」

 「コルヴィッツは戦場の悲惨さをそのまま描写しません。子を失った母の悲しみ、家族の恐怖を描きながら、戦争を本質的に批判します。平和博物館は愛情を持って作品の配置などで配慮してくれました。小さなピエタ像を1階の独立空間に置いたのも良かったです。実は昨年広州展示ではとても衝撃が大きくて...」

 彼の言葉通り、今回の展示作品は昨年光州ビエンナーレ20周年特別展「甘い露」でも披露されたことがある。しかし、一緒に出品しようとしていたホン・ソンダム作家の大統領風刺作品展示を光州市が拒否したことで起きた事態は、佐喜眞館長に傷と侮蔑感を与えた。「2000年光州ビエンナーレ時、5・18の痛みを形象化した作品を見て大いに感動しました。だから特別展に出品要請に応じたのですが、ホン作家の作品が展示できなくなり、沖縄と光州の民衆芸術でつなぐきっかけになるという期待も敗れました。抗議声明を出し、撤退しようとしました。しかし、コルヴィッツがナチスの弾圧を受けていた時期も『芸術家として手を差し伸べ続ける』と心に決めたことを思い出して、展示は継続することにしました。ソウルだけでもコルヴィッツ作品の意味と価値を生かすことができて嬉しいです」。

 80年代末から収集した彼のコルヴィッツコレクションは、「大学の時、中国の文豪魯迅を尊敬して20〜30年代の魯迅が出した雑誌を読み漁っていたのがきっかけとなった」という。 「30年代の『北斗』という雑誌にコルヴィッツュ彫刻『犠牲』が掲載されたのを見ましたが、魯迅の説明文を読んで、作家についてを知りたくなりまして、収集を始めました」。

版画「母たち」の前で作品を説明する佐喜眞道夫館長。ノ・ヒョンソク記者 //ハンギョレ新聞社

 佐喜眞美術館は沖縄普天間米軍基地の目の前に位置しており、現地での反戦平和美術のメッカとして知られている。 「(広島)原爆の図」で有名な丸木夫妻の大作「沖縄戦の図」を筆頭に、地域の疎外された生活や歴史などを扱った作品が展示されており、ホン・ソンダム、チョン・ジュハ氏など韓国の作家たちとの交流展も地道に行ってきた。 「韓国、中国、台湾芸術家と連携してグローバル化に対抗するネットワークを作るのが願い」という彼は「今回の展示が小さいな足がかりになるだろう」と話した。 「反戦を超えて新たな人間関係を作っていくのが真の平和運動です。展示を通じて、人間の痛みを共有し、平和のための世界を作ろうというコルヴィッツのメッセージを一緒に考えていただきたいと思います」。4月19日まで。 (02)735-5811〜2。

ノ・ヒョンソク記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015.02.05 19:09

https://www.hani.co.kr/arti/culture/music/677054.html  訳H.J

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