いわゆる「ノ・サンウォン手帳」の主役であるノ・サンウォン元情報司令官が、尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領の検察総長時代から大統領当選戦略を立てていたことが明らかになった。検察は戒厳当日、チェ・サンモク経済副首相(当時)に渡された「非常立法機関文書」もノ氏が作成した可能性が高いと判断したが、さらなる捜査を進めなかった。「内乱特検」を通じて隠された真実を徹底的に暴かなければならない。
ハンギョレの21日と22日付の報道によると、検察はノ氏が12・3非常戒厳宣布文と布告令第1号だけでなく、一部国務委員に渡された「戒厳文書」などを全て作成したと判断した。ノ氏が2020〜2021年に作成したと推定される「YP(尹錫悦大統領)作戦計画」など多数の文書と戒厳関連文書で、フォントや目次表示の順序、特定の文言などの同一性がみられたということだ。検察は、ノ氏が知人に「尹前大統領と4~5年前に会い、密かに助けている」と語る場面が含まれたドライブレコーダーの映像の録音記録を確保し、後輩の軍人に「大統領は私にだけ挙手敬礼する」と自慢するなど、特別な関係を誇示した証言も確保した。尹前大統領とノ氏は、「会ったこともない」として親交を否定しているが、これに反論する証拠と証言を検察が持っているということだ。ノ氏が尹前大統領の大統領選挙プロジェクトから戒厳企画と実行計画に至るまで、深く関与したという疑念を抱かせるのに十分な内容だ。
しかし、これらの内容はノ氏自身だけでなく、尹前大統領やキム・ヨンヒョン前国防部長官の控訴状に含まれなかった。「ノ・サンウォン手帳」に書かれた内容も公訴事実に含まれなかった。ノ氏が口を開かず、事実確認が難しかったと検察は釈明したが、額面通りには受け取れない。ある時から追加捜査さえも止まっているからだ。
ノ・サンウォン手帳には、反対勢力500人余りを1次的に「回収」して射殺するなど、衝撃的な内容が含まれていた。手帳の内容の中で軍人と警察を動員した「汝矣島(ヨイド)封鎖」だけでなく、中央選挙管理委員会および民間調査会社の「世論調査コッ(花)」の占拠と統制など、一部は実行に移された。ノ氏一人だけの妄想ではなかったことが確認されたわけだ。特に、政治家や判事、ジャーナリストなど逮捕対象をノ氏自ら選んだ可能性は極めて低い。
検察は大統領室と警護処、国務委員など主要な内乱関係者に対する捜査も全く行わなかった。内乱という重大国事犯を捜査しながらも、誰の顔色をうかがっていたのか。これだから国民は検察を信頼できないのだ。