本文に移動

韓国の統一地方選挙は「ソウル特権市」の反乱なのか【コラム】

登録:2026-06-09 09:05 修正:2026-06-09 09:41
「国民の力」のオ・セフン・ソウル市長当選者が、第9回全国同時地方選挙の翌日である4日、ソウル鍾路区の大王ビルに設けられた選挙事務所に向かっている/聯合ニュース

 勝利の理由は明快だが、敗北の理由は区々たるものだ。「共に民主党」のチョン・ウォノ候補が勝っていたなら、与党側は李在明(イ・ジェミョン)大統領の人気のおかげだと言ったことだろう。内乱審判の延長線上にあると主張する人もいたかもしれない。だが、チョン候補は敗れ、それをめぐって様々な分析が飛び交っている。候補の競争力、公訴取消に関する論争、オ・セフン市長の「内乱勢力」との距離の置き方、不動産、20~30代の保守化等々。

 100年近く経つ大恐慌の原因をめぐっても、経済学者たちの論争は終わっていない。ソウル市長選挙の結果は、あらゆる分析すべてを混ぜ合わせたものが最も安全な答えかもしれない。区長や市議会議員選挙は様相が異なっていたが、広域自治体長選挙においてソウルがこれほどまでに(全国とは)違う方向へ進んだことがあっただろうか。与党「共に民主党」が完全に席巻するという予想が出た時には、「保守の心臓部」(大邱)さえも制覇するのではないかと言われていた。その点で、民主党がソウル奪還に失敗したのはまさにミステリーだ。オ市長は、自分を救っただけでなく「地域政党」へと転落しかけていた保守野党「国民の力」も救った。李大統領が8日の就任1年の記者会見で「訳が分からない」と語った場面には、ソウル市長選挙の結果も含まれていたものと推測される。

 理解の幅を広げるためには、まずソウルがこれまで私たちが知っていたあのソウルなのかを検証する必要もある。以前は「与村野都(与党は農村部で強く、野党は都市部で強い)」という言葉がよく使われていた。韓国的な文脈におけるより正確な解釈は、保守右派と独裁政権は農村や地方の小都市で、それに対抗する側はソウルなどの大都市でより支持を獲得しやすいというものだ。首都をはじめとする大都市で進歩(革新)・自由主義勢力の支持が強いのは世界的な現象だ。米国のワシントンやニューヨークで共和党が影響力を示せないのも、そうした文脈によるものだ。

 これは首都の特性に起因する。首都では異質な背景を持つ人々が集まって暮らしているため、多様性が尊重される。政府の役割に対する理解と関心が高い。国を導く都市に住んでいるというプライド、あるいは義務感は、市民に民主・共和主義の守護者としての自覚を与える。4・19民主革命や6・10民主抗争がそのような事例だ。12・3内乱も首都ソウルの市民たちが阻止した。

 ところが、ソウルは今回、国の他の地域を先導しなかった。むしろ逆行した。底流に変化が生じたようだ。実際、江南(カンナム)だけを見れば、大邱(テグ)・慶尚北道と政治的傾向はさほど違わない。江南3区はソウルの中でも異質な地域と見なされていた。ところが、江南に追いつこうとする風が吹き続けている。江南3区を除き、漢江(ハンガン)に面した区のうちマンションなどの再建築への期待が大きい地域を指す「漢江ベルト」という言葉がある。漢江ベルトの代表格である龍山(ヨンサン)では、オ市長とチョン候補の得票率の差が16.9ポイントだった。江南・瑞草(ソチョ)区と共に江南3区を構成する松坡(ソンパ)区よりも4ポイント高かった。

 与党候補の敗因については、伝貰(チョンセ:契約時に高額の保証金を貸主に預けることで月々の家賃は発生しない不動産賃貸方式)の住宅不足のため政府に対する不満が大きかったという分析もある。同時に、再建築への期待や不動産税に対する不満もかなりあったとも言われている。有権者の心の中には、家を持たない人々と家を持つ人々の相反する不満や欲求も入り混じっていたことだろう。だが、漢江ベルトはやはり資産価値の増大に対する希望を象徴する側面が強い。

 住宅価格の上昇により、ソウルと地方の資産格差は目眩がするほど広がっている。こうした状況下で、共に豊かに暮らすことよりも、どうにかして自分だけでもファーストクラスに乗り込みたいという欲望も強まった。保守野党「国民の力」は、龍になりたい蛇のように、「江南」に分類されたいという欲望を刺激してきた。今回も、瑞草区の隣である銅雀(トンジャク)区で「江南4区、銅雀の完成」を叫んだ。前回の総選挙で銅雀乙(選挙区)から出馬し当選した国民の力のナ・ギョンウォン議員のスローガンも「銅雀を江南4区に」だった。

 自己の利益のために投票するのは自然なことだと思うかもしれない。だが、選挙は共同体の利益も考えなければならない時間でもある。全国各地の地方自治体・地方議会の選挙でも「内乱擁護政党」論争から逃れられなかった国民の力が敗北した背景には、そうした事情も大きく影響したのだろう。

 オ市長が、戒厳令を擁護しているかのように映るチャン・ドンヒョク「国民の力」代表と距離を置いたことが功を奏したという評価もある。一方、戒厳の記憶がまだ鮮明に残っている中、「戒厳4犯」の娘である朴槿恵(パク・クネ)元大統領が「国民の力」のために応援遊説を行った。「元祖弾劾大統領」がオ市長を直接支援したわけではない。だが、「内乱に審判を下す」ために一票を投じた有権者にとって、ソウルは大義を軽んじた地域と見なされかねない。

 欲望は漢江に沿って流れ、保守主義は高層マンションに沿って進軍する。この道を突き進めば、ソウルは韓国人の目に、特権のみを追い求める地域として映るかもしれない。

イ・ボニョン | 全国部長(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1262554.html韓国語原文入力:2026-06-09 07:29
訳H.J

関連記事