ワシントンを訪問したイ・ドフン朝鮮半島平和交渉本部長は8日(現地時間)、米国のスティーブン・ビーガン北朝鮮政策特別代表と会談し、「ストックホルム朝米実務協議」後の対応方針について話し合った。イ本部長は「どうすれば朝米対話の方向性を生かしていけるかについて話し合った」としたが、具体的な内容には口を閉ざした。機密保持のためかも知れないが、明確な代案を見出せなかったためという可能性もある。これは朝米協議の早期再開を楽観することはできないという傍証ともなる。
ただ、北朝鮮を刺激しないようにという態度が米国側に明確に表われていたことは注目に値する。韓米協議後、米国務省が発表した説明資料を見ると、これまで北朝鮮の非核化について使ってきた「最終的かつ完全に検証された非核化(FFVD)」という表現の代わりに、「完全な非核化」という多少やわらかい包括的表現を使っていることが目を引く。北朝鮮が拒否感を感じる表現を控えている様子だ。米国は国連安全保障理事会6カ国が採択した「北朝鮮潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)発射糾弾声明」にも名前を連ねていない。北朝鮮を圧迫せず、何とか協議の場に呼び戻したいという本音が読み取れる。
米国はストックホルム協議で「創造的なアイデア」を出したと述べたが、北朝鮮は米国の提案を「まず核放棄、次に補償」の変種に過ぎないと評した。核や大陸間弾道ミサイル(ICBM)実験の中止など先制的措置に対する米国の相応措置がなければ協議を続けることはできないという立場も崩していない。北朝鮮は特に、ドナルド・トランプ大統領が昨年のシンガポール朝米首脳会談で約束した韓米合同軍事演習の中止を履行するよう迫っている。米国はストックホルム協議決裂直後、北朝鮮に「2週間以内」にまた会おうと提案した。しかし、北朝鮮が協議の前提条件として掲げた「安全権保障」問題が解決しなければ、協議再開は容易ではないかもしれない。
金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が年末とした交渉期限が過ぎれば、北朝鮮は中断していた核実験や大陸間弾道ミサイルの発射を敢行する可能性が高い。そうなれば朝米協議は破局に直面するしかない。このような状況は、トランプ大統領にとっても金正恩委員長にとっても災いとなるだけだ。最悪の状況を防ぎたければ、両国いずれも「ストックホルム決裂」を拭い去り、できるだけ早期に再びテーブルに着くべきだ。相手の譲歩をめぐって綱引きばかりしている時間はない。