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[寄稿]AIと雇用の未来

登録:2023-04-12 06:08 修正:2023-04-12 08:00
イ・ガングク|立命館大学経済学部教授
ゲッティイメージズバンク//ハンギョレ新聞社

 昨年末に生成型人工知能(Generative AI)のChatGPTが公開されると、「賢い機械によって雇用がなくなる」という声が再び大きくなった。様々なホワイトカラー労働者たちがChatGPTを業務に活用しているが、米国のある世論調査では、求職者の62%が「人工知能(AI)が自分のキャリアを脅かす」と懸念した。はたしてAIの発達は、労働市場にどのような衝撃をもたらすのだろうか。

 過去の様々な研究は、ロボットなどの自動化技術が失業に及ぼす影響について報告してきた。工業用ロボットは、2011年の約100万台から2021年には350万台に増加し、様々な産業に広がってきた。ソウルではロボットがチキンを作るチェーン店が登場し、日本の多くの飲食店ではロボットが食事を持ってくる。だが、自動化が大量失業をもたらすという懸念は現実化しなかった。一つの仕事は様々な職務によって構成されており、自動化が難しい職務を考慮すれば、仕事の自動化の可能性は思ったより低いためだ。また、自動化と失業は、純粋な技術的課題だけでなく、利潤動機など様々な要因に影響されるという点も考慮しなければならない。

 歴史的にも、技術革新は一部の仕事を失わせたが、新しい仕事が作られ続け、大量失業は杞憂に終わった。かつて、現金自動支払機(ATM)が普及すると銀行員の雇用が減るという懸念が広がったが、生産性が高まり、むしろ銀行員は増えた。コロナ禍後に自動化が加速するという恐れがあったが、現在の先進国の労働市場の失業率は、数十年ぶりとなる最低水準だ。

 だが、AIの能力を考えれば、今回は本当に違うという声も出ている。主に明確に定義される定形化されたルーティン労働の代替となった過去のロボットとは違い、AIは暗黙的かつ複雑な非定型労働を代替できるということだ。したがって、エリック・ブリニョルフソンやダニエル・サスキンドなどの学者の主張のように、今後AIがもたらす衝撃は非常に大きくなる可能性もある。ホワイトハウスの経済諮問会議が昨年12月に出した報告書も、AIは非ルーティン労働を大規模に変え、様々なホワイトカラー労働の脅威になりうると指摘した。

 実際に作文を例にしたマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者らの実験研究は、ChatGPTの使用が労働時間を短縮し、作業能率を高めたと報告する。プログラムのコーディングもAIが生産性を大幅に高めたとする報告もある。だが、AIが一部のホワイトカラーの職種に大きな影響を及ぼしたとしても、産業と経済の全般に影響を及ぼすには時間がかかるだろう。かつて電気や情報通信技術(IT)も、企業の補完的投資と生産方式の変化が必要だったため、経済全体の生産性を高めるには相当な時間を要した。

 一方、自動化と生産性上昇を背景に、新しい職業が作られる可能性が高い。技術と労働市場の変化を長きにわたり研究してきたMITのデイビッド・オーター教授によると、2018年時点で米国に存在する職業の60%は、1940年には存在しなかった。すでに、ChatGPTに対してより正確に答えさせるようにするプロンプトエンジニアのような新たな職業が登場している。もちろん、AIが大量失業をもたらさないとしても、自動化に関する実証研究が報告するように、労働所得の割合を減少させ不平等を深刻化させる可能性は懸念しなければならない。

 ならば、やはり重要なのは、AIの発展にどのように対応するかだ。個人的には、AIを活用し仕事をする能力を育て、社会的には、AIによる弊害を最小化し全員に役立つ手法に発展させる努力が必要だ。MITのダロン・アシモグル教授の指摘のとおり、AIは競争を抑制して消費者の選択を制限し、過度な自動化によって賃金上昇を抑制し、不平等を深刻化させるなどの問題を引き起こす可能性がある。ホワイトハウスの報告書も、政府は技術革新を促進しつつ、労働者を保護するための努力が必要だと強調する。同報告書では、今後の課題として、訓練と職業移動の業務に対する投資、労働者を代替するより補完し、サポートとなるAIの発展を促進する公共投資、AIを使うプラットホームに対する効果的な規制などを提示する。

 結局のところ、今はAIの衝撃を過度に懸念するより、真剣な対応と制度変化を模索する姿勢が必要な時だ。オーター教授が述べたように、AIと雇用の未来は不確実だが、私たちの目標は、単に未来を予測するのではなく、それを作りだすことだ。

//ハンギョレ新聞社

イ・ガングク|立命館大学経済学部教授 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1087297.html韓国語原文入力:2023-04-11 02:40
訳M.S

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