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TV朝鮮が昨年11月21日にニュース番組「ニュース9」でシン・ウンミ氏のブックコンサートに関し「北朝鮮は地上の楽園と称賛し続けた」と報じている。『メディア今日』キャプチャー //ハンギョレ新聞社

　米国籍の在米同胞シン・ウンミ氏が10日、強制出国させられた。朝鮮日報がシン氏に初めて“従北”のレッテルを貼ってから51日後だ。従北魔女狩りの結果とする批判が起きている。

　朝鮮日報は昨年11月21日付1、14面で「ソウルのど真中で従北トークショー」と題した記事で、シン氏とファン・ソン元民主労働党副報道担当者が北朝鮮訪問の経験を紹介するトークコンサートで北朝鮮称賛を繰り返したと二人を「従北人物」と規定した。翌日(22日）付の社説では、二人が「北朝鮮体制を称賛」したと書いた。朝鮮日報はこの日からシン氏が強制出国されるまでの44日間(日曜は休刊)のうち20日分の紙面を割いて集中的に報道した。二日に一回のの割合だ。

　朝鮮日報の“物量攻勢”は同紙系の総合編成チャンネル(TV朝鮮)でも目立った。朝鮮日報の初報からシン氏が強制出国されるまでの52日間、地上波と総合編成チャンネルの看板ニュース番組を比較してみると、TV朝鮮は関連報道を36日間に91件放送し最も多かった。次いでチャンネルA（東亜日報系の総合編成チャンネル）が34日間で61件報道した。JTBC（中央日報系総合編成チャンネル）は短信1件を含め5件報道し、TV朝鮮の報道量の18分の1だった。

TV朝鮮の時事番組「黄金パンチ」もシン氏のブックコンサートを従北コンサートと決めつけ集中的に紹介した。しかし警察はシン氏たちを調査した末、シン氏は「地上の楽園」という発言をしていないと明らかにした。これらの放送は現在インターネットから削除され見ることができない。『メディア今日』よりキャプチャー //ハンギョレ新聞社

　朝鮮日報と一部の総合編成チャンネルは、シン氏が2年前に出版した北朝鮮訪問記『在米同胞おばさん、北朝鮮に行く』について、北朝鮮首脳部に対する批判がほとんど含まれていないという理由で「従北図書」の烙印を捺そうとした。シン氏の家族や米国での生活など私生活も暴いた。またTV朝鮮は「二人の女性が(トークショーで)描写した北朝鮮は、それこそ地上の楽園」とし、二人が北朝鮮を地上の楽園だと称賛したかのように報道したが、二人はそういう話はしていなかったことが警察の調査で確認された。これについてTV朝鮮のイ・ジンドン社会部長は『メディア今日』との通話で「彼女たちが北朝鮮をあたかも楽園であるかのように描写したという趣旨で報道した」と話した。 裁判所は昨年マスコミが「従北」という言葉を使う際には根拠を明確にしなければならないといとする判決を相次いで下したことがある。

　東亜日報は朝鮮日報や自社系列の総合編成チャンネルのチャンネルAとは異なり、推測性の報道を自制するなど相対的に慎重な態度を見せた。北朝鮮脱出者出身の東亜日報チュ・ソンハ記者は個人のブログで朝鮮日報の報道について「現代版魔女狩り」と正面から批判する文を載せている。

　朝鮮日報とTV朝鮮は昨年12月10日、全羅北道益山（イクサン）市で起きた高校生の引火物投擲事件を伝えるニュース報道でも、他のメディアとは異なり「テロ」という表現を使わなかった。逆にこの高校生に対する捜査に批判的態度を取った。当時チャンネルAでさえ「多くの生命を奪いかねないテロ行動に対する批判がない」と高校生のための寄付募金行為に憂慮を示した。

　朝鮮日報などの報道についてチョン・キュチャン韓国芸術総合学校教授(言論改革市民連帯代表)は「従北追い込み報道は、事実に忠実でなければならないというジャーナリズムの基本に反する」とし、「理念で人に烙印を捺し罪悪視するという暴力に対して寛大なマスコミ報道は、民主主義の秩序に害を及ぼす恐れがある」と話した。キム・ソジュン聖公会大学教授(新聞放送学)は「シン・ウンミ氏らの北朝鮮訪問、著書、トークショーなどが他の社会懸案に比べどれほどのニュースバリューがあるのか疑問」とし、「シン氏の強制出国に関しても韓国社会の表現の自由の萎縮や人権侵害などと関連した論議が起こるはずなのに、マスコミの報道のせいで議論の幅が狭まった」と話した。TV朝鮮側の反論を聞くために何度も接触を試みたが連絡がつかなかった。