技術発展に伴う大量失業は、現代社会が抱えてきた長きにわたる不安だ。これまでの歴史は全体的には技術が人に代わる効果よりも新しい雇用を創出する効果の方が高かった。
しかし、昨年11月の「ChatGPT」の発表で人工知能(AI)が本格的に導入され、雇用不安が新しい局面を迎えている。生成AIが高度の知的労働、さらには人間固有の領域とみなされてきた芸術や創作でも驚くべき力を見せたことを受け、「(AIに)仕事を奪われるかもしれない」という不安が広がっている。4日には、AI技術の発展に伴い米国の情報技術企業で大規模なリストラが始まったというCNNの報道も出た。AI時代が本格的に始まると、雇用はどのように変化するのか、雇用への影響を及ぼす要因は何なのかを考えてみる。
雇用消滅 vs 創出
CNNによると、今年情報技術企業から解雇された人は21万2294人で、6カ月で昨年の全体解雇人数(16万4709人)をすでに上回った。IBMなどグローバルビッグテック(超巨大IT企業)でも大量解雇が現実味を帯びている。IBMの最高経営者、アービンド・クリシュナ氏は5月2日、「5年にわたり、業務支援部署の従業員2万6000人中30%をAIに切り替えるか、自動化する」と発表し、波紋を広げた。
世界経済フォーラム(WEF)の「仕事の未来レポート2023」も、2027年までの間に8300万人の雇用がなくなり、新たに6900万人の雇用が創出されると予測した。今年5月1日、45カ国の803社を対象にしたアンケート調査の結果だが、世界の雇用の約2%に該当する1400万人の仕事がなくなるかもしれないのだ。
一方、AIによって消滅する雇用より新たに創出される雇用の方が多いという楽観論も根強い。先月22日、米国の技術専門誌「WIRED」は2010年代のディープ・ラーニングのブームとAI基盤の自動化により大量失業の危険性が最も大きい事務職で、むしろ雇用が5%増加したという欧州中央銀行などの研究結果を紹介した。米国の投資銀行「ゴールドマンサックス」も3月、生成AIが全世界で3億人の正規雇用に影響を及ぼすが、消滅する雇用よりも新しく生まれる雇用の方が多いと予想した。
AIは未知の世界であるため、不確実性が非常に高い。過去の分析を未来にまで拡張する際も危険要素が多く、専門機関によって見通しも分かれる。ただしAIの導入で肉体労働者より事務職労働者、そして女性労働者がさらに打撃を受ける恐れがあるという点では大体一致する。
知的・創意的労働の未来
生成AIは高賃金の知識労働者の雇用も脅かす。コピーライターやイラストレーターのようなフリーランサーの芸術家、マーケティングやソーシャル・ネットワーキング・サービスのコンテンツ部門で、すでにAIが人間の労働を代替している。3月、オープンAI(OpenAI)とペンシルベニア大学の研究陣が米国の労働市場を対象に研究した論文でも、ChatGPTの登場は以前の自動化の波が単純事務職を狙ったのとは異なり、高賃金の知的労働者を脅かしていると発表した。
クリエイティビティに基づいた高度の知的労働を遂行する職業の作家たちにも暗雲が立ち込めている。5月には米国作家労組(WGA)が全面ストライキに出たが、AIに対する作家たちの全面的統制が主な要求事項だった。
まだ最先端のAIさえも人間の文章には及ばない。チャットボットは統計的に最も可能性の高い単語を予測し、平均的なコンテンツを生産するためだ。問題は、企業がコスト削減と利潤のために品質に対する期待値を下げることもあり得る点だ。人間の仕事の多くをAIに奪われる経路は避けられないものとみられる。
大量失業を防ぐためには
新技術が人間の労働に代わる水準に達したとしても、直ちに雇用が消滅し始めるわけではない。英国の経済専門誌「エコノミスト」は先月7日、「生成AIによる雇用消滅論は誇張されている」とし、最も重要な要因として政府の規制と労働組合の役割を挙げた。教育と医療など政府の影響力が大きい公的領域でAI技術を導入した場合、効率性の向上の他に雇用安定も考慮しなければならないためだ。労組も大量解雇を防ぐ防波堤の役割を果たすことができる。
ドイツの影響力のあるエコノミストで、ドイツ政府の諮問委員を務めているデュッセルドルフ大学のイェンス・ジュデクム教授も「新技術が導入されれば新しい需要も生まれるため、再教育を通じて労働者はより良い仕事に移ることもできる」と話す。しかし、問題はそれほど簡単ではない。新しい雇用の需要と再教育を受けた労働者の期待が合致しない可能性も高い。「再教育が役立つ条件は、雇用の安定性が確保されている時だ。米国のように解雇の柔軟性が高く雇用が不安なところでは、労働者がAIの襲撃の中で墜落する危険性の方が高い」とジュデクム教授は指摘する。AI時代、労働者を守るためのセーフティネットこそが最も現実的な代案という意味だ。