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雇用を脅かすAIの時代、社会的連帯が重要だ【寄稿】

登録:2025-05-29 02:15 修正:2025-05-31 08:15
イ・ヘウォン|瑞靖大学社会福祉相談科助教授
ゲッティイメージバンク//ハンギョレ新聞社

 人工知能(AI)が私たちの日常に深く入り込んできている。かつては何日もかかっていたことが、今は数分で処理される。筆者もやはり、単純労働やアルバイトに依存して生計をつないでいる低所得のぜい弱階層から「私の仕事もロボットに奪われるのか」としばしば聞かれる。仕事は減り、不安は増していく。私たちは技術そのものよりも、その技術がもたらす構造的問題に直面している。国際通貨基金(IMF)は最近の報告書で、AIが雇用を脅かすこと、そして特に中間以下の所得層にはより大きな被害をもたらすであろうことを警告している。単なる経済的変化ではない、明らかな社会政策的対応が必要な事案だ。

 海外の主要国も迅速に動いている。欧州連合(EU)はAI法(AI Act)を制定して高危険群のAIの使用を規制するとともに、労働権を保護しようとしている。米国の一部の州では、AIが解雇対象者を選び出す「アルゴリズム解雇」を防止するための法の制定に向けた議論が進められているし、フランスやドイツなどはAIで雇用が脅かされる労働者の再教育と転職の支援に支出する国家予算を拡充している。このすべての流れは、AI時代にも人間の尊厳と労働権を最優先にすることを目指す社会的動きの一環だ。

 問題は、このような変化の衝撃は個人には耐えがたいことだ。国の政策的介入と福祉システムの整備は、もはや先送りできない課題だ。技術の進歩の利益が一部のみに集中しないよう、社会全体がその恩恵を分かち合う構造を作らなければならない。今回の選挙は、まさにこのような転換期にあって国がどのような方向を選択するかを決める重要な契機だ。有権者の選択は単なる政治的支持ではなく、AI時代の雇用や福祉をいかに解決していくかに対する集団的判断であり、責任だ。各候補が提示する雇用や福祉についての公約は、果たしてAIによる構造的変化に対応できるのか。有権者は綿密に検討すべきだ。

 まず、AIおよび自動化技術の拡大で既存の伝統的な仕事は急速に消えていくことが予想される。そのため再教育や転職支援システムが求められている。失業給付制度も生計の補助にとどまらず、転換型所得保障の装置へと進化しなければならない。外国の例のように国家主導の再教育システムを強化するとともに、労働市場の構造的再編に能動的に対応する準備が必要だ。

 第二に、技術へのアクセスと活用能力が個人と社会の競争力を左右する時代だ。高度化した生成AIは急速に拡散しつつあるが、それを誰もが利用できるようにするためのインフラはまだ足りない。公共データセンター、グラフィック処理装置(GPU)資源の共有プラットフォームなどによってAIの活用基盤を公共財へと転換することが必要不可欠だ。技術がもう一つの不平等を生まないようにするためには、AIを社会全体の力量へと還元できるようにしなければならない。

 第三に、AIの導入は生産性を飛躍的に引き上げると同時に、伝統的な労働時間構造に対する再検討を要求する。同じ生産量を少ない時間と人材で達成できるだけに、雇用の減少は必然だ。その解決策として、ジョブシェアリング(ワークシェアリング)のような労働の再構造化政策が注目されている。これは労働時間の短縮を通じた雇用の拡大だけでなく、生活の質の向上と福祉の再構成をいずれも追求する方向性だ。もちろん、それを実現するためには雇用の安定、賃金構造と社会保険システムの改編が伴わなければならない。

 AI時代の未来は技術そのものにかかっているわけではない。私たちがどのような政治的、社会的選択をするかによって、その技術が作る世界はまったく異なる姿となるだろう。いま必要なのは技術中心ではなく人間中心の政策であり、それを可能にする社会的連帯と制度的想像力だ。有権者は漠然としたスローガンではなく、具体的で実現可能な公約を基準として判断しなければならない。その判断が結局は、私と私たちの共同体の労働の未来、そしてAI時代の雇用や福祉をどのような方向へと導いていくかを決めることになるだろう。

//ハンギョレ新聞社

イ・ヘウォン|瑞靖大学社会福祉相談科助教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/1199880.html韓国語原文入力:2025-05-28 17:26
訳D.K

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