本文に移動

セウォル号の304人守れなかった国、責任を問われたのは「末端」のみ

登録:2023-04-17 02:40 修正:2023-04-17 07:46
セウォル号惨事から9年目を3日後に控えた13日、全羅南道珍島郡の彭木港。防波堤の金属の造形物が錆びている=珍島/聯合ニュース

 「普段から遭難事故に対する海洋警察官の教育訓練を疎かにするなど、海洋警察指揮部にもずさんな乗客救助に対する共同責任があるため、被告人のみにすべての責任を追及するのは苛酷だ」(2015年7月、キム・ギョンイル元123艇長の二審判決文)

 「事故現場に到着後、乗客に対して退船誘導・退船命令を指示するなど、最善の方法で救助指揮ができなかったということのみで、被告人たちが業務上のあらゆる注意をはらわなかったと考えることはできない」(2023年2月、キム・ソッキュン元海洋警察庁長ら海洋警察指揮部の二審判決文)

 2014年4月16日、304人を救助できなかったセウォル号惨事が発生してから9年がたったが、惨事の責任を問う裁判はまだ終わっていない。セウォル号惨事に関する刑事裁判は(1)船長・清海鎮海運など民間の沈没原因(2)123艇長・海洋警察指揮部の救助失敗(3)国軍機務司令部による遺族査察などの2次加害の大きく3つに分けられる。船長・清海鎮海運に対する裁判は2016年に有罪で終わったが、国の責任を問う救助失敗と2次加害に対する裁判は最高裁で上告審が進行中だ。

 ハンギョレの取材を総合すると、この9年間でセウォル号救助失敗の責任を問われ「有罪」が宣告された海洋警察官は123艇のキム・ギョンイル艇長(当時)が唯一だ。救助失敗の責任を問われ起訴された海洋警察官は12人だが、懲役が確定しているのは、事故現場に最初に到着した現場指揮官だったキム・ギョンイル艇長(2014年起訴、懲役3年)のみ。2020年に「遅まきながら」業務上過失致死傷などの容疑で起訴されたキム・ソッキュン海洋警察庁長(当時)ら海洋警察指揮部の11人には、一審と二審で無罪判決が下され、今は最高裁で上告審が行われている。2015年にキム・ギョンイル艇長の裁判で裁判所は「海洋警察指揮部の共同責任」に言及し、艇長に懲役3年を言い渡したが、2023年に裁判所はキム・ソッキュン海洋警察庁長ら指揮部11人の責任を認めなかった。

 指揮部11人の裁判での争点は、乗客退船のための措置を取らなかったことが業務上過失に当たるかどうかだった。一審と二審は「大規模人命事故に備えて海洋警察の体系が整備されていなかったことに対する管理責任」は批判しうるが、刑事責任を問うのは難しいと判断した。犠牲者の家族と市民の惨事に関する告訴・告発を代理する「民主社会のための弁護士会」のイ・ジョンイル弁護士は、「セウォル号惨事直後の2014~2015年に(指揮部が)起訴されていたら有罪と判断されていた可能性が高い」とし「時間がたったことで核となる証拠が確保できず、国民の関心も薄れた影響」だと語った。惨事当時の朴槿恵(パク・クネ)政権が救助失敗の責任を問う捜査に消極的だったため、検警合同捜査本部はキム・ギョンイル艇長のみを起訴することで捜査を終えた。キム・ソッキュン庁長ら指揮部11人は、2019年の文在寅(ムン・ジェイン)政権時代に「セウォル号惨事特別捜査団」が発足した後になってようやく起訴された。

4・16セウォル号惨事家族協議会と4・16連帯が2月7日午後、ソウル瑞草区のソウル高等裁判所前で海洋警察指揮部の二審無罪判決について立場を発表している/聯合ニュース

 キム・ソッキュン元海洋警察庁長は、惨事初期の供述を法廷で完全に覆し、裁判所は同被告の法廷陳述を認めて業務上過失を否定した。事故発生(午前8時49分)時に状況室にいなかったため救助活動ができなかったのではないかとの指摘に対し、「午前9時10分には状況室にいた」(2015年セウォル号聴聞会)と主張していたキム元庁長は、2021年の法廷では「(状況室に入った時刻は)9時28分」だと前言を翻した。一審と二審は法廷陳述を根拠に「(キム・ソッキュン元庁長は)セウォル号と交信を試みるなど措置を取った」と判断した。

 国は救助失敗の責任の回避からさらに踏み込んで、遺族に対する「2次加害」でも先頭に立った。セウォル号の遺族を違法に査察した国軍機務司令部(機務司・現国軍防諜司令部)の6人の幹部が2018年と2019年に起訴され、一審と二審で有罪判決を受けている。初期対応の失敗で朴槿恵政権に対する批判世論が高まったことから、機務司はセウォル号TF(タスクフォース)を設置し、遺族の状況を把握して機務司指揮部と大統領府に報告させた。二審は「機務司の収集する情報は時間がたつほど個人情報、私生活、真相究明活動などに集中してゆき、収集範囲も広範に、無差別に拡大していった」と述べている。

 イ・ビョンギ元大統領秘書室長やチョ・ユンソン元大統領府政務首席ら、朴槿恵政権の高官によるセウォル号惨事特別調査委員会(特調委)の活動に対する妨害事件は、二審で無罪判決が下され、27日に最高裁での判決を控えている。検察は、特調委がセウォル号惨事当日の朴槿恵元大統領の「空白の7時間」を調べる案件を議決するのを妨害した容疑で彼らを起訴した。一審は職権乱用を認めたが、二審は無罪と判断した。「特調委の独立性を侵害した」としつつも「このような行為が法令上の『義務のない仕事をさせたもの』だという証拠が足りない」との理由からだ。

 檀園高校の生徒だった故パク・スヒョンさんの父親のパク・チョンデさんは「セウォル号惨事の真実が明らかになることで責任者処罰がなされていれば、それ自体が教訓となって公務員たちは業務をもっとうまくこなすようになっただろうに、真実究明から責任者処罰に至るまで、きちんと行われたものがない」とし、「梨泰院(イテウォン)惨事にも見られるように、国家公務員組織に残っているのは『責任回避』のスキルしかない」と話した。

チョン・ヘミン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1088062.html韓国語原文入力:2023-04-16 15:58
訳D.K

関連記事