<10月29日、ソウル市の梨泰院(イテウォン)の真ん中で150人を超える若い命が失われてから50日あまりが過ぎた。予告された惨事に備えることも、防ぐこともできなかった政府の災害責任者のうち、責任を取って辞任した人は一人もいない。与野党は先月23日「龍山梨泰院惨事真相究明と再発防止のための国政調査」に合意したが、来年度予算案の交渉遅延と、与党「国民の力」の不参加で空転。今月21日になってようやく現場調査に乗り出し、正常化された。惨事の上層部をそのまま残して進められている警察捜査の信頼性が疑われている状況で、国政調査期間は全45日間(1回目の期限1月7日)のうち2週間あまりしか残っていない。国政調査の対象になった機関ごとに、究明しなければならない主要な疑惑を追及した。>
「明らかに国家はなかった」
梨泰院惨事発生から約一週間後の11月8日に開かれた国会予算決算特別委員会で、ハン・ドクス首相が言った言葉だ。惨事直後、謝罪や遺憾の表明どころか負うべき責任も避けようとした政府が、遅まきながら示した「公式事実認定」だ。
政府は「国家不在」の理由を「災害および安全管理基本法」(災害安全法)の盲点から探す。ハロウィーンイベントが「主催者のいない行事」だっただけに、現在の法・制度のもとでは政府が手を出せなかったという抗弁だ。被害者と遺族の心をかき乱す発言が続いたのも、このような理由からだ。国会が国政調査で究明しなければならない主要な課題は、この抗弁に妥当性があるかどうかだ。
ハロウィーンデーの安全を守るべき1次機関である龍山区(ヨンサング)の無対応は、すでに明らかになっている。龍山区は事故予防の第一段階である「イベントの見積もり」も調べなかった。その一方で、惨事2日前に開いた「ハロウィーンデー緊急安全対策会議」ではコロナ防疫と「ゴミ収集」だけが議論された。「イベントの安全性」だけが除外され他の議題が議論された理由は、正確に明らかにされていない。「ハロウィーンイベントは主催者のいない、一つの現象」だと発言したパク・ヒヨン龍山区長の惨事直後のインタビューによって、その理由はある程度見当がつくが、十分ではない。そのため国政調査では、管轄区役所のこれまで明らかになっていない「考慮」を追及しなければならない。
「法的不備」による安易さを受け入れたとしても、パク区長の惨事当日の行跡は疑問を残す。区長は当日、故郷の慶尚南道宜寧(ウィリョン)を訪ね、ソウルに戻ってきた後、惨事現場と非常に近い「キノン通り」を通ったがそのまま帰宅した。惨事後、国会の懸案質疑過程などで宜寧の地域祭りを訪問していなかった事実や、龍山区の国会議員であるクォン・ヨンセ統一部長官と連絡を取ったという点は明らかになったが、パク区長が龍山警察署など関連機関と接触するなどの「積極的な行政」に取り組まなかった点は国政調査でもっと探らなければならない部分だ。
ソウル市の無対応も追及すべき課題だ。オ・セフン市長が欧州4カ国への9泊11日の出張でハロウィーンデー期間中に不在だった事実は広く知られている。ソウル市は、国政調査特別委員会所属の複数の議員がここ5年間のハロウィーン安全対策現況などを要求すると、「ハロウィーンの安全対策現況はない」「ハロウィーン当時、ソウル市次元の対策会議資料など秩序維持のために作成した文書や計画はない」と答えた。代わりに、ハロウィーン期間中のコロナ防疫点検人員現況だけを公開した。龍山区と同様に、これまで安全問題が議論されなかった理由を集中的に突き止めなければならない。
災害安全政策と対応を総括する中央省庁である行政安全部も、呆然としていたという点は否定していない。しかし、「意図的な無対応」を疑うだけの情況もある。惨事の翌日、中央災害安全対策本部(中対本)の会見で、イ・サンミン行安部長官が述べた発言がその端緒となる。「特に憂慮するほど多くの人が集まったわけではなかった。警察・消防の人員をあらかじめ配置していれば解決できたという問題ではない」。物議をかもしたこの発言後、イ長官は「性急な予測や推測、扇動するような政治的主張をしてはならないという趣旨で言ったもの」と釈明したが、果たしてイ長官が何の情報や報告もなしに問題発言をしたのかは、疑問符として残っている。
イ長官が尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領よりも惨事報告を遅く受けた点も疑問だ。1~4段階で構成されている行安部中央災害安全状況室の緊急ショートメッセージ(多数宛への一括送信)は、惨事当日、段階を経たことでイ長官への報告が遅れたという。イ長官は惨事発生から1時間5分たった午後11時20分に初めて報告を受けた。これは午後11時3分に報告を受けた尹大統領より17分遅い。「緊急ショートメッセージの電波体系」の特性だという政府のこれまでの説明が完全に納得できないのはそのためだ。イ長官に届く電波による手段が緊急メッセージ以外にはなかったのか、他の電波手段がイ長官に届かなかった理由は何なのかも、国政調査の際に究明しなければならない。この他に警察、消防、郡、地方自治体、医療機関など災害関連機関が一緒に意思疎通できる単一の連絡網である災害安全通信網が本来の役割を果たせなかった理由も、扱わなければならない事案だ。
大統領室国政状況室はもちろん、ソウル警察庁、警察庁なども、機敏な事前対応とはかけ離れたものだった。大統領室は3日のブリーフィングで「国政状況室は事前に備えられなかったのか」という質問に対し「国政状況室ではなく地方自治体の所管」と答えて退いた。危険性は下位機関が先に捉えたが、上位機関には上がらなかった。龍山警察署の情報課は「ハロウィーンイベント期間中の安全事故の懸念」情報報告書を警察の内部ネットワークに載せ、ソウル警察庁も確認できるようにした。しかし、特別な措置はなく、むしろ惨事後にこの報告書は削除された。報告書の削除を指示したという疑惑を受けているパク・ソンミン前ソウル警察庁公共安寧情報外事部長は、特別捜査本部に立件された後、検察に送致され取調べを受けている。現場の「事前の危険」報告が上部に伝わらなかった部分は、国政調査が解き明かさなければならない重要な課題だ。