本文に移動
全体  > 文化

韓国政府の「優秀文学図書」選定基準に出版界が思想統制と反発

登録:2015-01-27 00:35 修正:2015-01-27 08:29
「理念に偏らない純文学」の規定
作家会議・出版人会議共同声明
「時代錯誤な運営方針の撤回」を要求
シン・ウンミ氏の著書をめぐる騒動との関連が疑われる
文体部「現在修正の可能性はない」
優れた文学図書に選ばれましたが取り消された『在米同胞おばさん、北朝鮮に行く』の著者シン・ウンミ氏が10日、法務部の強制退去命令により出国する前に仁川国際空港から知人たちとの別れをの挨拶を交わしている。文化体育観光部の優秀図書選定基準について反発が沸き起こっている。//ハンギョレ新聞社

 文化体育観光部が主管する優秀図書(世宗図書)文学分野の審査基準に「特定の理念に偏らない、純粋な文学作品」という規定が含まれていることに対する文学・出版界の反発が本格化している。

 韓国作家会議の(理事長イ・シヨン)と韓国出版人会議(会長ユン・チョルホ)は26日に共同声明を出し、「文化体育観光部の優秀文学図書定規の中には、国家機関の思想統制と検閲という旧時代の発想がそのまま溶け込んでいる」とし、「時代錯誤な運営方針と発想の撤回を強く求める」と訴えた。

 両団体は「思想と表現の自由を抑圧し、出版検閲を画策する世宗図書の運営方針を直ちに撤回せよ」と題した声明の中で「文化部の運営方針は民主主義国家の基本権である『思想・表現の自由』を侵害しており、さらに、作家の想像力をあらかじめ制限することで韓国文学の底辺を萎縮させる深刻な結果を招くだろう」と主張した。韓国の代表的作家団体である韓国作家会議と、代表的な単行本出版社の集まりである韓国出版人会議が特定の事案について共同声明を発表したのは今回が初めてだ。

 韓国の作家会議はト・ジョンファン議員室と世宗図書運営方針に対する国会討論会を開くことにした。チョン・ウヨン韓国作家会議事務総長は、「世宗図書文学分野の選定基準の問題点を議論するシンポジウムを開くことで合意し、日程と形式などの詳細を議論中」だと明らかにした。

 文壇と出版界では、この他にも元老作家の記者会見、主要な文学出版社による優秀図書申請の拒否、優秀図書選定の申請と審査における文人たちの参加拒否を議論するなど、世宗書図書の審査規定に対する反発が大きくなっている。

 文化体育観光部は、先週、問題の規定が含まれている「2015年度優秀図書(世宗図書)選定事業の推進方向」を発表した。これによると、文学の分野図書選定基準は、「特定の理念に偏らない、純粋な文学作品」「芸術性と需要者の視点を総合的に考慮して、優れた文学の底辺拡大に寄与する作品」「人文学などの知識情報化時代に対応し、国家競争力強化に貢献する本」となっている。 世宗図書と呼ばれる優秀図書は、文学の分野とともに学術分野と教養分野など三部門で構成されているが、「特定の理念に偏らない」という審査基準を設けたのは文学の分野だけだ。

在米同胞作家シン・ウンミ氏の著書『在米同胞おばさん、北朝鮮に行く』は最近従北論争に巻き込まれて優秀文学図書選定が取り消された。//ハンギョレ新聞社

 世宗図書の文学分野における審査基準に「特定の理念に偏らない」という表現が入ったのは、2013年優秀文学図書に選ばれたが、いわゆる「従北論争」に巻き込まれて先日選定が取り消された、在米同胞作家シン・ウンミ氏の著書『在米同胞おばさん、北朝鮮に行く』をめぐる事態と無関係ではないと思われる。昨年末シン氏のブックトークを「従北コンサート」と決めつけ魔女狩りのような世論づくりをした保守メディアが、左派による文学・·芸術分野の蚕食を誇張して対策を促したことによるという分析も出ている。

 これと関連し元老文学評論家ヨム・ムウン嶺南大学名誉教授は、「韓国文壇で純粋・参加論争が最も激しかったのが1960年代だったが、半世紀もの間眠っていた亡霊が蘇り世界を混乱に陥れているようだ」としながら「いわゆる“純文学”を主張した人々が概して腐敗した権力に媚びた御用文人であるという事実を想起する必要がある」と述べた。

 文学・出版界の反発と論争についてキム・イルファン文体部出版印刷産業課長は「この規定は、進歩や保守とは関係なく、歴史を歪曲したり社会葛藤を助長することにより、国民の税金で運営されている事業の趣旨と合わない作品を除外するのためのもの」だとし、「世宗図書文学分野の選定事業が下半期からの施行を予定しているので、これから議論して検討する時間はあるが、現在としては特に規定を変更する可能性はない」と明らかにした。

チェ・ジェボン先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015.01.26 18:56

https://www.hani.co.kr/arti/culture/book/675296.html  訳H.J

関連記事