<10月29日、ソウル市の梨泰院(イテウォン)の真ん中で150人を超える若い命が失われてから50日あまりが過ぎた。予告された惨事に備えることも、防ぐこともできなかった政府の災害責任者のうち、責任を取って辞任した人は一人もいない。与野党は先月23日「龍山梨泰院惨事真相究明と再発防止のための国政調査」に合意したが、来年度予算案の交渉遅延と、与党「国民の力」の不参加で空転。今月21日になってようやく現場調査に乗り出し、正常化された。惨事の上層部をそのまま残して進められている警察捜査の信頼性が疑われている状況で、国政調査期間は全45日間(1回目の期限1月7日)のうち2週間あまりしか残っていない。国政調査の対象になった機関ごとに、究明しなければならない主要な疑惑を追及した。>
梨泰院惨事当日、警察の対応がなぜ不十分だったのかも国政調査で重要に取り上げられる事案だ。これについては、二つが指摘されている。一つは梨泰院地域を管轄する龍山(ヨンサン)警察署が龍山大統領室に「集中」したため事故に投入される人員が足りなかったという点、そしてもう一つは10万人の群集が予告された状況にもかかわらず慣行的に事故を「無視」した点だ。
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は就任直後、青瓦台を開放し、執務室を龍山に移した。警察の「昇進コース」も青瓦台のある鍾路(チョンノ)警察署から龍山警察署に変わったと言われるほどで、急激な業務の増加も十分予想できる状況だった。これに合わせて警察署の規模も大きくなった。龍山警察署の人員は10月末現在で789人。大統領室が移転する前の2月(715人)に比べて74人増えた。公共安寧情報外事課(29人→37人)、安保課(8人→17人)、交通課(70人→89人)など大統領の通勤管理および集会の日程管理などを中心に増員が行われた。
一方、治安現場をモニタリングし、交番に指令を下すと共に上層部に報告する役割を担う112治安総合状況室の職員は、10月末現在22人で、むしろ1人減った。惨事当日、夜間に勤務した112状況室の職員もたった4人だった。この日龍山署で勤務していた112状況室職員らは、午後6時34分にソウル警察庁に届いた最初の通報を含め計11件の通報を受けたが、報告が遅れて人員配置など追加の対応がまともに行われなかった。機動隊が到着した当日の午後11時40分前まで、梨泰院交番の職員10人余りがすべてに対処するしかなかった。龍山警察署状況室は、119に最初の通報があってから1時間45分ほど過ぎた午後11時57分、ソウル警察庁状況室に初めて状況を報告した。
機動隊の大半は集会管理に投入された。惨事当日、尹錫悦大統領退陣集会をはじめ、ソウル都心で計21団体の集会とデモが開かれた。当日、警察が運用した81の機動隊のうち70部隊が集会とデモへの対応に当たっていた。同じ日に10万人が集まると予告された梨泰院には、たった1つの中隊も配置されなかった。当日梨泰院には警察137人が配置されたが、そのうち52人(38%)は私服警察で、麻薬取り締まりが彼らの任務だった。尹大統領が10月に「麻薬との戦争」を掲げたことで、今年「麻薬撲滅」は警察の重要な任務の一つになった。ユン・ヒグン警察庁長も就任直後、麻薬根絶を繰り返し言及した。