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韓国政府「南北の敵対行為中止区域はもはや存在しない」と宣言

登録:2024-01-08 23:57 修正:2024-01-09 08:28
地上・海上・陸上の境界地帯で 
偶発的衝突の危険性が高まる
5日午前に西海で北朝鮮の海岸砲が海上射撃を行ったことを受け、延坪島海兵部隊が同日午後、対応射撃としてK9自走砲を撃っている=国防部提供//ハンギョレ新聞社

 韓国軍合同参謀本部は8日、北朝鮮による3日間(5~7日)連続の北西島しょ地域からの砲射撃について「地上と東海(トンヘ)・西海(ソヘ)の海上に敵対行為中止区域は存在しない」と宣言し、同地域で射撃などの訓練を実施すると発表した。昨年11月、北朝鮮の軍事偵察衛星の打ち上げに対抗し、韓国政府が空中飛行禁止区域の効力停止を決定したのに続き、地上と海上の敵対行為緩衝区域はもはやないとし、訓練再開の方針を明らかにしたのだ。9・19南北軍事合意は、南北がいずれも無効化したことで事実上消え、地上・海上・空中の境界地帯で偶発的衝突も危険性が高まっている。政府は北朝鮮の軍事挑発には断固として対応しつつも、平和管理に向けた努力を並行すべきだ、という指摘が出ている。

 合同参謀本部は同日、「北朝鮮は(昨年11月23日)9・19軍事合意破棄宣言以降、最近3日間にわたり西海の敵対行為中止区域で射撃を実施しており、敵対行為中止区域がもはや存在しないことを行動で示した。このため、韓国軍も既存の海上および地上の敵対行為中止区域で射撃および訓練などを正常に実施していく」と発表した。さらに「地上と東海と西海の海上で敵対行為中止区域が存在しないという意味」だと補足した。軍当局は9・19南北軍事合意で中断されていた白ニョン島(ペクニョンド)や延坪島(ヨンピョンド)などでの海兵隊の定例海上射撃を再開する方針だ。すでに5日、北朝鮮の西海北方限界線(NLL)以北の海上砲射撃に対応し、延坪島と白ニョン島の海兵部隊がNLL以南の海上緩衝区域で砲射撃を実施したことがある。

 合同参謀本部のイ・ソンジュン広報室長は同日の定例記者会見で、「北朝鮮は3600回以上にわたり9・19南北軍事合意に違反した」と述べた。2018年に結ばれた9・19南北軍事合意には、陸海空のすべての領域における相互敵対行為の中止▽板店共同警備区域(JSA)の非武装化▽非武装地帯内の相互監視警戒所(GP)の試験的な撤収▽朝鮮戦争戦死者遺骨の南北共同発掘▽漢江河口の共同利用などが含まれている。この中で主軸となるのは、偶発的武力衝突が全面戦争に広がらないよう南北境界地域の地上・海上、空中の緩衝区域を設定し、敵対行為を中止することだ。

 昨年11月21日、北朝鮮が3回目の軍事偵察衛星の打ち上げに成功したと宣言したことを受け、政府は翌日、9・19南北軍事合意のうち「飛行禁止区域」の一時効力停止を決めた。これに対し、北朝鮮は11月23日、9・19南北軍事合意の全面無効を宣言し、軍事合意によって破壊した最前線の監視警戒所の復元と、板門店共同警備区域の再武装に乗り出した。北朝鮮が今月5日から西海海上の緩衝区域内の砲射撃を再開すると、合同参謀本部は海上・地上緩衝区域が存在しないと宣言。南北の軍事力が集中した地上・海上・空中の境界地域で偶発的衝突の危険が高まった。2010年11月の延坪島砲撃戦は、北朝鮮が韓国海兵隊延坪部隊の砲射撃訓練の中止を要求して行われた。

北朝鮮が西海の北方限界線(NLL)付近の海岸砲射撃を実施した5日、合同参謀戦闘統制室でシン・ウォンシク国防部長官が北西島しょ部隊の海上射撃訓練を点検している=国防部提供//ハンギョレ新聞社

 昨年末には韓米合同戦闘射撃訓練が、先週には韓国陸軍の砲射撃訓練と海軍の東西南海全域における砲射撃と海上機動訓練がおこなわれた。シン・ウォンシク国防部長官は「敵が挑発の際には焦土化」、「即時に、強力に、最後まで報復せよ」と強調している。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)労働党総書記は先月末、「有事の際、核武力を含むすべての物理的手段と力量を動員し、南朝鮮の全領土を平定するための大事変の準備」をする方針を明らかにした。4月の韓国の総選挙と11月の米大統領選挙を控え、北朝鮮は緊張を高める行為を続けるものとみられている。

 大阪総領事を務めた北韓大学院大学のチョ・ソンリョル招聘教授は「米国と日本は北朝鮮の挑発を指摘する時、必ず『対話の扉は開かれている』とし、平和の管理にも取り組む」とし、「しかし、韓国は9・19南北軍事合意など、開かれている対話の扉すら閉ざしている」と語った。さらに「昨年秋から米国は11月の大統領選挙前まで朝鮮半島と台湾海峡の衝突を防ぐために中国の協力を得ており、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の北朝鮮強硬政策は国際情勢とも合わない」と指摘した。イ・ホング元統一部長官は同日、ソウル中区(チュング)のロッテホテルで開かれた歴代統一部長官の新年あいさつ会で、キム・ヨンホ統一部長官に「現時期の危機を打開するため、各レベルで南北間対話が復元されるよう積極的に努力すること」を要請した。

クォン・ヒョクチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/1123517.html韓国語原文入力:2024-01-08 21:19
訳H.J

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