サムスンがヘッジファンドのエリオット・マネジメントの反対を押し切って、サムスン物産株主総会で第一毛織との合併案を僅差で可決させられた決定的な理由は、「愛国心マーケティング」にあったと証券アナリストたちは指摘する。
サムスンは合併反対を主張したエリオット・マネジメントを「渡り鳥資本」と攻撃した。サムスン物産合併案を推進している公式ホームページでは、エリオットがワシの姿をした金目当ての邪悪な外国資本として描かれていた。個人投資家に合併賛成を説得する際にも、エリオットが「渡り鳥」となるように手を貸してならないというのが論拠だった。サムスンは株主総会を控えて大々的な広告戦を繰り広げた。
ある証券会社のリサーチ責任者は、「(サムスンもエリオットも)小口株主を捕まえなければならないというのは、最初から決まっていた。(サムスンの)愛国心マーケティングを遮断する方法をとらなかったのはエリオットの失策だ」と解釈した。「愛国心」が投資家をとらえてからは、エリオットがサムスン電子の株式を現物で配当するようにしたものが、むしろ逆効果になったという分析だ。エリオットがサムスン物産と第一毛織株式をともに持っている外国人投資家が、同調勢力になると簡単に思ったことも、実力不足の現れだとこのアナリスト説明した。
「渡り鳥外国資本」の攻撃は有効だったが
相次いで言葉覆したことで、信頼が大きく損なわれる
定款改正案への賛成率45%台
サムスン経営方式への不満の表れかも
失われた株主や市場の信頼回復が急がれる
サムスン「方法模索中」...結果に注目集まる
エリオットの失策は、サムスンが合併を成功させる結果をもたらしたが、サムスンも信頼毀損という大きな傷を負った。エリオット側は、「会社に合併計画を尋ねた時はないと言っていたのに、1カ月半後に合併を発表した」と批判した。エリオットの攻撃直後サムスン物産の自社株(5.76%)を友好勢力に渡すという予想に対し、サムスンは否定していたが、すぐに言葉を覆してKCCに売却した。第一毛織の子会社であるサムスンバイロジックスのビジネスの展望についても、昨年11月企業説明会(IR)では投資リスクを強調したが、サムスン物産との合併を発表後、両社の相乗効果について懐疑的な反応が出ると、バイオ事業の見通しをバラ色に変えた。
ある証券会社の研究員は、「サムスン物産の経営陣が会社に未来がないと強調していることに最も驚いた」と話した。サムスン物産と第一毛織の合併比率がサムスン物産に不利という批判に対する防御の論理を作るために、経営陣が会社の価値を貶めるのは話にならないということだ。彼は「サムスン物産が50株を持っている小口株主を訪れたそうだ。私が知っている先輩から、同じ学科出身の大学の20年後輩を送ったという話を聞いた」と伝えた。サムスンはそのように総力戦を繰り広げたが、賛成率はかろうじて3分の2を超えた。匿名を要求したある大企業の元幹部は「エリオットが提案した定款の改正案件に対する賛成率が45%で高かった。一応合併案件ではサムスン側に立って支持したが、既存の経営方式については、半分程度が不満を表したのではないか」と述べた。
米紙ウォールストリート·ジャーナルはこの日、「サムスンが韓国の国内総生産(GDP)に占める割合は相当のものだし、サムスン電子は売上高ベースでアップルに次いで世界で2番目に大きな情報技術(IT)企業だ。サムスンはより一層企業の透明性を高め、小口株主尊重という原則をしっかり遵守しなければならない」と忠告した。経済改革連帯はコメントを出して「国民の世論がサムスンに投げかけた警告と教訓に耳を傾け、独断で閉鎖的な“サムスン式経営”を改革しなければならない」と指摘した。
サムスンの未来戦略室のある役員はこの日、「市場と社会の信頼回復のための計画を立てている」と明らかにした。サムスン周辺では、イ・ジェヨン副会長が直接社会とのコミュニケーションと社会貢献を強化する案が取り上げられている。系列会社の組織文化をグローバルスタンダードに合わせて変えて、統合サムスン物産を新設することにした株主の権益保護のためのガバナンス委員会を、他の会社にも拡大する案も挙げられている。未来戦略室の役員は、サムスンオーナー家の3世たちが、株主価値毀損が懸念されている系列分離(統合サムスン物産の再分離)をせず、共同経営をする案が検討されているメディアの報道について、「まだ確定したものは何もない」とし「このような作業が一日や二日で決定される事案ではないが、それでも時間だけ稼いでいるわけにはいかないのではないか」と述べた。
韓国語原文入力:2015-07-20 20:35