会社側が労組を相手に起こした158億ウォンの損害賠償請求訴訟に対して、去る12月21日韓進重工業労組会議室でチェ・ガンソ氏が「生まれて聞いたことも見たこともない金158億ウォンを撤回せよ」という遺書を残して35年の短い命を終えた。 この金は年1億ウォンに過ぎない韓進重工業労働組合の組合費を158年間集めなければならない金額だという。 2003年斗山(トゥサン)重工業のペ・ダルホ、韓進重工業のキム・ジュイクなど多くの労働者がまさにこの損害賠償訴訟の圧力に勝てずに自殺した。 会社側は労組のストライキで莫大な損害をこうむったので、この方法で賠償を受けざるを得ないと抗弁する。 しかし労組側弁護人は会社が果たしてこの程度の損害をこうむったかどうかも分からず、たとえ被ったと言えどもそれが労組のせいかどうかは立証できないと反論している。
現在<文化放送>(MBC)は昨年の労組ストライキで損害をこうむったとして324億ウォンを労組に請求している状態で、双龍(サンヨン)自動車も労組に232億ウォンを請求した。 会社側が労組幹部に請求した金額は彼らの月給を30年以上全て持って注いでも全額返すことはできない天文学的な金額だ。 韓進重使用側は「法的判断に任せよう」とし、労働者市民1万7000人は「‘法的判断’を正しく下してください」と裁判所に嘆願書を提出した。 ところで、これは果たして裁判所の善処に訴える問題であろうか?
1870年代英国で刑法により労組活動を統制するのが難しくなるや、使用者は‘損害を負わせるための共謀’罪で労組員を告訴し、ついに組合員が自分の家を売る事態まで生じた。 1900年Taff Vale鉄道会社のストライキに対して英国最高法院は労組がたとえ法人ではなくとも不法ストライキに対する損害賠償の責任があるという決定を下し、このような民事上の損害賠償請求が労組を無力化させるという事実を自覚した労働者100万人が労働党に加入した。 以後、議会は1906年に使用者の不法行為訴訟を阻む法を通過させ、現在は労組の民事上責任は認めるが責任上限額を制限しているという。 一方1920年代後半に私有財産制を批判しても治安維持法を適用した天皇制の日本でも、良心的内務官僚は使用者の損害賠償訴訟を認めれば労組の存在が否定されるという理由で使用者側の損害賠償訴訟条項の挿入要求を拒否したことがあった。
労働者にとっての1億ウォンは、法人や使用者の立場にとっては100億ウォン以上の重みがある。 ところで韓国の裁判所は不当行為をした使用者には彼らの一晩の酒代にもならない100万ウォンの罰金を賦課しておきながら、不法ストライキをしたという理由で労組には100億ウォンの損害賠償命令判決を下す。 これは労働者に死ねと言うことにほかならず、労組の争議権を事実上否認することだ。 その上、実際に韓国の労組が合法ストライキをすることは一本のロープの上を落ちずに歩いていくことよりも難しい。 韓国の労働組合法は損害賠償請求を制限している。 それでも整理解雇・構造調整などを巡るストライキは不法であるため損害賠償を請求することができると解釈されている。
私は月給が数百万ウォンにもならない労働者に数百億ウォンの損害賠償訴訟をする使用側の態度も問題だと見るが、その途方もない罰金を労働者にそのまま賦課する韓国の裁判官の精神構造を疑う。 韓国労働部はすでに1990年から労組の争議に対して民事訴訟の方法で統制しろと薦め始めたが、今日韓国の労働官僚や判事たちは1900年代英国、1920年代日本の官僚や判事よりさらに保守的で親資本的だ。 私は彼らに、韓国は労働3権が保障された国だと考えるのかを尋ねたい。
キム・ドンチュン聖公会大社会科学部教授