京畿道金浦市(キンポシ)に住むLさん(68)は、近所のマンションで警備員として働いている。ある建設会社の海外支社に長く勤務し、退職後しばらくは図書館で本を読んで過ごした。しかし、3人の子どもを外国で学ばせるために老後の資金が十分に準備できておらず、年金も思ったより少なかった。
仕事を辞めて間もなく徐々に不安にさいなまれた彼は、退職後わずか1年あまりで仕事探しをはじめ、高齢ではあるがうまく警備の仕事にありつけた。以前に比べ月給は非常に少ないものの、彼は「せめて70代半ばまではこの仕事を続けたい」と話す。
韓国労働研究院が発行した報告書「成長の潜在力と雇用変数の展望」を11日に確認すると、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で66歳以上の高齢者が最も働いているのが韓国だ。Lさんのように60代半ばを超えた高齢層の10人に4人が働いていた。
今回の報告書でチャン・インソン先任研究委員は、人口構造の変化が雇用率に及ぼした影響を調べるために、年齢層を4つに区分(35歳以下の青年層、36~50歳の中年層、51~65歳の壮年層、66~90歳の高齢層)して雇用率を算出し、国際比較を行った。
報告書によると、韓国の66歳以上の男性高齢層の雇用率(2021年)は44.1%。これは、高齢人口の10人に4人ほどが生活費を稼ぐことなどを目的として依然として働いているということを意味する。同じ年齢層の雇用率が2番目に高い日本(34.1%)と比べても、実に10.5ポイント高い。
経済協力開発機構(OECD)加盟の19の主な先進国(図表参照)の中でも圧倒的に高い数値だ。日本に続き高齢層男性の雇用率が高い国は、上から順にニュージーランド30.4%、スウェーデン24.9%、ノルウェー24%、米国22.3%。イタリアは8%、フランスは4.2%で一桁台だ。
雇用率は労働市場の現状を示す指標で、普通は満15歳以上の人口に就業者が占める割合、すなわち経済活動人口(15~64歳)に占める就業者の数を指す。統計庁によると、2021年現在の韓国の雇用率は66.5%。同年のOECD加盟国平均の67.8%(2021年)に比べて若干低い。
しかし韓国はこの割合が高齢層では様相が完全に異なり、主要先進国に比べてかなり高い。韓国の高齢層の雇用率は2000年にすでに40.3%を示しており、主要先進国の中で最も高かった。同年の日本(33.0%)、米国(17.1%)などと比べても差が大きく、ドイツ(4.4%)やフランス(2.1%)のように高齢層の雇用率が一桁に過ぎない国と比べると、働いている高齢層は10~20倍にも及んでいた。
このような現象は女性でも変わらない。韓国の66歳以上の女性高齢層の雇用率は27.4%(2021年現在)。韓国国内だけで見れば男性に比べて女性の数値は相対的に低いが、国際比較すれば韓国の女性高齢層の雇用率も最も高い。OECD加盟国では続いてニュージーランドが19.8%、日本が18.2%。女性高齢層の雇用率は米国(14.5%)、スウェーデン(13.8%)、オーストラリア(10.8%)を除けば、ほとんどの国が一桁にとどまっている。
このように韓国の雇用率が特に66歳以上の高齢層で高い理由について、チャン・インソン先任研究委員は「相対的に高い期待寿命、不足する老後準備、不十分な年金」が原因だと指摘した。寿命は長くなった一方で経済的余裕がないため、高齢者になってもどうしても労働市場にとどまらざるを得ないということだ。実際に2021年の統計庁のデータによると、韓国の高齢者の貧困率(可処分所得が中位所得の半分以下の高齢者の割合)は37.6%で、OECD加盟国の中で最も高い。
では青年層の暮らし向きはどうか。韓国の35歳以下の男性青年層の雇用率(2021年)は54.5%で、調査対象となった主な先進国の中では比較的低い。英国が71.7%で最も高く、続いてドイツ70.2%、カナダ70.1%の順だ。35歳以下の女性青年層の雇用率も、韓国は51.5%と低い。1位のオランダの79.3%と比べると、実に27.8ポイントもの差がある。ただし男女とも青年の雇用率が低いのは、単に韓国の青年労働力の活用率が低いというより、高い大学進学率にかなり大きな原因があると考えられる。若い女性の雇用率が低調なのは、この年齢層の女性にかかる出産と育児の負担が大きいためだと報告書は分析している。
チャン先任研究委員は報告書で「少子高齢化社会を迎え、健康な高齢層の労働機会の増加は必要だが、韓国のように老後の準備が不足しているせいで望まない高齢労働が避けられなくなるのは望ましい変化とは言えないだろう」と指摘している。