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[梨泰院惨事]尹大統領、側近の行政安全部長官の責任は問わず警察だけを叱責

登録:2022-11-08 06:49 修正:2022-11-08 07:30
尹錫悦大統領が7日午前、ソウル龍山の大統領室庁舎で災害安全管理システム点検および制度改善策の議論のために開かれた国家安全システム点検会議で発言している=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 「安全事故を予防する責任はどこにあるのか。警察にある」「阿鼻叫喚の状況で、警察に権限がないという言葉を出せるのだろうか」 「人が多く集まりそうだという情報を最前線にいる龍山(ヨンサン)署が知らなかったというのは、常識外だと思う」「韓国の警察はそのようないい加減な警察ではない。情報収集能力にも優れているのに、なぜ4時間の間、ぼんやり見ているだけだったのか」「梨泰院(イテウォン)惨事は、制度の不備から生じたものなのか」

 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は7日午前、ソウル龍山にある大統領室で主催した国家安全システム点検会議で、梨泰院惨事を事前に防ぐことができなかった警察側の責任を、時間帯ごと、業務ごとに一つひとつ指摘し叱責した。会議には、惨事発生2時間が経過した後に最初の報告を受けたユン・ヒグン警察庁長官が参加した。イ・ジェミョン大統領室副報道官は、異例にも尹大統領の非公開会議の発言を会見を通じて詳細に公開した。

 尹大統領の激しい叱責は、ほとんど全面的に警察に集中していた。

 尹大統領はこの日、梨泰院惨事の責任を問い、警察の大々的な革新を要求し、「責任ある人に対しては、厳正にその責任を問うようにする」と明らかにした。しかし、警察・消防を含め、災害と安全の管理の総責任者である行政安全部とイ・サンミン長官に対する言及は特になかった。尹大統領が、与野党問わず強まるイ長官更迭の要請には耳をふさぎ、警察首脳部の問責程度に留めようとしているのではないかという見方が出ている。

 尹大統領は「韓国社会の様々なリスクに効果的に対応するため、安全管理の権限と責任、そして迅速な報告システムについて、全般的な制度的検討が行われなければならない。特に、国民の安全を守るため、リスクに備えて事故を予防する警察業務に対しては、大々的な革新が必要だ」と述べた。大統領は続けて「今回の惨事の真相究明が徹底的に行われるようにし、国民の皆さまにはその過程を透明にして一点の疑いもないよう公開する。その結果に応じ、責任のある人に対しては厳しくその責任を問う」と述べた。尹大統領は「責任を問う」対象に言及しなかったが、警察革新に言及した後でそうした発言をしただけに、梨泰院惨事当時の総体的な不適切対処による国民的公憤を受けている警察首脳部を問責するという意味と解釈された。

 この日、尹大統領は「災害コントロールタワーは大統領にある」と述べたが、発言の重さはほとんどが警察責任論に傾いた。大統領は、警察の治安監(日本の警察の警視監に相当)人事取り消しで物議が起きたときや、行政安全部警察局の新設に反対する集団行動が起きた際にも、「国の規律が乱れる」として警察側の責任を強調したことがある。

 警察内部では、警察の責任を認めながらも、行政安全部と大統領室を除いた責任転嫁に反発する声が出ている。ソウル地域の幹部クラスの警察官は「互いに協力しなければならない災害安全管理システム全体にアプローチしてこそ代案を用意できるのに、警察にだけ責任をなすりつけるのは責任回避だ。しっぽを切る形で警察だけを犠牲にしようとしている」と述べた。慶尚南道地域の警察官は「これまで警察の力を弱めることばかりしてきた大統領が、今回は責任の所在を引きだすことばかりに専念している。国政運営の誤りは隠し、警察を犠牲にしようとしている」と語った。東国大学警察行政学科のクァク・デギョン教授は「大統領が責任を負わせる対象を探すために警察にだけ責任を求めている。警察が今回の事態で対応を十分に取れなかったとしても、自治体や中央政府の責任もあわせて問うことが必要だ」と指摘した。

7日午前、ソウル龍山の大統領室庁舎で災害安全管理システム点検および制度改善策の議論のために開かれた国家安全システム点検会議で、イ・サンミン行政安全部長官が尹錫悦大統領の発言を聞いている=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 尹大統領がイ・サンミン長官の問責の可能性に言及していないため、大統領が公言した警察革新の業務は当面イ長官が担当するものとみられる。

 尹大統領は「責任というものは責任ある人に厳しく問わなければならないものであり、『ただ漠然とすべての責任を負え』とするのは、現代社会ではありえない話だ」「状況に対する管理ができておらず大規模な事故が発生したとすれば、それは警察の所管だ。しきりに混ぜこぜにしてはならない」と怒声で強調したという。このような発言は、災害と安全の管理の総責任であり主務長官であるイ・サンミン長官に向けた責任論に反発したものと読み取れる。

 これについて、ただちに惨事の責任を負って辞任しなければならない主務省庁の長官に、国家災害対応システムの改善業務を任せること自体が不適切だという指摘が出ている。しかも、イ長官は判事出身であり、災害安全の業務を扱った経験はない。惨事直後に「警察官を事前に配置することで解決できる問題ではなかった」と述べるなど、法的責任にだけ敏感な“素人”の姿を露呈し、世論から激しい非難を受けた。

 警察内部からは、イ長官は警察革新の主体ではなく惨事の責任主体だという批判が出ている。幹部級警察官は「行政安全部に(警察革新を行う)能力があるのか分からない。(行政安全部長官は)責任を取ろうとする意識がないようだ」と述べた。警察局の新設によって警察業務に対する行政安全部の権限が拡大しただけに、責任も増えたという指摘もある。また、別の幹部級警察官は「過去にも、警察に対する直接的な指揮をしていなくても、問題が起きた場合、最終的には行政安全部長官が政務的・政治的な責任を負ってきた」と述べた。

 あわせて尹大統領は、惨事は国家安全システムの問題ではないとした。大統領は「(梨泰院参事が)システムが整っておらず制度に不備があるという話は、私は当てはまらないと思う」と述べ、惨事の原因は、政府の行政・制度的不備のためではなく、それを運用する無能で消極的な警察によるものだとする認識を示した。

コ・ビョンチャン記者、キム・ミナ記者、クァク・ジンサン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/1066166.html韓国語原文入力:2022-11-08 02:30
訳M.S

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