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[ニュースAS]韓信大学はなぜ留学生強制出国を強行したのか=韓国

登録:2023-12-23 00:09 修正:2023-12-24 10:15
12月13日午後、京畿道烏山市陽山洞の韓信大学京畿キャンパス内にあるチャンゴン館前で「韓信大学留学生強制出国糾弾時局祈祷会」が行われた。参加学生が「恥ずかしい」と表示された携帯電話を手にしている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 韓信大学が付設の韓国語学堂に通っていたウズベキスタン国籍の22人の留学生を強制的に集団帰国させたことが、波紋を広げている。大学側は「出入国管理所に学生たちの残高証明書を要求されたが、大半が滞在条件を満たせていなかった。このことを通知すれば学生たちが逃げて不法滞在者となる可能性があった」と釈明した。留学生が未登録外国人になってしまい、今後の留学生募集で不利益を被ることを懸念し、このようなことをしたという意味だと解釈される。

 留学生誘致が大学にとって一体どれほどの意味を持つからといって強引な強制出国までさせることになったのか。専門家は、財政難の解消を目的とした大学による無分別な外国人留学生誘致と政府支援の手薄さが重なった結果だと説明する。

不法滞在率に敏感なのはなぜ?

 韓信大学の事件で見られるように、「不法滞在率」は留学生を受け入れた国内の大学にとって敏感な領域だ。不法滞在率によって大学の留学生誘致の成否が分かれるからだ。教育部は毎年、大学に自主的に留学生の質の管理をさせるために「外国人留学生誘致・管理実態調査」と「教育国際化力量認証制」を実施しているが、ここでの最も重要な基本要件が「不法滞在率」だ。

 学位課程や語学研修で発生した不法滞在者の割合が2~4%未満(大学の規模による)などの要件を満たせば「教育国際化力量認証大学」となり、学生ビザ発給手続きが簡素化されるという恩恵が受けられる。逆に、この割合が10%を超えるなどして基準を逸脱すると「外国人留学生募集制限勧告大学」に指定され、1年間にわたって留学生に対する新規ビザ発給が制限されうる。

 留学生誘致を続けるため、専門性を持たない大学が自主的に留学生の滞在問題を管理する仕組みになっているのだ。ある非首都圏大学の国際交流業務の担当者は、「韓信大学が違法の素地のある強制出国までおこなったことに問題がある」としつつも、「大学は不法滞在率に神経をとがらせざるをえないが、大学は取り締まり機関でもないし、標準業務処理要領に則った手続きを踏んだとしても純粋に就学のために韓国に来たのかを完璧に見分けることは難しい」と話した。

財政難の解決策として急増

 滞在管理が難しいにもかかわらず、韓国にやって来る留学生(語学研修生を含む)の規模は2012年の8万6878人から2022年には16万6892人へと、10年間で2倍近くに膨らんでいる。大学が、授業料規制などから自由な留学生の誘致によって財政難を埋めようとした結果だという分析が有力だ。

 大学教育に対する政府の財政支援が特に少ない韓国の現実にあって、授業料と学生数は大学の財政にとって絶対的な役割を果たしている。だが、授業料を凍結した、あるいは引き下げた大学のみに国家奨学金2類型を支援するという教育部の政策の影響で、ほとんどの大学の学部の授業料は14年間にわたって横ばいだ。首都圏の大学は定員が規制されているため学生数を増やすことが難しく、地方大学は学齢人口の減少で国内の学生募集が難しくなっている状況だ。

 大学教育研究所(大教研)の「学生数の減少と私立大学の財政健全化方策の研究」と題する報告書によれば、一般大学の学部授業料収入は2015年の8兆2868億ウォンから2021年には7兆7594億ウォンへと、物価が上昇しているにもかかわらずむしろ6.4%減少している。非首都圏の私立大学は、2021年には91校のうち74校(81.3%)が運営収支で赤字を記録している(大学教育協議会、「大学授業料および私立大学の運営損益の現況分析」)

 これこそ、「定員外」の身分として入学し、授業料引き上げにも制限がない留学生が、大学の財政難を解消するための代案と考えられた背景だ。実際に大教研の分析の結果、193の国公・私立の一般大学、産業大学、教育大学の中で、2023学年度の学部授業料を引き上げた大学は17校(8.8%)にとどまっているが、大学院や定員外の留学生の授業料を引き上げた大学は69校(35.8%)にのぼる。語学研修生は相対的に授業料が安いが、大学は彼らに韓国語を教えた後に学位課程の留学生として流入させる計画を持っているケースが多い。

 聖山孝大学院大学のソン・ギチャン総長(元淑明女子大学教育学部教授)は、「授業料の凍結が長引いているものだから大学が独自で収入を上げる余地がなく、語学堂で収入をあげたり留学生を募集したりすることが財政の欠損を埋める解決策として用いられている。(不法滞在者が発生して)留学生募集に制限がかかると、自助努力で効果をあげることが困難になる」と話した。

外国人留学生数の推移(単位:人)。※語学研修などの非学位過程を含む=韓国教育開発院(KEDI)//ハンギョレ新聞社

留学生30万人の夢と現実

 政府の政策も留学生の量的増加に集中しているため、彼らの韓国での生活環境については意味のある方策を打ち出せていない。教育部は今年8月に発表した「留学生の教育競争力向上方策」(スタディーコリア300Kプロジェクト)で、2027年までに30万人の留学生を誘致し、世界の10大留学大国になるという目標を打ち出している。この方策は、それに向けて語学能力基準の緩和などの、留学のハードルを下げる内容が骨子となっている。一方、留学生の韓国での生活環境については、法的にアルバイトが可能な時間を週25時間から30時間に増やすことが提示される程度にとどまっている。留学生の卒業後の定住のための就業連携もまた、生産職などの韓国人が忌避する就業先へと誘導する内容となっている。

 留学生数を増やすことに集中し、韓国生活への適応は後回しにされている政策のせいで、韓国留学の「失敗」例も増えている。与党「国民の力」のイ・テギュ議員の分析資料によると、外国人留学生に占める学業中途脱落者は、4年制の一般大学で2019年は4770人だったが、2022年には7072人に増えている。留学後、本国に帰らずに未登録外国人になる留学生も、2019年の2万1970人から2022年には3万6067人に増えている。

 留学生の募集と管理の過程で、政府が一貫した政策を展開できていないため、現場に混乱を招いているとする指摘もある。韓国教育開発院は2020年に発表した「大学の外国人留学生誘致・管理の実態の分析研究」と題する報告書で「教育部は積極的に外国人留学生誘致を重点政策としたが、法務部は不法滞在者の入国禁止や労働市場の保護などに焦点を当てた防衛的な態勢を政策目標の基本的な方向性としているため、同一の政策に対する主務省庁同士の目標の不一致が発生しており、大学現場は実務的な混乱に直面している」と指摘している。

キム・ミンジェ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/schooling/1121453.html韓国語原文入力:2023-12-22 09:00
訳D.K

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