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セウォル号遺族に支払われる慰謝料は交通事故水準

登録:2015-03-30 21:08 修正:2015-03-31 04:37
 所得のない生徒たち、一日あたりの実収入を最低基準にして算定
 交通・労災死亡事故の慰謝料より少なく策定
 「将来を根こそぎ失っただけに別途の慰謝料を支給すべき」
 支給申請期限は僅か6カ月…調査せずに賠償・補償が終わりに
昨年4月16日夕方、セウォル号が沈没している様子。珍島/キム・ボンギュ先任記者 //ハンギョレ新聞社

 韓国政府が“セウォル号惨事”犠牲者に支給する慰謝料を8000万ウォン(1円=9ウォン)と提示したことが週刊ハンギョレ21の取材で確認された。 これは裁判所の交通・労災損害賠償慰謝料算定基準に従ったものだ。 政府が国家的災難であるセウォル号の惨事を、交通事故水準として認識していることを明らかにしたわけで論議が予想される。

 国会が「4・16セウォル号惨事被害救済および支援等のための特別法」(特別法)を1月28日に制定したことにより、政府は27日特別法施行令を作り29日からセウォル号被害者の被害賠償と補償、生活支援金の申請を受け付けている。 具体的な賠償・補償基準は、首相室傘下の「4・16セウォル号惨事賠償および補償審議委員会」が31日に最初の会議を開き議決する。

 政府関係者とセウォル号遺族の話を総合すると、賠償・補償審議委を支援・管理する海洋水産部は、賠償・補償基準としてソウル中央地裁の交通・労災損害賠償額算定基準を提示する計画だ。 この損害賠償額基準を適用すれば、檀園高生徒の場合3億3500万ウォンが最大値だ。賠償・補償金は、(1)積極的損害(治療費や購入費など実際に支出した費用)、(2)消極的損害(仕事が出来なくて失った収入)、(3)精神的損害(慰謝料)に分かれる。一日当たりの実収入(仕事が出来なくて失った収入)を決める際に、生徒の場合は収入がないので最低収入である都市日雇い勤労者の日当(8万4166ウォン)を基準として決められるためだ。大韓弁護士協会でセウォル号特別法を用意したキム・ヒス弁護士は、「犠牲となった生徒たちの場合、招来の可能性を根こそぎなくしただけに被害・生活程度により賠償額を調整し別途の慰謝料も支給しなければならない」と指摘した。

 だが、政府は死亡慰謝料も一律的に8000万ウォンを支給する計画だ。 8000万ウォンは2008年に策定され交通・労災死亡事故に適用する場合でも過度に低いという指摘が出ている。 これに伴い、ソウル中央地裁も2月に慰謝料基準を現行の8000万ウォンから1億ウォンに上方修正した。

 賠償・補償金とは別に被害者は慰労支援金を受け取る。 慰労支援金は国民募金の約1200億ウォンから支給され、足りない場合は国庫から支援することにした。 支給基準は首相室傘下の賠償・補償審議委(審議委)が犠牲者との関係、被害程度、実際の養育事情、扶養義務履行の有無などを考慮して決める。

 賠償・補償支給申請を9月28日まで受け付けることにしたことにも問題があると指摘されている。 審議委は申請を受け付けた日から120日以内に犠牲者の一日当たりの実収入、慰謝料、負傷者の治療費などの支給有無と金額を決める。 事実調査などのために必要があれば一回に限り30日以内で期間を延長できる。 だが、賠償・補償申請期間(6カ月)が、民法と国家賠償法が定める消滅時効(3年)よりはるかに短く、真相調査もなされないままに賠償・補償だけが終わる状況だ。 セウォル号惨事の真相を調査する特別調査委は、海洋水産部が調査委の定員・組織などを大幅に縮小した特別法施行令を立法予告し、未だ始まってもいない。

 その上、特別法は政府が清海鎮(チョンヘジン)海運役職員とセウォル号船長・船員に代わって損害賠償金を先に支給し、後にこれを受け取るように定めた。 政府の損害賠償支給額が少なくなれば、彼らが負担する金額も減る仕組みであるわけだ。

 「4・16セウォル号惨事家族対策委員会」を支援するファン・ピルギュ弁護士は、「政府がセウォル号惨事が交通事故に過ぎなかったと公言している」と批判した上でこう語る。「政府が死亡慰謝料として8000万ウォンを一括提示したことには二つの意味がある。 第一は、過去の災害・災難事件よりはるかに少ない慰謝料を出し『これでどうだ』という作戦だ。第二には、事実関係を問い詰めることを徹底して排除するという意味だ」

チョン・ウンジュ 週刊ハンギョレ21記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/684597.html 韓国語原文入力:2015/03/30 18:13
訳J.S(1909字)

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