ユン・ソクヨル検察総長は9日、姿を見せなかった。最高検察庁(大検察庁)の参謀陣全員を含め、検事長級以上の“ユン・ソクヨル師団”が大勢左遷された8日の人事の直後であり、世論の関心は彼の去就に集まったが、一角で予想したような抗議の辞任はなかった。
検察のある幹部はこの日、ハンギョレとの通話で「人事は人事で、国民から任命状を受け取った公職者として、なすべき仕事を続けるというのが総長の考え」だとし「政権が最も望むものが何かを総長も知っている」と話した。自ら退くことはないという意味だ。
ユン総長は、すでに政権の“報復性人事”を予感していたという。彼と格別の関係にある検察高官職出身者は「雰囲気があまりにもとげとげしくて数日前に電話で話した時『今、去就を決めるのは無責任な行動』と言ったところ、ユン総長が『私もそう思います』と言っていた」と話した。検察はこの日、「大統領府の選挙介入疑惑」と関連して、国家バランス発展委員会を強制捜索するなど、捜査意志があることを明確に見せた。
ユン総長のこうした態度は、現在進行中の捜査を守るという意志表明と見られる。検察は、蔚山(ウルサン)市長選挙介入捜査、ユ・ジェス監察もみ消し捜査を同時に行い、大統領府と摩擦を起こしてきた。検察関係者は「今回の人事は、大統領府を狙った捜査に対する政権次元の懲罰」としながら「検察で大統領の人事権に対抗して捜査を守れる人は、任期が定められている総長しかいない」と話した。かつて朴槿恵(パク・クネ)政府の時にチェ・ドンウク検察総長が“除去”された後、“国家情報院コメント事件”捜査が歪曲・縮小される過程を自ら体験したユン総長としては、そうした思いが一層切実だったと見られる。
しかし、ユン総長が今回の人事で大きな難関に直面したことは事実だ。国政壟断特検から積弊捜査まで、永く呼吸を合わせてきた参謀をほとんど失った。ソウル中央地検長には、自身の司法研修院同期(23期)であり、文在寅(ムン・ジェイン)大統領と近いイ・ソンユン検事長が赴任する。旧正月(1月25日)前に発令が予想される検察中間幹部人事では、ソウル中央地検の1・2・3次長、反腐敗部長が大勢交替させられると見られ、「手(検事長)に続いて足(次長・部長)も切られるだろう」という予想が多い。昨年7月の就任以来、ずっと維持されてきたユン総長の“親政・直轄体制”が解体されるということだ。
それでも、ユン総長は自身に付与された権限を最大限に動員し、大統領府に向けた捜査を継続すると見られる。“捜査目録”に別の事件が追加されることもありうる。検察高官を歴任したある人は「政権に人事権があるならば、総長には捜査権がある」と話した。捜査指揮権を持っているユン総長は、特別捜査団または特別捜査チームを構成したり、事件の再配当(移牒・移送)などの広範囲な指示ができる。また、各検察庁単位の部署構成など、業務分掌に対する指示も可能だ。ソウル中央地検長が“実力者”であっても、総長に捜査の進行状況を常に報告し指示に従わなければならない。
ユン総長が自らの席を守り自身の権限を最大限に行使したとても、最も重要なのは“検心”(検事たちの気持ち)という指摘がある。捜査を受け持つ実務検事たちの態度が、現在進行中の捜査の行方はもちろん、ユン総長の未来までも決めるという話だ。検事長出身のある弁護士は「苛酷な懲罰人事が続けば、この間“ユン総長式捜査”を快く思わなかった検事たちまでが一つになる事もありえ、反対に人事に対する恐怖が広がり第一線の検事たちの捜査への意志が折れることもありうる」として「カギは捜査検事たちの気持ち」と見通した。