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韓国野党、行政安全部長官の解任建議案発議…「大統領が拒否すれば弾劾推進」

登録:2022-12-01 06:37 修正:2022-12-01 09:05
民主党、弾劾訴追への直行も検討したが、まずは名分固めから
共に民主党のイ・ジェミョン代表が30日午前、ソウル城東区庁で開かれた現場最高委員会議でパク・ホングン院内代表と話している=キム・ボンギュ先任記者//ハンギョレ新聞社

 野党「共に民主党」が梨泰院(イテウォン)惨事の責任を問うため、イ・サンミン行政安全部長官の解任建議と弾劾訴追を12月の通常国会で順次進めることにした。梨泰院惨事に対する国政調査を控え、証人や参考人に影響を及ぼしかねない長官の影響を遮断しなければならないという判断によるものだ。イ長官の解任建議案の発議が現実化したことを受け、与党「国民の力」は強く反発した。

 民主党は11月30日、「イ・サンミン行政安全部長官は国家の災害および安全管理事務の総責任者としての義務と任務を放棄し、国民の生命と安全を守れなかったことに対して厳重な責任を負わなければならない」として、国会にイ長官の解任建議案を提出した。同日発議された解任建議案が12月1日の本会議に報告されれば、2日に表決に付される予定だ。また民主党は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が解任建議案に拒否権を行使した場合、来週半ばに弾劾訴追案も発議する計画だ。民主党のパク・ホングン院内代表は同日の記者懇談会で、「今回の通常国会内に必ず可決させ、イ長官の問責を終わらせる」と述べた。通常国会会期の12月9日まで、イ長官の退陣に向け、野党が動員できるあらゆる手段を講じる方針を示したのだ。

 民主党指導部は先月29日に開かれた議員総会以後、解任建議を経ることなく、イ長官の弾劾に直行する案も検討した。解任建議案を発議する前に尹大統領が事実上「拒否」の意思を明らかにしたため、党内で「意味のない解任建議の代わりに直ちに弾劾に乗り出そう」という意見が多かったという。しかし指導部はこの日、議論の末に「尹大統領が拒否権を行使したとしても、解任建議手続きが弾劾訴追に先行されるべき」と結論を下した。解任建議案の処理は政界内外でイ長官弾劾の名分を固めるのが狙いで、事実上弾劾訴追に向けた布石であるわけだ。

 国会の国務委員(日本の国務大臣に相当)弾劾訴追要件は「在籍議員3分の1以上の発議、在籍議員過半数の賛成」であり、理論的には169議席の民主党が単独でも推し進めることができる。しかし弾劾に至るためには、国会本会議と憲法裁判所の弾劾審判という二つの関門を越えなければならないため、その実現可能性については疑問符が付く。1948年に大韓民国政府が樹立されて以来、国務委員弾劾訴追案は憲法裁判所まで行くどころか、国会本会議さえ通過したことがない。まず、通常国会が与野党の戦場と化すであろう案件をキム・ジンピョ国会議長が本会議に上程するかどうかだ。議長室関係者は本紙の取材に対し、「議長は与野党を説得して国政調査に合意するよう導いたため、現状を慎重に検討し、解決策を考えている」と伝えた。

 憲法と法律違反という弾劾事由に対して、野党は「事故予防のための事前措置をしなかった点で災害安全基本法に違反しており、対応が遅れるなど職務遺棄の疑いが十分にある」と主張しているが、憲法裁判所が前例のない国務委員の弾劾に前向きな判断を下すかも未知数だ。憲法裁の決定が出るまでかなり時間がかかるため、実効性を疑問視する声もあがっている。これに先立ち、国会が2021年にイム・ソングン前部長判事の弾劾訴追に乗り出した時は、本会議議決から憲法裁の宣告まで8カ月がかかった。

 このように様々なハードルがあるにも関わらず、野党がイ長官の弾劾訴追に乗り出すと明言したのは、少なくとも国政調査期間中にイ長官を職務から排除すべだと判断したためだ。国会で弾劾訴追案が議決されれば、憲法裁の決定まで弾劾対象者の職務は停止される。パク院内代表は同日、「警察庁や消防庁の監部の人事権を握っているイ長官が健在な状況で、国政調査で彼ら(警察・消防公務員)が良心に従って証言し、素直に資料を提出するだろうか」と述べた。

 大統領室は、イ長官に対する民主党の解任建議案発議方針と関連し、不快感を隠さなかった。大統領室の高官は「国政調査の最も必要な対象に明示された長官の解任を突然求めるなんて、国政調査を行う意思があるのか問い返したい」としたうえで、「遺族と犠牲者の無念を晴らすべきという本来の趣旨に向け、国会と政府が共に努力する必要がある」と述べた。

 ただし、国民の力は直ちに「国政調査ボイコット」を宣言せず余地を残した。同党のチュ・ホヨン院内代表はこの日記者懇談会を開き、「民主党が国政調査合意から2日後にイ・サンミン長官の解任建議案を持ち出したことは、やっとの思いで復元した政治をなくすことに等しい」とし、「国政調査を始める前に罷免を主張するなら、国政調査を行う理由がない。民主党の自制を求める」と述べた。その一方で表決のボイコットの可否を尋ねる記者団の質問には「解任建議案の進行過程を見ながら国政調査に対応したい」として明言を避けた。

オム・ジウォン、 ソ・ヨンジ、キム・ミナ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/assembly/1069639.html韓国語原文入: 2022-12-010 2:45
訳H.J

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