本文に移動

トコジラミはずっと私たちのそばにいた…衛生ではなく密集が問題=韓国

登録:2023-11-20 01:23 修正:2023-11-20 08:02
[ザ・ファイブ:The 5]トコジラミ博士の見た「トコジラミフォビア」
ファン・インソル|ソーシャルエディター//ハンギョレ新聞社

<「時間がないからといって、興味までないわけではない」。生活に追われて忙しく、ニュースを見る時間もないあなたのために用意しました。ニュースが教えてくれないニュース、見れば見るほど気になるニュースを5つの質問に盛り込みました。「The 5」が尋ね、記者が答えます>

 「トコジラミフォビア(トコジラミ恐怖症)」が全国に広がっています。公共の場所でのトコジラミ目撃談が相次いでいることで、「地下鉄に乗るのが怖い」、「映画館に行けない」という人も増えています。政府と地方自治体は「トコジラミゼロ」を目指して大々的な防疫に取り組んでいます。1970年代以降は消えたと思われていたトコジラミが再び出没したのは、なぜでしょうか。トコジラミの根絶は可能なのでしょうか。トコジラミや蚊などの衛生害虫を研究してきた乙支大学保健環境安全学科のヤン・ヨンチョル教授に聞きました。

[The 1]トコジラミは消え去ってはいなかったのですか?

ヤン・ヨンチョル教授:関心が傾けられることがなかっただけで、トコジラミは常に存在していました。トコジラミが出没するのは主にチムチルバン(公衆風呂・サウナ)や考試院(簡易宿泊施設)、長屋街、寮です。外国人の流入が多い場所であるという共通点があります。実際に私は10年前からトコジラミ問題にただならぬものを感じていました。特にKドラマが人気を集めた2015年から新型コロナウイルス禍がはじまる2020年までは、外国からの観光客と共にトコジラミも増えていたと推定されます。当時は済州道のゲストハウス、ソウル市木洞(モクトン)のチムチルバンや考試院でトコジラミを直接確認しましたから。2015年ごろには、トコジラミに刺された借家人が家主を相手取って起こした損害賠償請求訴訟で助言したりもしました。

 言い方に気を付けなければいけませんが、今年8月に全羅北道でジャンボリーが開催されましたよね。あの時は152カ国から4万人以上の外国人が一度にやってきました。運営が円滑にいかなかったことで早期退所した隊員たちが、首都圏や地方のあちこちに散らばって見学や旅行をする過程で、トコジラミが広がった可能性もあると思います。

[The 2]韓国にはどれほど広がっているのでしょうか。

ヤン教授:トコジラミが本格的に広がったと考えるのはまだ早いです。トコジラミは外国からの旅行客のかばんに忍び込んで国内に入ってくることが多く、そのため、トコジラミがいるのは外国からの旅行客の動線の周辺です。今現在トコジラミが確認されている場所を見ると、主に外国から来た人がよく行ったり住んでいたりする空間なんです。ですが、外国に行ったこともなく、外国から来た人との接触も少ない住民が住んでいる家にトコジラミが現れたとしたら? その時こそ本格的な拡散がはじまったと考えるべきだと思います。

ウォン・ヒリョン国土交通部長官が14日、ソウル九老区のKORAIL首都圏鉄道車両整備団九老車両事業所でトコジラミ防除作業をおこなっている/聯合ニュース

[The 3]この間、どうして管理がうまくいっていないのでしょうか。

ヤン教授:大事(おおごと)にしなかったから問題が表面化しなかったのです。トコジラミは衛生とは関係がありません。羽がなく衣服や荷物にくっついて移動するため、密集した環境かどうかが重要です。長屋街や考試院のような住居脆弱施設は密集した環境だからというのもありますが、経済的に厳しい方々が多いから積極的な防除が難しいのです。トコジラミを発見しても直ちに駆除するのが難しいというわけです。だから急速に広がっているのです。

 結局、そのような場所は政府が頻繁に確認し、支援をしなければなりません。感染症をうつさないトコジラミは「感染症予防および管理に関する法律」の定める管理対象害虫ではありません。トコジラミを見つけても届け出る義務はないんです。だから政府レベルでの実態把握がうまくいかなかったのだと思います。

[The 4]撲滅はできないのでしょうか。殺虫剤をまいてはいけないのでしょうか。

ヤン教授:トコジラミは、既存のピレスロイド系殺虫剤には耐性を獲得しています。だからこの殺虫剤をまいても効果はありません。トコジラミが死なないからといって薬の濃度を上げてしまうと、動植物や人に良からぬ影響を与える可能性がおおいにあります。環境部はトコジラミ駆除を目的として耐性の低いネオニコチノイド系殺虫剤を緊急承認しましたが、家庭用の製品はありません。

 特に保育園や高齢者療養施設のような感染脆弱施設にあらかじめ殺虫剤をまいておくことについては、注意を要します。トコジラミがいつ現れるか分からないのに殺虫剤をまいても役に立ちません。むしろ過度に殺虫剤をまいて吐き気や筋肉のけいれんなどの副作用が生じたら、誰が責任を取るのでしょう。トコジラミを捕まえようとして家を燃やしてしまうのと同じです。

[The 5]各家庭では何をすればよいのですか。

ヤン教授:トコジラミは現れたらすぐに捕まえ、さらなる拡散を防ぐことが重要です。第1に、トコジラミは思ったより速く動くので(主に隠れている)ベッド周辺に掃除機を置いておき、見つけたらすぐに吸い取ります。第2に、掃除機のフィルターの中に殺虫剤を数回散布し、ビニールで密封して廃棄します。最後に、スチームアイロンのような高温のスチーム機でトコジラミの生息場所を熱処理します。不安な方はベッドの枠の隙間に殺虫剤をまいてください。コートが厚くなってきたので、帰宅時に玄関で服を払うのもいいですよ。ポケットも確認します。トコジラミはバッグのファスナーによく隠れるので、旅行の後はバッグをビニール袋に包んで殺虫剤を吹き付け、3日後に換気することをおすすめします。

クォン・ジダム記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/health/1116845.html韓国語原文入力:2023-11-18 14:00
訳D.K

関連記事