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[世相を読む] 自殺誘発社会/金東椿(キム・ドンチュン)

登録:2013-04-29 20:49 修正:2013-04-30 06:51
キム・ドンチュン聖公会(ソンゴンフェ)大社会科学部教授

 今春は天気がとりわけ気まぐれだったためか、レンギョウ、木蓮、チンダルレ(ツツジ)、桜 など若干の時差を置いて咲いた花がほとんど同時に山野を覆っている。 その上。今まさに芽生えたばかりの薄緑色の新緑まで加えると本当に自然があたえる新しい生命の饗宴に興趣が自然に沸いて、感きわまる思いだ。 しかし、この生命の祭典の裏には死の影がちらついている。 この祭りに招待されるどころか、自ら人生を放棄する人が一日平均43人にもなるという。 残された家族の悲痛な心を考えれば、同じ地に住みながら春を楽しむことすら申し訳ない。 神から授かった大切な生命を人為的に断ってはならず、もし何らかの見えない力がそのようにするならば それこそ最大の犯罪に相違ない。

 我が国が去る8年間連続で経済協力開発機構(OECD)国家中自殺率1位を記録していて、OECD平均の2倍という圧倒的数値を記録していることを考えれば、「私たちは文明に向かって走り続けたが、到着して見るとそこは野蛮だった」という句が度々思い出される。 すなわち韓国は経済成長と近代化に成功した国だと自慢するが、事実は重い病気に罹っていて、今や成長と競争という偶像に捕われて、なぜ私たちがその道を進もうとしたのかという質問さえ投じることまであきらめて、結果的に治癒の道まで失った国になった。 国民の幸福指数が世界150ヶ国中56位に留まり、生命の躍動を思う存分自慢しなければならない青少年の2人に1人が自殺を考える国を、どうして発展した国、文明国家と呼ぶことができようか? 私たちは自殺誘発後進国に暮らしている。

 ところで毎年増加するばかりの自殺者よりさらに深刻なのは、その自殺を単に個人的問題として片付け統計が示す真実を無視している政界と社会の態度だ。 青少年、壮年、老人層、それぞれの自殺理由や背景ももちろん相異なる。 しかし特定集団や階層の自殺頻度や様相に意味ある特徴が現れてもなお、ずっと個人の選択だと言い張れるだろうか?

 外国の研究でも労働者と軍人の自殺リスクが高いという調査があり、韓国でもすでに済州(チェジュ)大医大チーム、最近では保健社会研究院の調査で最下位階層が最も自殺危険度が高いという調査結果が出てきた。 ソウル市の‘自殺高危険地域’は概して多世帯住宅密集地域、永久賃貸アパート、簡易宿などの貧民住居地域だという調査結果もある。 双龍(サンヨン)車労働者や非正規職労働者、社会福祉士の高い自殺頻度もやはり生活苦、実績競争ストレス、希望喪失などが原因という点が確認された。 わが国社会の自殺は個人的選択ではなく、社会的関連性が非常に高く、したがって多くの場合に社会的他殺の性格が強い。 ソウル蘆原区(ノウォング)で自殺危険集団を選定し、集中的に管理した結果、自殺率が低下したという事実は、逆に言えば韓国の自殺が主に社会が誘発していることを立証する。

 原因は多様だが、自殺は社会の道徳的崩壊を雄弁に語る現象だ。 人間が人間として優遇されるよりは、生存の戦場に出て行った戦士のように道具化される時、その戦場で卑屈になっても生き残りを強要し、隊列から脱落した人の手を誰も握らない時、人々は希望の紐を放してしまいがちだ。 弱い生命体である人間に、少しでも暖かい春の日差しのような社会の配慮と関心が与えられないならば、高貴な生命は今春の咲いて散った花のように消えていくだろう。 各種予防措置も重要だが、この残酷な競争のムチを果敢にしまわなければならない。 国家や社会の基本目標と方向を変えない限り、私たちはこの死の行進を止めることができないだろう。

生きていることに感謝しよう。 しかし死者の無言の叫びを聞こう。

キム・ドンチュン聖公会(ソンゴンフェ)大社会科学部教授

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/585063.html 韓国語原文入力:2013/04/29 19:21
訳J.S(1705字)

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