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[記者手帳]最初のMERS患者と「スケープゴート探し」

登録:2015-06-30 23:34 修正:2015-07-01 07:33
疾病管理本部のスタッフたちが1日午前、中東呼吸器症候群(MERS)の治療隔離センターのあるソウルのある病院の緊急治療室に、高熱患者を移送している=キム・ソングァン記者//ハンギョレ新聞社

 「中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスに感染して、今は状態が好転したが、まだ細菌性肺炎と褥瘡などに苦しむ患者を非難するなんてあんまりです。この患者もMERSの被害者です。主治医として、完治してから退院決定を下すべきか迷っています」

 6月29日、国立中央医療院で開かれた記者懇談会で、最初のMERS患者の主治医であるチョ・ジュンソン呼吸器センター長は8日以降5回の検査では、患者からMERSのウイルスが検出されなかったと伝えた。ところが、患者の状態を伝えてから、現場に残った数人の記者の質問に答える彼の顔は暗かった。一部のネットユーザーたちが、この患者に責任を問わなければならないという趣旨のコメントを載せていたからだった。さらに、あるインターネットユーザーは、「他の患者にMERSを感染させて死亡させた人なのに、本人は完治判定を受けるなんて呆れた」とも書いた。チョ・センター長は「感染症が広がれば、患者を犯罪者みたいに扱う。この人だって病気にかかりたくてかかっただろうか?彼も治療を受けるべき患者に変わりはない」と述べた。病気にかかった人は、被害者であって、責任を問わなければならない加害者ではないという指摘だ。

 この患者は、隔離病床から一般病室に移ったが、今後も治療を受けなければならない。40日以上寝たきりだったせいで、全身の筋肉が弱くなり、歩くこともままならない。腰には、重度の褥瘡ができた。チョ・センター長は「主治医として、治療を超えて患者の安全まで心配しなければならない現実が悲しい」と述べた。

 最初の患者だけでなく、サムスンソウル病院の緊急治療室で多くの人にMERSを拡散させた14番目の患者など、いわゆる「スーパー・スプレッダーたち」にも非難が集中している。しかし、彼らも重病で病院を訪れ、自分の意志とは無関係にMERSに感染されて感染を広げただけだ。患者を治療し、社会に復帰させようとするチョ・センター長のような医師の心を、社会が一緒に共有しなければならない。

 また最初の患者と、いわゆる「スーパー・スプレッダー」に責任を問おうとする人たちの態度は、中世の魔女狩りを連想させる“スケープゴート探し”であり、3年前から知られた感染症に対処に右往左往した政府の防疫体系など、実際に責任を問うべき対象の隠蔽につながる恐れがある。

キム・ヤンジュン医療専門記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2015-06-30 16:0

http://japan.hani.co.kr/arti/politics/21184.html  訳H.J

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