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「トコジラミ清浄国」韓国に何が…なぜ考えただけでもかゆいのか?

登録:2023-11-10 07:38 修正:2023-11-10 08:29
海外メディア、韓国のトコジラミ出没の背景と対策に大きな関心
9月、フランスのパリで、トコジラミ駆除作業にあたる作業員の手袋の上をトコジラミがはっている/ロイター・聯合ニュース

 「夜行性の吸血虫をほとんど退治していた韓国にトコジラミが出現し、恐怖を呼び起こしている」

 1960年代以降、半世紀以上にわたって「トコジラミ清浄国」に近かった韓国にトコジラミが出没したことを受け、英紙ガーディアンは8日(現地時間)、この「吸血虫」に対する韓国社会の反応に触れつつ、「韓国政府が『トコジラミとの戦争』を宣言した」と伝えた。香港のサウスチャイナ・モーニング・ポストは「ほとんどの韓国人が一度も見たことのない虫である『トコジラミ』が大衆の恐怖を呼び起こした」と報道した。

 韓国でも1960年代までは、長距離列車でソウルと地方を行き来していた人々が「トコジラミのせいで列車では眠れない」と不満をもらすほど、トコジラミは一般的な存在だった。しかし、政府主導の全国トコジラミ退治キャンペーンが効果を発揮し、その後はトコジラミ完全撲滅に成功したかにみえた。2014年以降の10年間でトコジラミ届けは9件に過ぎなかった。しかし最近、ソウルと仁川(インチョン)を中心としてトコジラミ出没届けが急速に増え、長い間この問題で苦しんできた英国やフランスなどの外国も、その背景と対策に関心を寄せている。韓国政府は3日、行政安全部など10省庁を動員して「政府トコジラミ合同対策本部」を設置し、「トコジラミ情報集」まで作ってトコジラミとの総力戦に乗り出した。政府は情報集で「トコジラミは光を嫌うため、真っ暗な部屋に静かに入って突然懐中電灯を照らせば、暗い場所に隠れようとして動くトコジラミを見つけることができる」というヒントまで教えている。「トコジラミ清浄国」だった韓国にトコジラミが再び出没したのは、新型コロナウイルスの世界的大拡散(パンデミック)終了後、大挙入国する外国人観光客にトコジラミがついてきたからだ、との分析が示されている。一部からは、国際宅配が活性化したことで、中国や英国などから送られてくる小包を通じてトコジラミが広がったとする観測も示されている。

 韓国ではトコジラミは馴染みのないものだが、一部の外国では依然として最もありふれた虫の一つだ。米国の非営利民間団体「害虫管理協会(NPMA)」が発表した直近の資料「国境なき虫の研究」(2018年)によると、調査直前の1年間で害虫専門家の97%にトコジラミを駆除した経験があり、害虫駆除の問い合わせの71%がトコジラミに関するものだった。トコジラミが出没した場所も住宅、学校や保育園、病院、公共交通機関だけでなく人形、車イス、財布、ベッドなど様々だ。

 トコジラミは大きさが5~6ミリほどの虫で、1週間に1~2回ほど人などの血を吸って生きるが、10分間で体重の6倍の血を吸うことができる。トコジラミに刺されると大半はかゆいだけで終わるが、まれに高熱が出て炎症反応が起きる。トコジラミに刺されていなくても、トコジラミを思い浮かべるだけで体がかゆくなったり、ぞっとしたりすることもある。「トコジラミ恐怖症」を持つ人の中には、実際にはトコジラミがいないのに恐怖や不安を感じたり、さらには不眠症を訴えたりする人もいる。

 臨床心理学者のヘザー・セケイラ博士はBBCに「何かに恐怖や不安を感じたりすると、体が『潜在的脅威』を感知しようとしてあらかじめ高い警戒態勢を取るため」だと説明した。ひどい場合は「トコジラミトラウマ」につながりうるという。一方で、ありふれた害虫の一つであるトコジラミのことをあまり深刻に考える必要はない、という忠告もなされている。コーネル大学の昆虫学者、ジョディ・ガングロフ・カウフマン博士は「フランス、英国、オーストラリアなどでこれまで経験されてきたことであって、新たな事件が起きているわけではない」とし、「2024年のオリンピックを準備しているパリでは、ソーシャルメディアの映像が虫の行動を過度に刺激的に報道している」と批判した。

 時と場所を選ばずに現れるトコジラミから逃れる「安全地帯」は特にないため、普段からトコジラミが接近できない環境を作っておくことこそ最善の予防策だ。BBCは「服をお湯で洗濯すること。旅行する際には宿の壁に密着したベッドや家具の隙間などを調べ、真空掃除機でスーツケースをきれいに掃除すること」を訴えている。

ホン・ソクチェ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1115585.html韓国語原文入力:2023-11-09 11:19
訳D.K

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